民主党「生活がガーン!」マンガは“もったいない”

» 2007年06月19日 18時24分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 民主党のWebサイトに、6月10日から掲載されているマンガをご存じだろうか。「大増税で生活がガーン!なことに。」というタイトルの、短いマンガだ。

「大増税で生活がガーン!なことに。」の1ページ目

 内容は以下の通りだ。夫が持って帰ってきた2007年6月の給料明細を見ると、税金と保険料が増えていることに妻は愕然。6年前から比べると、税金と保険料は年間約10万円増えていた。調べてみると、2007年は1月に所得税定率減税全廃、4月に国民年金保険料引き上げ、6月に住民税定率減税全廃、9月に厚生年金保険料引き上げと負担増路線が決定している。手取りが減るのだから、これから贅沢なんかできない……というもの。

 実際、2007年から始まっている税制改正では、税率が大幅に変更されている。詳しい内容は財務省のサイトを参照してほしいが、国から地方へ税源移行を行う、というのが改正の大きな流れだ(参照リンク)。多くのビジネスパーソンにとっては、所得税(国税)減税と、住民税(地方税)増税という形で影響してくる。住民税増税が適用されるのは2007年6月からなので、今月の給料明細を見てビックリ、という人は多いはずだ。

民主党の狙いは?

 さて、そんなタイミングで掲載されたこのマンガ。どんな狙いがあるのかを民主党に聞いてみた。

 「ストーリー性があるマンガを掲載したのはこれが初めて。想定読者は主婦やビジネスパーソンです。マンガも女性視点で描いていますし。6月10日から掲載を開始し、来月の参議院選挙が終わるくらいまではこのまま掲載しようと思っています。6月25日に給料日という方が多いはずですから、そこがターゲットですね」(民主党宣伝担当)

 税制改革の方針が決まったとき、当時の小泉内閣は所得税減税(2007年1月から)と住民税増税(2007年6月から)が相殺になり、国民の負担はあまり変わらない、と説明していた(参照リンク)。しかし実際には、定率減税措置が廃止されることもあり、所得税が減った分よりも住民税の増税分のほうが大きく、事実上の“住民税増税”という印象を受ける人が多いはず、という声が背景としてある。住民税増税に反対の立場である野党・民主党としては、7月22日に実施と目されている参議院選挙に向けて、住民税増税のトピックを選挙の争点に持っていきたい、という狙いのようだ。PVの集計はまだ行っていないが、アクセス数は好調だという。

 民主党では「年々ネット人口は増えているので、ヒットするものをやっていきたい」としており、参議院選挙に向けては、全候補者の動画を配信するなど、ネット向けコンテンツを強化するという。

民主党公式サイト。赤丸のところからマンガにリンクしている

せっかくのマンガなのに……

 ネットでマンガを配信するのは、興味を引くための“つかみ”としては非常に有効だと思うが、民主党の場合はそれだけで終わってしまっている点が気になった。このマンガでは、最後まで見終わっても1ページ目に戻るだけで、税金関連のコンテンツへのリンクもなければ、民主党サイトのトップページに戻るリンクもない。しかし読者をそのまま帰してしまっては、ただ「マンガ面白かったね」で終わってしまう。

 「大増税で生活がガーン!なことに。」には「そうだ、6月の給与明細をもらったらちゃんと見てみよう」と思わせるに充分なインパクトがある。選挙の直前になれば、政党のWebサイトを訪れる人も増えるだろう。せっかくマンガで読者の興味を喚起したのだから、税制改革について民主党はどう考えているのか、どう行動を起こそうとしているのかというコンテンツに誘導しなくてはもったいない、と記者は思うのだ。

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