ビットワレット「Edyスマイルクーポン」「Edyハッピー優待」を考える(2)

» 2007年06月13日 20時48分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

ビットワレット、Edyを利用したキャッシュバック&割引サービス

ビットワレット「Edyスマイルクーポン」「Edyハッピー優待」を考える(1):ビットワレットの狙い

→ビットワレット「Edyスマイルクーポン」「Edyハッピー優待」を考える(3):問題点&課題編

 6月1日から開始した「Edyスマイルクーポン」と「Edyハッピー優待」はいずれも、対象店舗でEdyを使って決済を行うと、ユーザーにキャッシュバックされる仕組みだ。別記事で紹介した通り、6月1日時点では全国のEdy加盟店のうち、5000店が本サービスに対応する。2008年3月までには、1万店舗での導入を目指す。

 各加盟店がEdyスマイルクーポンとEdyハッピー優待を導入するメリットや目的について、(1)成果報酬型なので、実際に利用された分しかコストが発生しない、(2)クーポンを紙で発行・配布するコストや、会員組織のシステム開発をする必要がない(3)加盟店が、目的に沿ったユーザー特典を設定できる、とビットワレットでは説明している。

 大きなポイントは、EdyスマイルクーポンとEdyハッピー優待のいずれも、システム投資コストを追加で負担する必要がないことだ。すでにEdy決済を導入している加盟店であれば、優待やクーポンに使った割引分(原資)負担だけでこの仕組みを利用できる。

 ビットワレットでは、Edyユーザーなら誰でも使えるEdyスマイルクーポンの目的としては「新規顧客の獲得」を、事前にユーザー登録が必要となるEdyハッピー優待の目的としては「固定客の継続利用促進」を挙げている。

サービス名 ユーザーの利用方法 加盟店の目的・効果
Edyスマイルクーポン PCやおサイフケータイで事前に利用したいクーポンを取得する 新規顧客の獲得
Edyハッピー優待 PCやおサイフケータイでEdyサービス登録を行う。登録するのは氏名、生年月日、メールアドレス、性別、自宅郵便番号、職場の郵便番号 固定客の継続利用
「Edyスマイルクーポン」「Edyハッピー優待」を導入する加盟店のメリット(左)、両者の違い(右)。いずれの資料もビットワレット提供

Edyスマイルクーポンを導入する理由――コロワイドの場合

コロワイドMDマーケティング本部部長の佐藤英美氏

 Edyスマイルクーポンを導入する企業として発表会に登場したのがコロワイドだ。コロワイドグループは、焼肉居酒屋「甘太郎」、北海道郷土料理の「北海道」などの居酒屋や、カジュアルレストラン「ラ パウザ」など各種ブランドの飲食店1038店舗を28都道府県にチェーン展開している。

 コロワイドグループの店舗ではすでにEdyを導入済みで、6月から33ブランド728店舗でEdyスマイルクーポンを提供する。2007年度末には981店舗に拡大予定だという。月間1万円以上Edyで利用した場合は2000円分、5000円以上利用した場合は1000円分のEdyギフトを還元する。

 同社ではEdyを導入した目的を4つ挙げている。(1)簡単な決済手段を導入することによる顧客サービスの向上、(2)Edyに加盟する企業、特に異業種の企業とのアライアンス、(3)Edyユーザー向けのプロモーションによる集客効果、(4)店舗網を生かした、全社規模でのキャンペーン実施だ。

 現在コロワイドの各種店舗では、月間2万回Edyによる決済が行われており、Edyスマイルクーポン導入によって、8月までにこれを4万回に増やす計画だ。

コロワイドグループでは、店舗ごとに異なるデザインのポスターを制作、Edyスマイルクーポンを訴求する

Edyハッピー優待を導入する理由――中央無線タクシーの場合

昭栄自動車社長の武居利春氏

 一方、Edyハッピー優待を導入するのが中央無線タクシーだ。固定客に対する優待サービスを導入することで目指すのは「選んで乗ってもらえるタクシーになること」(昭栄自動車社長の武居利春氏)だという。

 中央無線タクシーは、2006年8月に全2500台にEdy決済端末を導入した(2006年4月の記事参照)。Edy利用者は着実に増えており、導入から6カ月で、1日平均500回以上利用されるようになったという。

 Edyを導入した理由として武居氏は、顧客側にも運転手側にもキャッシュレス化のニーズがあることを挙げる。

 タクシーを利用する顧客には「1万円札しかないとき、おつりをもらいにくい」「素早く精算を済ませたい」「手持ちの現金が少ないが、クレジットカードを使うほどの金額ではない」といった気持ちがある。一方運転手側も、「朝、釣り銭を用意しても、午後にはなくなってしまう」という悩みを持っている。実際にキャッシュレス化は進んでおり、クレジットカードの利用増えているが、クレジットカード決済は通信に時間がかかる、少額では利用しにくいなどの事情があったため、Edyを導入した、と武居氏は説明する。現在中央無線タクシーでは、1日平均500回以上Edyでの決済が行われているという。

 もう1つの大きな課題は、顧客が「どこの会社のタクシーに乗っても変わらない」と感じていることだ。顧客は流しのタクシーをつかまえるときに、「中央無線タクシーだから」と選んで乗ってはくれない。

 ここ1〜2年でタクシー会社でのFeliCa決済導入は進んでいるが、中央無線やANZEN、飛鳥交通といったEdyを導入する会社のほかにも、Suica、iD、QUICPayなど会社ごとに異なる決済方式を導入しているのが現状である(参考記事1記事2記事3)。「タクシー会社間の競争は激化している。タクシー会社は、電子マネーでも選ばれる時代になってしまった」(武居氏)

 またEdyハッピー優待の導入にあたって武居氏は「実際の運用上、追加で乗務員の操作が必要でないのもいい。余計な操作はお客様をお待たせすることになって、結局顧客満足度が下がる」とも話していた。前記事で紹介した「ユーザーも店員も気付かないうちに自動的に割引が行われる」というメリットに通じるものがある。

 中央無線タクシーでは、Edyハッピー優待で「月に4回以上Edyで決済すると500円分のEdyギフトを還元」というサービスを行う。優待を受けるには、中央無線タクシーを選び、乗車回数を増やさなくてはならない。優待によって「選ばれるタクシー会社になることを目指す」(武居氏)のが目的だ。

クレジットカードや電子マネーの導入の背景にあるのは、タクシーに対するユーザーの不満(左)。都内で見かけた中央無線タクシー。「中央無線タクシーでEdy使えます/EdyでANAのマイルがたまります」と大きく書いてある(右)

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