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» 2007年06月13日 03時08分 UPDATE

神尾寿の時事日想: ついに純増1位を獲得したソフトバンクモバイル、好調の理由は

ソフトバンクモバイルが好調だ。2006年11月の番号ポータビリティ前には「一人負けするのでは」と言われていた劣勢をはね返し、ついに5月は純増数1位に躍り出た。好調の理由はどこにあるのだろうか。

[神尾寿,Business Media 誠]

 6月7日、電気通信事業者協会(TCA)が5月末時点の携帯電話およびPHS契約数を発表した(6月7日の記事参照)

 ここで注目すべきは各、キャリアの月間成長を表す「純増数」だ。2006年11月の番号ポータビリティ制度(MNP)開始以降、KDDIが毎月の純増数競争で大きくリードし、ソフトバンクモバイルがそれに続いて、最大手のNTTドコモが“一人負け”する状況が続いていたが(参照記事:4月3月2月1月2006年12月11月)、5月はその状況が一転。業界3位のソフトバンクモバイルが、16万2400契約の純増でトップに躍り出たのだ。これまで「純増1位」を半ば指定席としていたKDDIは13万8500契約の純増と2位に後退。ドコモは純増8万2700契約と前月より伸びたものの、ソフトバンクモバイルとKDDIの伸びには届かず、今回も純増3位の“一人負け”という結果になった。

店頭競争力の向上が著しいソフトバンク

 昨年のMNP開始直前、ソフトバンクモバイルは、ドコモとKDDIに挟まれて業界内では「MNPの草刈り場」になると言われていた。しかし、2007年に入ってからのソフトバンクモバイルは純増シェアの獲得で頭角を現し、春商戦の勢いは、好調なauを脅かす勢いだ。特に4月から5月にかけての春商戦後半は、家電量販店や都市部の専売店を中心としたコンシューマー向けの販売と、法人向けの直販営業で猛烈に追い上げた。

 ソフトバンクモバイルは、なぜ急成長したのか。

 その要因として大きいのは、同社の魅力やメリットが「店頭や広告で分かりやすく」作り替えられた点だろう。これは新規契約者獲得の主戦場である家電量販店での競争において重要なポイントだ。

 例えば料金プラン。ソフトバンクモバイルは、主力商品を「ホワイトプラン」「Wホワイト」「ホワイト家族24」に集約した。音声定額を軸に、ドコモやauに比べて割安感を打ち出すことに成功している。実際の契約段階では、他社に先駆けて導入した端末の割賦販売制度などで料金の仕組みは複雑化するが、店頭や広告で同社の料金がシンプルに見えるのは競争上有利に働いている。また、法人向けの料金は相対契約なので公開されていないが、筆者の耳に入ってくる同社の“法人向け料金”の設定は、個人向けよりもさらにシンプルで分かりやすく、割安感がある。

 さらに店頭競争上、有利に働いているのが、ソフトバンクモバイルの端末ラインアップだ。同社は昨年の冬商戦、今年の春商戦と夏商戦で、多品種かつ魅力的な端末を多数投入。特に家電量販店での競争を左右する端末デザインとワンセグの2分野への注力では、ドコモとauを一気に追い抜いた印象だ。スライド機構や豊富なカラーへのニーズなど、今後のトレンドになりそうな要素もいち早く取り入れている。実際に家電量販店で3キャリアの端末ラインアップを見比べると、ソフトバンクモバイルの端末ラインアップには存在感と訴求力がある。いうなれば「華」があるのだ。店頭で消費者の目を惹き、店員が売りやすい端末作りをしっかりしていることがわかる。販売にダイレクトに結びつく、魅力的な端末ラインアップを毎回用意していることも、ソフトバンクモバイル躍進の推進剤になっている。

課題は3Gインフラの整備とARPUの向上

 むろん、課題や弱点がないわけではない。目下最大の弱点は、auやドコモに比べて出遅れた3Gインフラの部分だろう。東名阪の大都市や地方の中核都市ではエリア整備が進んだものの、地方郊外のエリア拡大と、都市部のスポット的な圏外の解消では、ソフトバンクモバイルは未だにauとドコモに及ばない。ここは端末や料金と異なり、ソフトバンク流のスピード展開が難しい分野であり、エリアの構築とユーザーの信頼獲得には時間がかかる。ソフトバンクモバイルが地方郊外でも成長軌道に乗るには、まだしばらくの時間がかかりそうだ。

 また、ホワイトプランの普及による「ARPU(ユーザーあたりの月間収入)」の下落に対して、今のところ決定的な対抗策が打ち出せていないのも同社の課題だ。KDDIはauでパケット料金定額制を導入するにあたり、EV-DO導入という技術的な裏付けだけでなく、着うた/着うたフル投入などコンテンツ分野のビジネスモデルを変革して“頭打ちになるデータARPU”を収益面でカバーする戦略を合わせて導入した。しかし今のソフトバンクモバイルは、かつてのauのような「値下げしたように見せながら、ARPUを底上げする」施策が十分に用意できていない。

 ソフトバンクモバイルは今後、ホワイトプランや音声定額の利用者の増加に対応して設備増強の必要に迫られる。しかし今の状況では、「収益を拡大しないトラフィックのために設備投資をしなければならない」という状況に陥る。ユーザーの割安感を維持しながら、結果的にARPUを向上する“一手”が必要だ。

 このように課題・弱点は残されているが、ソフトバンクモバイルの勢いと、店頭での強さには無視できないものがある。春商戦モデル以上に商品力が強化された夏商戦モデルが出揃えば、その店頭競争力は、ドコモはもちろん、auにとっても脅威になりそうだ。今年の夏商戦は、大荒れになるかもしれない。

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