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» 2007年06月06日 00時00分 UPDATE

神尾寿の時事日想: au対ドコモの「GPSナビ」競争

携帯電話向けGPSナビ市場が拡大しそうだ。先行するKDDIはナビタイムの協業モデルを生かしてきたが、ドコモがこれを追いかける。ソフトバンク+ヤフーの“地図のメディア化”への展開もありうる。

[神尾寿,Business Media 誠]

 NTTドコモとゼンリンデータコムは6月4日、地図情報サービス分野で業務・資本提携すると発表した(6月4日の記事参照)。ゼンリンデータコムは住宅地図大手ゼンリンの子会社であり、個人・法人向けに地図データサービスを提供している。携帯電話向けとしては、地図情報サービス「いつもナビ」を提供中だ。昨年、ドコモのハイエンドラインアップである903iシリーズにGPS(Global Positioning System)が標準搭載されてからは、一部のドコモ端末に同社製の地図情報サービス用アプリケーションがプリインストールされている(参照記事1記事2)

photophotophoto N903i、F903iにプリインストールされているゼンリンデータコムのナビサービス。歩行者にも自動車にも対応したトータルナビだ。歩行者ナビでは「屋根の多いルート」「階段の少ないルート」などの条件も選択可能。自動車のルートを検索する場合は、渋滞情報を考慮してルートを示す

 ドコモは今回のゼンリンデータコムとの提携により、GPSナビゲーションの分野を自社サービスとして強化する考えだ。これまでドコモは、GPSナビゲーション分野でも他のコンテンツ分野と同様に、複数のコンテンツサービス事業者に均等なサービス環境を提供してきたが、そこから一歩踏み出し、GPS分野での迅速なサービス展開を目指す。

KDDI+ナビタイムの成長と、大きな可能性

 ドコモが今回、GPSナビゲーションサービスの分野で従来の方針から“一歩踏み出す”ことになった背景には、ライバルのKDDI(au)とナビタイムの協業体制が成功したことがある。

 KDDIは早期から携帯GPSサービスの市場化に力を入れており、その際にこの分野の新興企業だったナビタイムジャパンと手を組み、自社サービス「EZナビウォーク」(2月13日の記事参照)を投入した。自らリスクを取って、端末の機能やUIにGPSナビゲーション関連サービスを融合させたことにより、この市場の創出と育成に貢献。KDDIのビジネスとしては、パケット料金定額制の加入率向上や、“auだけ”の魅力的なサービスにすることに成功した。EZナビウォークは着うたフルのように爆発的な人気はないが、解約率が他のコンテンツ分野よりも低く、「顧客の囲い込み」ではauのビジネスに貢献している。パケット料金定額制の加入率が低く、他キャリアへのユーザー流出抑止のため解約率の低いサービスを1つでも多く欲しいドコモにとって、今回のKDDI+ナビタイムと同じ協業モデルの導入は、むしろ自然な流れだろう。

 KDDIも座してライバルの追随を黙って待っているわけではない。同社は今夏、GPS関連の新たなサービスとして、端末独自のGPS測位機能を使った「災害時ナビ」や「EZガイドマップ」を投入した。先行優位性を武器に、他キャリアの引き離しにかかっている。ナビタイムジャパンの大西啓介社長は筆者のインタビューに対し、将来的なGPSナビゲーション市場の拡大においてルートナビゲーションや地図に広告やアフィリエイトモデルを組み込むことを示唆した(5月17日の記事参照)。今後の、KDDIとナビタイムジャパンの協業において、地図情報に様々な付加価値やビジネスモデルが重ね合わさる“地図のメディア化”のような展開は、十分に考えられそうだ。

気になる、ヤフーの携帯GPSナビゲーションへの参入

 一方、ソフトバンクモバイルのGPSナビゲーション分野への展開では、「Yahoo!地図」の動きが注目だ。ヤフーは2004年12月13日に、民事再生法を適用した地図ソフト会社アルプスを事業継承という形で吸収した(2004年12月の記事参照)。その後Yahoo!地図は、地域情報や口コミを盛り込む機能を搭載するなど、ネット地図サービスとして進化してきている。

 ソフトバンクモバイルは今年3月に、J-フォン時代から提供していた公式地図サービス「S!マップ (旧J-Navi)」を終了した。これだけ見ると、GPSナビゲーションサービスの自社提供から退いたように見えるが、同社のYahoo!とのサービス統合の流れや、携帯向けGPSナビゲーション分野の成長可能性の大きさを鑑みれば、ソフトバンクモバイルが携帯電話向けの特化機能を持つYahoo!地図を投入する可能性は十分にあるだろう。Yahoo!地図は、アルプスのノウハウを受け継ぎ、その後ユーザー参加型による“地図のメディア化”で様々な取り組みをしてきた(2006年3月の記事参照)。それが携帯GPSナビゲーションに本格参入すれば、KDDI+ナビタイム、ドコモ+ゼンリンデータコムの協業体制に続く、第3の勢力になりそうだ。

 携帯電話向けのGPSナビゲーション市場は、今後さらに成長し、ビジネスの裾野が拡大する。各キャリアにとっても重要な分野の1つになるだろう。

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