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» 2007年05月31日 10時47分 UPDATE

保田隆明の時事日想:NECは半導体事業をグループ内でどう位置づけたいのか

NECの子会社、NECエレクトロニクスのの海外株主2社が、NECに対して持分割合を減らすように要求した。NECが取れる手はいくつかあるが、ポイントは同社が半導体事業についてどう考えているかにある。

[保田隆明,Business Media 誠]

著者プロフィール:保田隆明

やわらか系エコノミスト。外資系投資銀行2社で企業のM&A、企業財務戦略アドバイザリーを経たのち、起業し日本で3番目のSNSサイト「トモモト」を運営(現在は閉鎖)。その後ベンチャーキャピタル業を経て、現在はワクワク経済研究所代表として、日本のビジネスパーソンのビジネスリテラシー向上を目指し、経済、金融について柔らかく解説している。主な著書は「M&A時代 企業価値のホントの考え方」「投資事業組合とは何か」「なぜ株式投資はもうからないのか」「株式市場とM&A」「投資銀行青春白書」など。日本テレビやラジオNikkeiではビジネストレンドの番組を担当。ITmedia Anchordeskでは、IT&ネット分野の金融・経済コラムを連載中。公式サイト:http://wkwk.tv。ブログ:http://wkwk.tv/chou


 NECの上場子会社であるNECエレクトロニクスの海外株主2社が、NECに対してNECエレクトロニクスに対する持分割合を5割未満にするように要求したという記事が日経新聞に掲載された。

 NECエレクトロニクスは、もともとはNECの本体にあった半導体事業を2002年に分離独立し、2003年に上場させたもので、NECの持分割合は現在65%。

NECはNECエレクトロニクスをどうしたいのか

 65%もの株式を親会社が保有している場合、株主総会での決議事項はほぼ確実に親会社の意向によって決定されることとなり、少数株主の保有する議決権は実質的に価値がゼロである。株価がグンと下がったところで、再び親会社が100%子会社化するなど、少数株主にとっては好ましくない戦略をも遂行できてしまうリスクが存在する。

 逆に子会社が成長戦略を模索しようにも、親会社の戦略との整合性や関係性が足かせとなる場合もある。これも上場子会社の少数株主にとっては、迷惑な話になる。

 親会社にとって本当に重要な子会社であれば、子会社を上場させて利益の一部を外部株主に提供するのではなく、100%子会社化しておきグループ一体としてシナジーを創出すべきというのが定石だ。その手をとらずに上場させるのであれば、それは売却プロセスの一環と考えるべきということになる。今回の要求も、売却プロセスを早く進め、少数株主への不都合を解消してほしいという意図と思われる。

 海外株主が要求するように持分割合を5割未満にすれば、半導体事業をグループから外すこととなり、NECにとって同事業はコア事業ではないと態度を明確にすることになる。今までもたびたび、投資家からは「NECエレクトロニクスを完全に分離すべきだ」と意見が出ていたが、NECがグループ戦略上、半導体事業をどのように位置づけているかという点に関しては、投資家が満足するような説明ができないでいる。

NECソフト、NECシステムテクノロジーの場合

 NECは過去、2005年に上場子会社であったNECソフト、NECシステムテクノロジーを100%子会社化したことがある(2004年12月の記事参照)。NECソフトは2000年7月、NECシステムテクノロジーは2003年9月に上場させたが、そのわずか数年後に再び100%子会社化することとなり、「数年間しか上場させないのであればそもそも上場させる必要はなかったのではないか」とも指摘された。

 コンピュータ業界は動きが速く変化が激しいので、数年の違いで戦略が変わることもあるかもしれない。しかし両社の株式を保有していた少数株主にしてみれば、せっかくそれら企業の成長性に期待して株式を購入したにもかかわらず、親会社の都合であっさりと100%子会社化されてしまったわけで、これに対しては、一部不満も出たようだ。

 さて今回のケースでは、NECエレクトロニクスの株価は上場以来最安値圏で推移している。上場時の株価に比べると半分程度、株価が最高値をつけたころから比べると3分の1程度だ。親会社であるNECにしてみると、今の株価レベルで追加で株式を放出するのはもったいない気持ちにもなると思われる。むしろ安値で株式を放出するより、前回同様、株価が安い今の時期に100%子会社化して取り戻したいという欲求が沸いてもおかしくない。

 ただその場合NECは、グループにとって半導体事業が必要不可欠であること、グループ全体にとってのシナジーをどのように創出するかについて、NECエレクトロニクスの株主が納得できる形で説明する必要がある(2月22日の記事参照)。当然ではあるが、最安値圏で100%子会社化すれば少数株主から大ブーイングを浴びることであろう。

親子間上場、本格的に解消の流れか

 親子間上場に関しては、東証の上場制度整備懇談会の中間報告でも推奨しない方向で検討されている(参照記事1参照記事2)。NECがNECエレクトロニクスの海外株主からの要求にこたえて株式を放出すれば特にノイズは発生しないと思われるが、100%子会社化の動きに出た場合は、親子間上場に対する批判の動きは更に加速するだろう。

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