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» 2007年05月29日 22時12分 UPDATE

生き残りを賭けた模索が続く――長距離バス業界

高速バス会社が東京―大阪間2100円の格安チケットを発売すれば、旅行会社のツアーバスは新型シートで対抗する。規制緩和がもたらした競争激化は、どこまで続くのか。

[土肥義則,Business Media 誠]

 高速バスとツアーバスの乗客争奪戦に歯止めがかからない。規制緩和によって大手の旅行会社が参入、格安チケットを販売するなどして、ツアーバスは急成長を遂げてきた。これを受けバス会社の高速バスも、低価格やサービスの向上を図るなど、し烈な競争を繰り広げている。

 ツアーバスとは、旅行会社が乗客を集め、バスを運行していることを意味する。ただ実態としては、添乗員が乗車していないため、高速バスと変わらない。貸切バスでの運行が基本のため、車内設備が充実していないケースが多いという。

 ツアーバスの大手を挙げると、ウィラートラベルやHISグループのオリオンツアー、楽天トラベルなどがある。マーケット戦略や自社サイトで集客を図っているのが強みだ。

 一方、大手の高速バスは京浜急行、西武、西鉄など電鉄系が多い。業界大手JRバスでは2006年6月に、80人が乗車できる「青春メガドリーム」を投入した。東京―大阪間で3500円という低価格を打ち出し、さらに「超特割青春号」では、補助席利用などの条件付きで2100円というチケットを販売している。

新しい価値と低コストを実現

 価格競争を繰り広げる中、旅行会社のウィラートラベルは6月1日から、新型シートを導入すると発表した。韓国DAEWOOと共同で開発したウィラーの村瀬茂高社長は「新しい価値と低コストを実現した」と、乗客獲得への意気込みを語った。

 新シートの「WILLER EXPRESS」は、4列シートでの快適さを追求したという。照明の明るさなどを防ぐため、乗客の頭部を完全に覆うカバー(カノピー)を業界で初めて設置した。このほか、睡眠中に首を固定することができる可動式の枕、腰の位置が分割していないシートなどが特徴だ。

yd_bus-1.jpg 寝心地を重視したシートで、最大140度までリクライニングが可能
yd_bus-2.jpg バス業界で初のカノピー、枕も可動する

 来月から運行する東京―大阪間の料金は5000円に設定した。今後は仙台、名古屋、富山、広島行きの便を予定している。ウィラーの乗客は、35歳以下の女性が最も多いため「若い女性を意識して、デザインにこだわった」。2006年度の乗客約50万人に対し、今年度は100万人、2009年度には300万人を目指すなど、高い目標を掲げている。そして「約8500万人とも言われ長距離バス利用者の獲得に力を入れていきたい」と話した。

規制緩和がもたらした競争

 長距離バス市場のシェアアップを試みるウィラーだが、保有するバスの台数が少ないのが課題だ。現在の15台から2年後には50台に増やす予定だが、JRバスでは約500台を保有している。

yd_bus-3.jpg JRバスのプレミアムドリーム号

 台数で勝るJRバスでは2007年3月に、背もたれと座布団が連動して傾く、業界初のシートを搭載している。また「プレミアムドリーム号」では地上デジタル放送を利用できるなど、「料金設定に幅をもたせて、サービスを充実させている」(JRバス関東・総務部)。

 村瀬社長は「これからは第3フェーズの競争になるだろう」と予測する。規制緩和がもたらした競争は、安売り合戦から始まり、サービスの充実に発展した。今後は長時間乗車時の居住性を高め、機能とデザインを充実させながら、低料金の設定という“同時進行”での乗客争奪戦となるのか。「利益を生み出すには乗車率80%の確保が必要」(ウィラー社長室)と厳しい環境の中で、生き残りを賭けた戦いが続きそうだ。

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