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» 2007年05月18日 12時35分 UPDATE

神尾寿の時事日想:携帯電話との連携を強化する市販カーナビ

25〜30万円の高価格・高機能モデルが主流の日本のカーナビ市場。新しく盛り込まれる機能には、オーディオ、通信、地デジ対応など毎年“トレンド”があるが、今年のトレンドはずばり「携帯対応」だ。

[神尾寿,Business Media 誠]

 カーナビゲーションメーカー各社が、「夏商戦モデル」を発表した。カーナビ市場は現在、新車購入時に自動車メーカーが装着する「純正カーナビ(ラインオプション)」、新車販売時に販売店が用意するラインアップから装着する「ディーラーオプション」、そしてカー用品店などで購入・装着する「市販カーナビ」の大きく3つがある。今回、発表されたのは市販カーナビの“夏モデル”だ。

 GW明け早々、最初に新製品を発表したのは最大手のパイオニアだ。同社は5月9日、“カロッツェリア”ブランドの「サイバーナビ」のハイエンドモデルH099シリーズ 8モデルを発表した(5月9日の記事参照)

ay_kamio01.jpg パイオニア「カロッツェリア サイバーナビ」。「AVIC-VH099MDG」は、7インチワイドモニターを備えたインダッシュタイプの地デジ対応モデル

 5月14日には富士通テンが“ECLIPSE(イクリプス)”ブランドの新機種「ケータイリンクAVN」の4モデルを発表、翌5月15日にはパナソニック・オートモーティブ・システムズ(PAS)が同社製カーナビのハイエンドモデル「ストラーダFクラス」3機種を発表している(5月15日の記事参照)

新たなトレンドは「ケータイ連携」

 市販カーナビのハイエンド市場は純正カーナビに比べてモデルサイクルが短く、トレンドの移り変わりも早い。1999年にカーナビの本格普及が始まった頃は「DVD-ROM搭載」と「VICS対応」がトレンドだったが、2001年からは「HDD(ハードディスクドライブ)搭載」と「音楽リッピング機能」が急速に広まり、2003年からはAV機能とカーナビ機能を融合させた複合機「AVN(オーディオ・ビジュアル・ナビゲーション)」の人気が高くなった。昨年のトレンドは「地上デジタル放送対応」で、この分野で“標準対応”に力を入れたパナソニック・オートモーティブ・システムズのストラーダがシェアを伸ばした。

 今年のトレンドは、ずばり「携帯電話連携」だ。

 パイオニアのサイバーナビは、ユーザー同士が渋滞情報や駐車場入り口情報、施設情報などを自動的に共有する独自のプローブカーシステム「スマートループ」を本格投入。これまでホンダやトヨタ、日産など自動車メーカーが力をいれてきたカーナビ支援型テレマティクス分野に参入した。スマートループではカーナビと携帯電話を接続してデータ共有を行うため、従来のVICS(リアルタイム渋滞情報)以上の広範囲・高精度な渋滞把握と回避が可能になる。パイオニアではスマートループを、ユーザー同士の情報創出と共有が価値を生み出す「Web 2.0的な世界」としている。

 富士通テンは携帯電話のネット接続機能と赤外線通信機能を使い、カーナビの弱点だった、購入後に「情報が古くなる」点を補完する。同社のケータイリンクAVNでは、手持ちの携帯電話で専用サイト「モクテキチネット」にアクセスし、最新の施設や地点情報をダウンロード。それを赤外線通信機能を使って携帯電話に転送することができる。サイバーナビに比べるとリアルタイムかつ高度な情報サービスは実現できないが、一方で手軽に利用できるのがポイントだ。

 昨年、“地デジ”で大きく躍進したパナソニック・オートモーティブ・システムズのストラーダは、テレマティクスではなく、「オーディオ」で携帯電話連携を強化した。BluetoothのAdvanced Audio Distribution Profile(A2DP)に対応し、携帯電話にダウンロードした「着うたフル」や、CDから携帯電話のメモリーカードに録音した音楽を、カーナビのオーディオ機能を使って再生できる。最近は新譜の購入やポータル音楽プレーヤーの機能をすべて“音楽ケータイ”で賄う層が増加しており、それを取り組むのが狙いだ。Bluetoothを使い、音楽ケータイと連携するという取り組みは、先に発表されたトヨタ自動車の「G-BOOK mX」でも採用されている(4月11日の記事参照)

伏兵は「日本版PND」

 市販カーナビ市場、とりわけハイエンドモデルの市場は、純正カーナビやディーラーオプションナビ市場の急成長に押されて、成長に翳りが見え始めている。オーディオ機能や地上デジタル放送需要を取り込んで高付加価値・高価格を維持する戦略も行き詰まり、“ハードウェアの進化”だけでは25〜30万円という販売価格帯が維持できない。今回、カーナビ各社が携帯電話連携を強化した背景には、通信機能や携帯電話コンテンツ機能と連携して、“ソフトウェア”や“サービス”の魅力や訴求力で、ハイエンドカーナビの付加価値を作る狙いがある。

 しかし、市販カーナビ市場全体を見渡せば、急速に勢力を伸ばすのが小型・軽量・安価なポータブルカーナビだ。欧米で「PND(パーソナル・ナビゲーション・デバイス)」と呼ばれるこの分野は、汎用的なデバイスを多く使いカーナビ機能に特化するシンプルさで低価格を実現。海外では年間1000万台以上のペースで成長している。日本でも、三洋電機の「ミニゴリラ」やソニーの「nav-u」が和製PNDとして登場。価格の安さと「取り付け工事不要」の優位性を生かして、通販やネット販売、家電量販店など販売チャネルを多様化することで急速にシェアを伸ばしている。

ay_kamio02.jpg ソニー製車載用ポータブルナビ“nav-u”「NV-U1」

 日本の市販カーナビは、よくも悪くも「高性能・高付加価値・高価格」の“3高”のビジネスを展開してきた。しかし、「クルマの魅力を増すため」に純正カーナビの性能と魅力が上がり、新車時の装着率が上昇。一方で、市販市場では低価格で必要十分な性能を持つPNDが登場するにあたり、市販カーナビのビジネスは難しい局面を迎えている。

 今回の携帯電話連携強化がユーザーに受け入れられ、市販カーナビの新たな可能性を広げるかどうか。注目である。

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