共用化が進むFeliCa決済。各方式の争点は“ポイント”や“裾野の広さ”に神尾寿の時事日想:

» 2007年05月16日 02時09分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 5月14日、コンビニエンスストア大手のローソンが、これまで対応していた三井住友カード+NTTドコモの「iD」に加えて、ジェーシービーやトヨタファイナンスが推す「QUICPay」、ビットワレットの「Edy」に対応すると発表した(5月14日の記事参照)。コンビニエンスストアにおける複数のFeliCa決済方式対応は、am/pmがすでにEdyとiDに対応しているほか、一部のファミリーマートがSuicaとiD、関西圏では駅周辺のコンビニでPiTaPaとiDの対応などが進んでいた。また、先日、独自電子マネー「nanaco」を導入したセブンイレブンでは、今夏をメドにQUICPayに対応し、その後、他方式にも順次対応する予定だ(4月23日の記事参照)。現在Edyを導入しているサークルK/サンクスも、2007年秋からはQUICPayとVISA TOUCHに、2008年春にはiDに対応する。FeliCa方式を導入したコンビニの多くで、「複数方式への対応」や「リーダー/ライターの共用化」が急ピッチで進んでいる。

 ロードサイドビジネスの“上流”にあたるガソリンスタンドでも、FeliCa決済の導入と、複数方式対応の動きが出始めた。5月10日、エクソンモービル、ジェーシービー、三菱UFJニコス、三井住友カードが、エッソ、モービル、ゼネラルの「エクスプレス」ブランドのセルフサービスステーションでFeliCa決済に対応すると発表。導入当初からQUICPay、VISA TOUCH(スマートプラス)、iDに対応する(5月14日の記事参照)

 ガソリンスタンドのFeliCa決済対応については当初、「日本の元売り8社のうち5社がUFJニコスを(イシュアとして)採用している」(三菱UFJニコスIT事業部部長の鳴川竜介氏)という状況から、三菱UFJニコスが推すVISA TOUCHが有利と見られていた(2006年6月の記事参照)。しかし、石油元売りや販売会社側の複数方式対応を求める声は大きく、特に「トヨタ(ファイナンス)が推しているQUICPayは無視できない」(石油販売会社幹部)状況だ。ガソリンスタンドを上流とするロードサイド市場も、複数方式対応が基本になっていきそうである。

 他にも、大手ではイオングループが独自電子マネー「WAON」と、iD、Suicaの複数方式に対応。自社クレジットカードとの連携などでWAONの魅力付けをしながらも、複数方式への対応で利用者の利便性を図る(4月27日の記事参照)。三井不動産グループの「ららぽーと」も、iD、Suica、Edyなど複数方式に対応している(2006年9月の記事参照)。多くの人が集まる大規模SC(ショッピングセンター)でも、FeliCa決済の複数方式対応が進んでいる。

 また、繁華街や商店街などの飲食店や小規模店舗のFeliCa決済導入においても、「店舗側の(FeliCa決済に対する)認知が上がり、利用率重視になったことから『複数方式への対応』を最初から求められることが増えてきた」(アクワイアラ関係者)という。今後、大手から中堅まで多くのFeliCa決済導入事業者において、複数方式への対応は進んでいきそうだ。

各方式の差は「ポイント」と「裾野の広さ」に

 現在、各FeliCa決済事業者は、利用者の獲得と加盟店数の拡大で競争を繰り広げている。しかし今後、加盟店側の複数方式対応と共用リーダー/ライター導入が一般化すれば、「使える場所」の差は次第に少なくなる。駅と駅関連施設を擁する鉄道系電子マネーを除けば、“場所の優位性”は減少していくことになるだろう。

 今後、各FeliCa決済方式の利用者獲得の争点は、ユーザーにわかりやすく魅力的な「ポイントプログラム」と、様々な決済シーンをカバーする「裾野の広さ」になる。

 前者は全日空のマイルと連携するEdyや各FeliCaクレジットが力を入れてきたが、今年に入ってから鉄道系のPASMOやSuicaもポイントプログラムの充実に乗り出している(5月10日の記事参照)

 一方、後者はEdy、iDが先行し、それをQUICPayが追いかけている状況だ。特にiDは様々な業種業態に向けたサービス展開の取り組みを行っており、自動販売機やハンディターミナル、総菜店向けの計量器まで「iD対応」を広げようとしている。利用シーン拡大への取り組みは熱心だ。

 今後のFeliCa決済の趨勢を見る上で、加盟店数だけを比較するのは無意味になってきている。各FeliCa決済のポイントプログラムが、どれだけ訴求力を持っているか。また、きめ細かな決済シーンまで、利用可能な場所を広げているか。各FeliCa決済事業者の総合的な取り組みを見極める必要がある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.