「ボーダフォン買収は成功」と孫社長 ソフトバンク、売上高2.5兆円・経常益5.5倍に

» 2007年05月08日 18時38分 公開
[宮本真希,ITmedia]

  「人生にも会社にも何度か転機があるが、ボーダフォン買収は当社にとって転機だった」――ソフトバンクの孫正義社長は、5月8日に開いた2007年3月期の決算発表をこう切り出した。同期に連結化した携帯電話事業が貢献し、売上高と営業利益・経常利益が過去最高になった。

 連結業績は、売上高が129.5%増の2兆5442億円となり、初めて1兆円を超えた前期からさらに2倍以上に拡大。営業利益は4.3倍の2710億円と大幅に増え、全セグメントで増益となった。営業益の増加で経常益も5.5倍の1534億円に増えたが、携帯事業買収に絡み支払利息や借入関連手数料もかさんだ。特別損失の計上などで純利益は49.9%減の288億円だった。

「ボーダフォンの買収は成功」

 「ボーダフォン買収は成功だったか? 答えはイエスだ。携帯事業を独自で展開していたら、Yahoo!BBの時のような大赤字は避けられなかっただろう」と、孫社長は携帯事業の成果を強調する。「買収時は『沈みかかった船を買うのではないか』という見方は社内外にあった」というが、1年で建て直しに成功した。

 携帯電話事業の売上高は1兆4420億円。営業益はボーダフォン時代の約1.8倍・1557億円に成長した。端末のラインアップ強化や量販店営業の強化、「ホワイトプラン」などが奏功し、年間純増数(2005年5月〜2006年4月)は85万と、ボーダフォン時代(2005年5月〜2006年4月)の約4倍に。端末を割賦販売する「新スーパーボーナス」は、新規ユーザーの8割以上が利用し、販売奨励金削減につながった。

画像 「CM好感度シェアでは3キャリア中1位、50%を占めた。これは“何か”を物語っているのではないか、と勝手に社内で言っている」と孫社長

 「3Gは2Gよりももうかる」――4月末時点の3G契約比率で50%を超え、1年で2.5倍に成長してARPUを押し上げた。

 ブラッド・ピットなどを起用したCMで、CM好感度もナンバーワンに。「好感度を調べたCM総合研究所は『ソフトバンクモバイルの名はそれまでほとんど知られていなかったことを考えると、奇跡に近い』とコメントしていた」と孫社長は笑顔を見せる。

 携帯以外のセグメントでも「驚くような伸びはないが、全セグメントで利益が出ている」と語る。ブロードバンドインフラ事業は2%減の2642億円にとどまったが、Yahoo!BBのADSL接続回線数は12万回線増の516万回線になった。広告が好調なヤフーを抱えるインターネット・カルチャー事業は24%増の1942億円だった。

「携帯は十年戦争」

 「携帯はまだまだ買収したばかりで、長い戦いになる。十年戦争だ」と孫社長は手綱をゆるめない。携帯事業の次の一手は「ボイスマシンからデータマシンに」。携帯を単なる通話インフラではなく、ネット接続端末として活用し、同社がPC向けネットで育ててきたコンテンツ事業を組み合わせて収益を上げていく計画。ADSLで採った戦略を携帯向けに応用していく。

 「野球に例えれば、同じ回にも表と裏がある。当社は最初は守りだったがネット時代には攻めに入る。インフラから、ポータル、コンテンツというのはソフトバンクの主戦場。総合力を発揮して価値を高めていく」

 ヤフーなど携帯サービスを展開しているグループ企業のコンテンツを活用し、ARPUを上げていく。「Yahoo!ケータイ」にワンボタンでアクセスできる「Y!ボタン」を搭載した結果、Yahoo!ケータイトップページへの4月末時点でのアクセス数は昨年6月末比約53倍に伸びるなど、グループのシナジーも出始めている。

 PC向けネットでも、収益源をインフラ事業からコンテンツ事業へ移行させる。Yahoo!BBや「おとくライン」のネットワークと携帯事業のネットワークを統合し、バックボーンを強化しつつコストを削減する計画も明かした。中国戦略も加速するといい、中国でネットオークション事業を展開するAribabaのCEOを経営陣に迎える。

 今期の業績予想は「主たる事業である通信事業、とりわけ移動体通信事業において、前例のない販売手法や料金施策等を導入したため、予想が困難」として現時点での開示を見送った。「合理的に見積もり可能となった時点で速やかに公表する」としている。

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