auのおサイフケータイからEdyが消えた理由 (1/2 ページ)

» 2006年09月04日 12時29分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

 KDDIが8月28日に発表した秋冬モデル12機種(8月28日の記事参照)。記者も発表会に行ったのだが、会場で端末を見て驚いた。EZ FeliCaアプリが「QUICPay設定アプリ」しか入っていないのだ。これまで入っていたEdy用アプリが見あたらない。

 KDDIに確認したところ、今回発表された秋冬モデルでは、おサイフケータイ用アプリとしてプリセットされるのは基本的にQUICPay設定アプリだけだという。ソニー・エリクソンの「W43S」(8月28日の記事参照)には、そのほか「クイック確認 for Edy」「おこづかい日記」がプリセットされるが、これもEdyの初期設定を行い、利用できるようにするためのアプリではない。Edyを利用したいユーザーは、自分でビットワレットのサイトにアクセスし、Edyアプリをダウンロードした上で初期設定する必要がある。

 おサイフケータイはドコモ、au、ボーダフォンの3キャリアから販売されているが、これまでは3キャリアとも、おサイフケータイにはEdy用アプリを必ずプリインストールしていた。それだけに、“Edyがプリインストールされていないおサイフケータイ”が登場したことは、記者にとって大きな驚きだった。「KDDIは、おサイフケータイを本気でやるつもりがないのだろうか」と、訝しく思ったほどだ。

auがQUICPayを積極採用する理由

 KDDIがQUICPayを推進する立場にあることは、すでに明らかになっている通りである。秋モデルの発表より前に、auは今後QUICPayをプリインストールすることを認めていた(8月23日の記事参照)

 KDDIではQUICPayを推進する理由について「KDDIはモバイル決済推進協議会(MOPPA、2005年10月25日の記事参照)に加盟しており、QUICPayを推進する立場にある。そのため、今後発売するおサイフケータイには、QUICPayをプリインストールしていく方針」(広報部)と説明している。

 しかし、実際にはこれは建前にすぎない。MOPPAはドコモ以外の携帯キャリア2社(KDDI、ボーダフォン)と、三井住友カード以外のほとんどのクレジットカード会社が参加している大所帯で、参加各社のスタンスはバラバラだ。例えばスマートプラス(2月22日の記事参照)を推進するUFJニコスはMOPPAの主要メンバーの一員だが、「MOPPAへは、少額決済を今後どう進めていくかを話し合う団体として参加しているのであり、非接触IC決済方式としてはスマートプラスを推進する」という立場を取っている。「MOPPAの会員であること=QUICPayを推進する立場」という図式は、実際には成り立たない。

 KDDIがQUICPayに肩入れする本当の理由は、主要株主であるトヨタにある。トヨタはQUICPay推進の立場にあり、トヨタ系のクレジットカード会社であるトヨタファイナンスは、ジェーシービーに続いてQUICPayを発行する会社(イシュアー)になっただけでなく、QUICPayが利用できる店舗の開拓など、加盟店業務(アクワイアリング)も行うと表明している。トヨタ(とトヨタファイナンス)が本気でQUICPay推進を進める以上、KDDIとしてもQUICPayが普及するよう、真剣に取り組まなくてはならないのだ。

 「KDDIがQUICPayを推進するということは、今後明確に打ち出していく予定。秋モデルに同梱する小冊子でも、特にQUICPayの紹介には力を入れる」(KDDI広報部)

おサイフケータイ決済を使い始めるまでの3つのハードル

 KDDIがQUICPayをプリインストールする理由は上述の通りだ。しかし、QUICPayとEdyを両方入れるのではなく、これまで入れていたEdy用アプリを敢えて外したのはなぜなのか。

 この点について訊ねたところ、「プリセットするアプリを何にするかは過渡的なものだし、入れるアプリの数はできるだけ少なくしたいと考えている。当然どのサービスプロバイダでも『(うちのサービスを)入れてください』と言ってくるわけだが、auとして戦略的に入れていきたいと思うものを選んで入れていく。Edyもプリセットはしていないが、ランチャー(EZ FeliCaメニュー)から(ビットワレットの)サイトへの導線は張っている。プリセットはしないが、Edyを使いたいと考える人はEdyを使えるようにはしている」(同上)という回答を得た。Edyについては、「プリインストールはマストではないと考えている。サービスが社会的に認知されれば、プリインストールされる必要はない」(同上)とも話している。

 しかし、今Edyのプリインストールをやめるのは、果たしてKDDIにとって得策なのだろうか。記者の考えは「ノー」である。

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