同世代で多数の端末ラインアップを作り、面でシェアを獲得する──NECInterview(1/2 ページ)

» 2006年07月18日 00時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 iモードの登場以降、携帯電話業界に最も影響を与えたメーカーといえば、やはりNECだろう。同社は長年、折りたたみ型のフォルムを堅持してきたが、これが“大画面でコンテンツを楽しむ”というiモード時代のニーズと合致。「折りたたみ型のNEC端末」といえば、主流市場に向けた直球のプロダクトであり、多機能で使いやすい端末の代名詞になった。パナソニック モバイルコミュニケーションズと並んで、2強の一角を占めていたのは記憶に新しい。

 しかし、市場が成熟化する中で、家電メーカーを出自とするシャープが躍進するなど、端末メーカーの競争は激化し、NEC端末にも新たな価値が求められてきている。今後、さらに競争環境が厳しくなる中で、NECはどのような道を目指すのか。モバイルターミナル事業本部長の田村義晴氏に聞いた。

Photo モバイルターミナル事業本部長の田村義晴氏

3強体制への変化は「3G市場の成熟」が理由

 2005年から2006年にかけて、端末メーカーの競争環境で大きな変化となったのが、シャープの躍進である(4月24日の記事参照)。これまで日本の端末市場はNECとパナソニック モバイルコミュニケーションズの2社が市場の大半を占める「2強体制」だった。そこに大きく食い込み、勢力を伸ばしたのがシャープだ。現在は3社による首位争奪戦が続いている。

 「携帯電話には2つの要素があります。1つは通信の手段であること。そして、もう1つが(カメラや音楽、ゲームなど)さまざまなアプリケーションにより、個人のデジタルガジェットであるということです。通信技術が新しい世代に入ると、この分野に強いメーカーが有利になります。過去の歴史を振り返っても、アナログ(1G)からデジタル(2G)に変わったとき、また2Gから3Gに移行した直後などは、NECやパナソニック モバイルコミュニケーションズのような、通信技術に長けたメーカーが大きく伸びる傾向があります」(田村氏)

 一方で、通信技術の変化が一段落し、ベーステクノロジーが確立されると、さまざまなメーカーが勢力を伸ばす状況になるという。

 「商品力を左右するのが表層的なアプリケーションやデバイスになると、それらを強みとするメーカーが伸びてきます。これはシャープ1社の動向というよりも、市場の一般的なサイクルだと考えています」(田村氏)

 3G市場を見渡せば、基幹となるテクノロジーは十分に成熟しており、サプライヤーの供給環境も整ってきた。NECやパナソニック モバイルのように、通信分野の先進性を得意とする企業だけでなく、シャープなど家電メーカー系の勢力が伸びたのはそこに理由があるという。

新たなNECを表す「N902iX HIGH-SPEED」と「N702iD」

Photo

 通信技術の進歩に合わせて、それを牽引する形でNECも勢力を伸ばす。このスタンスは今も変わっておらず、今後も続く。

 「通信技術の進歩は止まっているわけではないのです。例えばドコモのHSDPAのサービスでは、我々は対応端末の『N902iX HIGH-SPEED』をいち早く出すことができる。その先にHSUPAやHSOPAもあります。3Gのベース技術は確かに成熟しましたが、3Gはさらに発展していくのです。そこのところは我々が強いところですから、NECの強さをアピールしていきます」(田村氏)

 だが、3Gの移行が一段落したことで、新たな通信技術やサービスへの対応が、メーカーにとって万能な訴求力となるとは限らない。NECもそれを感じており、より端末そのものの魅力を増す準備も整えているという。

 「(携帯電話を)個人の持ち物として魅力を付加していくという方向性は、正直今までのNECが強い領域ではありませんでした。ですから、これも強化します。その中でも、最も強化していくのがデザインです」(田村氏)

 すでにその手応えは感じている。NECはドコモ向けにデザイン重視の「N702iD」を提供しているが、これが販売面で優れた結果を残した。

 「N702iDは非常に売れまして、(2006年1月に発表された)702iシリーズの中では半分くらいの販売シェアを獲得しました。N702iDでデザインの重要性がわかりましたので、たまたま今回それがヒットしたというのではなく、“よいデザインのモデル”が連続して投入できる体制作りを進めています。特にデザインは最終的にデザイナーの影響が大きく出るので、優秀な人材を集めています」(田村氏)

 通信技術の先進性を示すN902iX HIGH-SPEED、そしてベーシックな機能ながらデザインの優秀性でユーザーに支持されたN702iD。この2機種は、新たなNECの方向性を示す好例といえるだろう。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.