端末メーカーが海外進出するサポートを――フリースケールに聞く Interview: (1/2 ページ)

» 2006年07月07日 18時43分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 携帯電話に対するニーズはとどまるところを知らない。かつては「通話」だけだったニーズは、メールやウェブ閲覧、アプリ、マルチメディアコンテンツの利用は急拡大。一方で、さらなる小型化や省スペース化、低コスト化の要望も強くなっている。

 そのような市場環境の中で、携帯電話向けの半導体メーカーはどのようなビジョンを描いているのか。フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンのワイヤレスグループジェネラルマネージャーである、友眞衛氏に聞いていく。

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンのワイヤレスグループジェネラルマネージャー、友眞衛氏

携帯ビジネスに力を入れる理由

 フリースケール・セミコンダクタは、モトローラの半導体部門を出自とする半導体メーカーだ。2004年12月にはモトローラから完全に独立。通信機器のインフラ向け、携帯電話など民生用ポータブル機器向けの半導体を製造するほか、車載向け半導体のメーカーとしても高いシェアを持っている。

 「フリースケールのビジネスとしては車載向け(の半導体)が安定的なものとなっていますが、今後の成長率を考えると、携帯電話をはじめとするモバイルは非常に重要です。その中でも日本市場は技術的なリーダーだと考えており、ワイヤレスのビジネスをのばす上で重要な地域と位置づけています」(友眞氏)

 フリースケールはその歴史的背景から、北米市場ではモトローラが大口の顧客になっている。一方で、日本市場では他のライバル企業と競争する立場になるのだが、その中で同社の強みはどのようなポイントになるのだろうか。

 「現在、グローバルで3Gへの移行が進んでいますが、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)用モデムを安定的に供給できるサプライヤーはそう多くはない。その1つがフリースケールです。UMTSということで見れば、W-CDMAだけでなく、GSM/GPRSの要素も含まれてくる。この部分は日本(の半導体)メーカーが得意なところではないので、海外で多くのノウハウを持つ我々のアドバンテージになります」(友眞氏)

 グローバルで3G市場を俯瞰すると、UMTSがGSMの後継として着実に普及フェーズに入り始めている。日本の携帯電話メーカーも海外進出を睨めばUMTSは前提になり、そこがフリースケールの貢献できる部分だという。

日本メーカーが海外展開しやすいプラットフォームを提供する

 フリースケールはビジネスの形態として、半導体を部品レベルで供給するだけでなく、携帯電話に必要な機能をパッケージ化し、プラットフォームとして提供するモデルを用意している。

 「我々のプラットフォームの特徴は、LinuxやシンビアンOS、Windows Mobileなど汎用OSの利用を前提にしたアーキテクチャになっていることです。我々の安定したモデムと汎用OSを前提にした基盤をご提供しますので、携帯電話メーカーはアプリケーションを載せていただけばいい。グローバルな市場に簡単な労力で対応していただける。この点もフリースケールの強みだと考えています」(友眞氏)

 日本市場は国内市場の自己完結性が高く、現在のプラットフォーム化の流れは、主にコスト削減と開発期間短縮に集中している。しかし、フリースケールはこの2つの要素に加え、「グローバル展開のしやすさ」もプラットフォーム化には重要だと強調する。

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 「グローバルで見ると、日本の端末メーカーは世界のトップ6の中に入っていない。“その他、大勢”の位置にひしめき合っている状況です。しかも問題が大きいのが、ノキアやモトローラ、LGなどが出荷台数を伸ばしているのに対して、日本メーカー全体の出荷台数が落ちてきていること。世界市場におけるシェアで見れば、(出荷台数よりも)さらに落としている状況です。

 しかし、日本の携帯電話メーカーの前途が暗澹かというと、私はそうは思いません。なぜかというと、グローバルでの3G端末のシェアを拡大しているのは日本メーカーなのです。また汎用OSの採用比率も高い。これらは日本メーカーの強みですが、その一方で“端末を安く作る”というノウハウがない」(友眞氏)

グローバルで見た場合の携帯電話のメーカー別シェア。日本メーカーは「All Others(その他)」にまとめられている

 技術力は高く、市場環境の変化の中で有利な立ち位置にいるが、その利を生かすモノ作りができない。それが日本の携帯電話メーカーに突きつけられている「海外進出の壁」である。

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