携帯電話ビジネスはまだ成熟しておらず、さらに拡大していく──NTTドコモInterview(1/2 ページ)

» 2006年06月19日 10時39分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2006年、携帯電話業界全体が注目するのが、番号ポータビリティ(MNP)制度の開始だろう。各キャリアは無意味な消耗戦を回避しようとしながらも、サービスやラインアップの充実に余念がない。特にNTTドコモは、業界最大のシェアを持つこともあり、auなど強力に育ったチャレンジャーを迎え撃つ立場にある。

 ドコモはMNPに向けてどのような準備を整えているのか。さらにMNP開始後の携帯電話業界に、どのような発展のビジョンを持つのか。NTTドコモ プロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部の夏野剛氏に話を聞いた。

Photo NTTドコモプロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部の夏野剛氏

HSDPA端末につけた「X」の意味

 今年の夏商戦モデルはMNP直前に投入されるラインアップであり、MNPのタイミングで投入される秋冬モデルとあわせて、販売の主力になる。ドコモはその夏商戦モデルに、902iをリファインした「902iSシリーズ」を投入。DCMXやセキュリティなど、ドコモの次世代戦略で重要な要素をプリインストールした。

 しかし夏野氏は、もうひとつの重要なモデルとして、HSDPA対応端末「N902iX HIGH-SPEED」の名前を挙げる。

 「注目してほしいのは、HSDPA対応でも『90x』のシリーズ番号にしたところ。お客様にとっては、ネットワークだけがHSDPAになるといっても、あんまり(意味がない)ね。だから、わざと90xシリーズとしてまとめたのです。そこで902の系列にして、その上で『X』の名前をつけた。Xというのは、究極じゃないですか。だから見る人が見れば、N902iXの名前の中に、我々のHSDPAに対する覚悟を感じてもらえると思う」(夏野氏)

 ドコモはHSDPAに対して、覚悟を持って臨んでいる。その一方で、新たなインフラ技術の導入で課題になるのが、エリア拡大だ。

 「もちろん(HSDPAは)新しいネットワークだから、人口カバー率をいきなり99.999%にすることはできない。だから90xシリーズのポートフォリオの中で902iXを投入して、HSDPA対応エリアでは快適に使っていただく。HSDPA非対応エリアでもFOMAとして十分な性能を発揮するのが、(HSDPA対応の)902iXシリーズなんです」(夏野氏)

 夏野氏によると、HSDPA対応エリアは「年度内には人口カバー率で70%くらいにはなる」という。HSDPAエリアでは「ミュージックチャンネル」など大容量・高速通信対応のサービスが利用できる。

 「(902iXの)最初のモデルであるN902iXは『ガンダム』をモチーフにしました。これは最初に最先端の端末を買ってくれる人に向けたモデルだから。(端末の)肩の部分に入っている数字の入れ方とか、六角形のデザインを多用するところとか、超意識しましたよ。(開発陣には)ガンダムっぽく一気にいけー、と(笑) もちろん見た目だけじゃなくて、HSDPAエリアではスピードもめちゃくちゃ速いです」(夏野氏)

902iSでPDC時代のバリエーションが実現可能に

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 来るHSDPA時代に向けて90xシリーズに投入されるN902iX HIGH-SPEED。その一方、902iSシリーズの各モデルは、902iをベースに個性的なラインアップがそろった。

 「900iシリーズの投入以降、90xシリーズでは『PDCと同様の(サービス主体の)開発をする』ことを従来のFOMAとの大きな違いとしてきました。902i/iSでは端末メーカーが、(PDCの50x時代に追いつくだけでなく)新しい技術を、新しい端末機能やサービスに『おいしく料理できる』ようになってきた」(夏野氏)

 その一例が、902iSシリーズ共通で搭載された「生体認証」だという。

 「おサイフケータイやDCMXが標準搭載になる中で、ドコモはキャリアとして『おまかせロック』などセキュリティに力を入れている。今までのFOMAだと、メーカーは(キャリアの)新サービスに対応するだけで精一杯だったのですけれど、今回はメーカーさんから『生体認証』のご提案があった。別に我々が、全機種に生体認証を載せろっていったわけじゃないんですよ。」(夏野氏)

 「ドコモが『これくらいの機能を載せて欲しい』という期待を上まわる機能をメーカーさんが実現してくれるというのは、正直にいうと、今まであまりなかった」と夏野氏はいう。「ウォータープルーフの『SO902iWP+』など企画端末も、主流の902iSの中でできるようになった。FOMAの開発力が十分にあがり、昔のPDCの時のようなバリエーションが実現できるようになったのが、902iSだと思っています」

 また同氏は、「他キャリアのラインアップに比べて、標準機能の水準が高い」点も強調する。

 「これは50xシリーズの時代からそうなのですが、ドコモの端末はサービスに主眼を置いているので、ラインアップの標準機能のレベルが高い。他キャリアのラインアップでも、個々の端末の機能を見れば秀でている部分がありますが、ドコモの端末は平均的に優れている。ここは変わらぬ(ドコモの)競争力です」(夏野氏)

 確かに902i/iSでは、2006年の必須機能ともいえる「FeliCa」の標準搭載を筆頭にスペックの平均値が高い。その上で、902iSでは端末メーカーごとの個性が「+α」として打ち出された格好だ。ドコモのラインアップは質・量ともに充実してきており、MNPで他社を迎え撃つ強力な武器になりそうだ。

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