高速道路のSAでFeliCa決済4種を実験導入

» 2006年04月03日 10時36分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 4月1日、西日本高速道路と西日本高速道路サービス・ホールディングスは、九州エリアのサービスエリア(SA)とパーキングエリア(PA)の53カ所で少額決済システムの導入実験を開始した(2月13日の記事参照)

photo 西日本高速道路(NEXCO)九州支社長の重永正敏氏

 今回、導入実験に参加したのは、ビットワレットの「Edy」(17カ所)、ジェーシービーの「QUICPay」(8カ所)、三井住友カードとNTTドコモの「iD」(18カ所)、UFJニコスの「スマートプラス」(10カ所)の4方式。各SAとPAでは、これらの中から1種類のサービスを販売店やレストランの一部で導入。ユーザーに対する利便性向上やオペレーションへの影響、売り上げ拡大効果などを調査する。

 2日に行われた記念イベントにおいて西日本高速道路(NEXCO)九州支社長の重永正敏氏は、「旧道路公団では少なかった最先端の民間企業との連携が、民営化後になって実現した。我々にとっても(今回の実験は)エポックメイキングな出来事」と話す。

 同社は今回の実験を、SA・PAの総合商業施設化および収益拡大の重要な取り組みと位置づけている。「実験期間中もSA・PA内の(FeliCa型少額決済システム対応)レジの増設や、自動販売機の対応なども考えていきたい」(西日本高速道路)。

実証実験を行う53カ所のSA・PA。端末設置は2月から開始し、完了したところから順次利用可能になる

電子マネー・クレジット決済事業者も意気軒昂

 高速道路上のSA・PAは、平均顧客単価が500円前後の「手つかずの少額決済市場」(西日本高速道路)。電子マネーやクレジット決済サービス事業者の期待も大きい。記念イベントでは各社が自らのサービスの規模や優位性をアピール。ライバルを牽制するとともに、ロードサイド市場への期待感を見せた。

 「Edyの利用者数は現在1600万。加盟店は3万店を超えて、1ヶ月の平均利用回数は1100万に達しています。

 Edyは少額でリピート性が高い業種・業態と親和性が高く、ロードサイドのファミリーレストランやコンビニエンスストアなどでの導入実績もある。道路との親和性が非常に高い少額決済システムです。SA・PAでも利用できるようになることで、(ロードサイド市場全体への)広がりが加速できると考えています」(ビットワレット 執行役員常務 マーケティング本部長の奥出勉氏)

 「QUICPayは少額決済市場のために作ったシステムであり、約1秒で決済が終了します。またポストペイ方式なので事前のチャージが必要なく、手持ちのクレジットカードと連携するのもメリットです。現時点での加盟店は約7000店舗、利用者数は3万人ほどですが、2008年までに加盟店は10万店舗、利用者数は500万人を計画しています。SA・PAは多くのお客様が立ち寄られて、『ちょとしたお土産やお食事』といった決済シーンがある。利用額で1000円〜3000円が想定されますので、これはQUICPayが使いやすい領域です」(ジェーシービー九州営業本部長の寺田博司氏)

 「iDは昨年12月からサービスを開始しました(2005年12月1日の記事参照)。それからまだ4カ月程度なのですけれども、会員数は現在3万人、加盟店が約2万5000店舗になっています。(ロードサイド市場で影響力の強い)ローソン、am/pmなどコンビニエンスストアでも導入予定になっています(3月28日の記事参照)。3年後には会員数で1千万人、加盟店で30万店舗を目標にしています」(三井住友カード大阪営業第二部部長の古野亨氏)

 「スマートプラスは先日、ビザ・インターナショナル様に『FeliCaを使った新しいクレジット決済ソリューション』のプラットホームの仕様として採用していただきました(3月16日の記事参照)。また、スマートプラスは磁気ストライプ型クレジットカードと同じデータ規格を用いていますことから、既存の(POSレジなどの)インフラと親和性が高いのが特徴です。

 UFJニコスは現在1600社の提携カードを発行していまして、その中にはガソリンスタンドの提携カードも多く存在します。これら(ロードサイド系の)提携カード会員様に積極的にスマートプラスを利用していただく上で、SA・PAとのシナジーやアライアンスは重要だと考えています」(UFJニコスIT事業部IT事業企画グループ長の羽生康二氏)

photo 三井住友カードの古野亨氏
photo ジェーシービー九州の寺田博司氏

photo ビットワレット奥出勉氏
photo UFJニコス羽生康二氏

キャッシュバックにダブルマイル。クルマ連携キャンペーンも始まる

 今回のSA・PAでの導入実験にあわせて、利用促進キャンペーンも始まった。JCBでは9月30日までの半年間、今回実験に参加している8カ所のSA・PAでQUICPayを使うと、1人1回500円、最大3000円のキャッシュバックキャンペーンを実施する。

 一方、ビットワレットのEdyは全日空(ANA)の協力で、今年6月30日までにANAマイレージクラブの会員がSA・PAでEdyを使うとマイルが2倍になる。これはAMCアプリ導入済みのおサイフケータイも対象だ。

 またANAでは、SA・PA以外にも、九州エリアのEdy対応ガソリンスタンドとニッポンレンタカーの利用をダブルマイルの対象にし、「ドライブでEdy ダブルマイルキャンペーン」を行っている。これはEdyとANAマイルを軸にした「飛行機とクルマ」の連携キャンペーンとして興味深いものだろう。

 高速道路上のSA・PAは、平均顧客単価が500円前後の「手つかずの少額決済市場」だ。他のロードサイド市場への波及効果、異業種連携の可能性も含めて、今後の動向に注目したい。

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