おサイフケータイ時代の幕が上がる(前編) 神尾寿の時事日想

» 2005年09月27日 09時37分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 年の瀬にはまだ早いが、携帯電話業界の2005年のキーワードは、まさしく「おサイフケータイ」である。奇しくもITmediaビジネスモバイル、そして本コラム「時事日想」の1年目でもあった2005年は、“おサイフケータイとともに走り抜けた”と言っても過言ではないだろう。

 ここで一部の読者は疑問に思うかもしれない。おサイフケータイは未だ「市場のメインストリーム機能」になっていないではないか、と。インタースコープやgooリサーチなど最近発表された各種市場調査でも、市場浸透度が低いという結果が出ている。それをして、おサイフケータイの現状と将来性に疑問を持つ読者もいるだろう。

おサイフケータイの進展は予想以上

 市場調査において、おサイフケータイのユーザー浸透度が低い。これは現段階では当然の結果だと筆者は考えている。なぜなら、おサイフケータイは「リアル連携」の機能、すなわちリアル側のインフラ整備が進まないと浸透していかないからだ。ここに大規模な市場調査の落とし穴がある。

 筆者が昨年1年で行ったおサイフケータイユーザーのグループインタビューでは、機能の浸透度と満足度において、ユーザーの反応は2極化する傾向が見られた。要因は単純だ。「1日2回以上おサイフケータイを使う“場所”が存在する」かどうか。これが是であれば浸透度・満足度が高く、否であれば逆に低い。日常利用が可能かどうかでユーザーの反応が大きく分かれるのだ。リアルインフラ整備の途上である2005年においては、大規模な市場調査の結果が芳しくないのは当然だ。

 おサイフケータイの仕掛け人であるNTTドコモやフェリカネットワークスも、この点は理解している。おサイフケータイ開始直後、筆者はNTTドコモ プロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部長の夏野剛氏にインタビューしたのだが、そこで語られた言葉が印象的だ。

 「(おサイフケータイ)最初の2年は準備段階、3年目にブレイクスルーをして、5年後には存在自体が当たり前になる」(夏野氏)

 フェリカネットワークスの河内聡一社長も同様の見解を持っており、今年初頭のインタビューでも、2004年を「基礎固めの時期」、2005年をおサイフケータイならではの「ソリューション具現化の時期」だと位置づけている。このタイムテーブルからすれば、現段階のおサイフケータイを取り巻く状況は、当初予想よりも進展が早く、好調だろう。

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