イー・アクセス参入で活気づくMVNO神尾寿の時事日想

» 2005年06月03日 09時24分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 “新規参入組”のイー・アクセスが、本格的に動き始めた。

 5月31日、イー・アクセスとニフティがHSDPA方式でのモバイルブロード分野でMVNOのビジネスモデルを共同研究すると発表(5月31日の記事参照)。6月2日にはトーカイ・ブロード・コミュニケーションズもイー・アクセスのインフラを用いる形で、MVNOでの協業を検討すると発表した(6月2日の記事参照)。非公式情報なので名前は記せないが、他にも複数のISPがイー・アクセスとMVNO分野でモバイル参入の協議を行っている。

 これまで多くのニュース記事で触れられたとおり、イー・アクセスはMVNO市場の活性化に積極的だ。ドコモやKDDIなど既存キャリアは、「インフラ」「サービス」「課金プラットホーム」「端末」を垂直統合するビジネスモデルを取っており、一部のモジュールビジネスを除けば、MVNOには消極的にならざるを得ない。イー・アクセスの登場でMVNO市場が開拓されれば、ISPを筆頭に多くの企業がモバイルビジネスに参入しやすくなるはずだ。

 特に筆者が期待しているのが、専門化されたサービスプロバイダーや、メーカー系企業・ISPのモバイルビジネス参入である。

 現在もウィルコムのインフラを使い、日本通信や京セラコミュニケーションシステム(KCCS)など、法人市場に強いSI企業がモバイルビジネスに参入している(4月19日の記事参照)。彼らのような「法人向けSIのスペシャリスト」が、MVNOによって3G分野のフルサービスでモバイル市場に参加できるようになれば、ドコモやKDDIなど既存キャリアが中心だった携帯電話の“法人市場”は活性化・発展するだろう。

 また、コンシューマー市場では、メーカー系企業のモバイル参入が可能になる点が注目だ。こちらはトヨタの「G-BOOK ALPHA」の事例など、既存キャリアの通信モジュールビジネスでの開拓が始まっているが、新規参入組のMVNOで垣根が低くなれば、さらに多くのメーカーが製品にモバイル通信機能を内蔵しやすくなる。家電メーカーが、デジタル家電/ホームネットワーク時代を睨み、自前のISPでFMC(Fixed Mobile Convergence、モバイルと固定の統合的サービス)に乗り出すというシナリオは十分に考えられるのではないか。

 新規参入組の登場というと、とかく「価格破壊者」的な見方をされるが、それは本質ではない。重要なのは、既存事業者がビジネスモデルの撞着から手を出せなかった未開拓市場に、新たな鍬を入れることである。イー・アクセスのMVNOへの取り組みは、今後の注目分野のひとつである。

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