ドコモと三井住友カード提携、それぞれの狙い

» 2005年04月27日 22時14分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

 NTTドコモと三井住友フィナンシャルグループ(三井住友FG)は4月27日、おサイフケータイを利用したクレジットカード決済サービスで業務・資本提携した(4月27日の記事参照)。ドコモは、三井住友カードの発行済み株式総数の34%に相当する普通株式を、増資引き受けなどにより約980億円で取得する。

 ドコモはおサイフケータイにクレジットカード機能を搭載、三井住友カードと共同で展開する予定だ。将来的にはドコモ自身もおサイフケータイで利用できるクレジットカードを発行、本格的にクレジットカード業務に乗り出す方針も明らかにしている(4月27日の記事参照)。ドコモと三井住友FG、両者それぞれの狙いを見ていこう。

少額決済、若年層にもクレジットカードを

 三井住友FGがドコモと提携する目的は、大きく3つある。

三井住友カード社長の栗山道義氏(左)と、三井住友銀行の西川善文頭取(右)

 1つは「少額決済から高額決済まで、幅広くカバーできる」というもの。米国などに比べると日本では現金決済が中心で、とくに少額決済時のクレジットカード利用率が極端に低い。しかしiモードFeliCaにクレジットカードを載せれば、電子マネーをポストペイドで利用できることになり、たとえばスーパーマーケットなどで少額決済への利用が期待できる。「日本では現金離れしていなかった少額決済に新しい決済方式を導入する。おサイフケータイにポストペイド機能を付けることになる」(三井住友カード社長の栗山道義氏)

 サイン不要の少額決済にユーザーが慣れれば、サインが必要な高額の決済にもクレジットカードを利用してもらえるようになり(iモードFeliCaではサインではなくパスワードを利用する予定)、ひいてはカードの利用総額も増えるだろうという期待がある。「ノンオーソリ型の少額決済から、オーソリ型の多額決済へ、シームレスに導ける」(三井住友銀行の西川善文頭取)

 2つ目は、クレジットカード所有率が低い若年層への普及だ。「クレジットカードビジネスは、業界全体が成熟期に入っている。そんな中で三井住友カードが飛躍するためには、新しい仕組みを作らなくてはならない。そのため、携帯電話との連携は、非常に重要だと判断した。携帯世代ともいわれる若年層へのクレジットカード普及に弾みがつくだろう」(西川頭取)

 もう1つは、メインカードとして三井住友カードを利用するユーザーを増やしたいという狙いだ。現在、三井住友カードは、JCBに次いで国内2位の総合クレジットカード会社。「例えばポイントを融合するなどのサービスでお得感を出していきたい」(栗山社長)

ドコモがクレジットカード業務へ意欲的な理由は

NTTドコモ社長の中村維夫氏

 一方、ドコモが三井住友FGと組んだ理由は何だろうか。今回は三井住友FGとの提携だったが、ほかと組まないというわけではない。逆もまた同様だ。会見中何度も中村社長は「オープンモデル」という言葉を使った。

 「他社とも組めるのが理想なのだが、しかしまず当面は、インフラを構築しなくてはならない。リーダーライターの開発もこれからで、やることはまだまだいろいろある。まずは三井住友FGと組んでやっていくが、ほかとやらないというわけではない。オープンモデルで考えている」(中村社長)

 「お互い、最初にリスクを負ったところが、果実(利益)を取るのは当然。端末もシステム設計もこれからで、これから我々はいろいろな投資をしなくてはならず、そこを三井住友さんに一緒にリスクを背負ってもらっている」(NTTドコモプロダクト&サービス本部長の榎啓一氏)。現在、国内のクレジットカード1位はJCBだ。ドコモがJCBと組むことももちろんあり得るが、「ただ、2番目以降の会社さんとは、条件を変えることになるだろう。それは当然」(榎氏)

 ドコモが三井住友カードの株式を取得するために支払う980億円は、主にインフラ構築に充てられる見込みだ。加盟店にはFeliCaに対応した新しい端末を入れなくてはならない。その新端末の開発や、店舗に置かれたリプレースのために必要な出費をドコモが負担する形になるという。

 ドコモの収入モデルとしては、加盟店のクレジット手数料から、インフラ利用料として収益を分けてもらうことになりそうだ。現行の三井住友カードをおサイフケータイで利用する場合、プラスチックカードが親になり、おサイフケータイが子になるという形が考えられる。子カードとして使った場合でも、新しく構築するプラットフォームを利用した場合には、そのインフラ利用料としてある程度の収入が見込める。他のクレジットカード会社が参入した場合でも、同じ割合で分配しないまでも、利用料の収入を得られる。

 「ドコモ自身のクレジットカードサービスであれば、もちろん新しいプラットフォームを利用するので、その手数料はすべて当社の分になる」(中村社長)

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