「守りたいのは命と車」〜トヨタ新G-BOOKの狙い

» 2005年04月14日 23時59分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 「第一に安心、安全。守りたいのは命と車だ」。

 トヨタが4月15日に発表した新テレマティクスサービス「G-BOOK ALPHA」は、カーナビサービスの延長から離れ、各種の“安全機能”を搭載した。

 「欧米では、自動車に事故の発生を自動通報する機能があり、テレマティクスが重要な役割を果たしている。テレマティクスは自動車の将来に欠かせないものだ」(トヨタ自動車の豊田章男専務)

意識不明でも事故時に自動的に通報

 安全機能の第1に挙げられるのは、緊急通報システム「ヘルプネット」(2002年5月9日の記事参照)と連動した通報機能だ。

 カーナビのヘルプネットボタンにタッチすると、ヘルプネットセンターに電話がかかり、専用のオペレータに事故状況を音声で知らせることができる。自動車の位置もセンターに自動的に連絡され、センター側で所轄の警察や消防に連絡する仕組みだ。

 今回、車のエアバックと連動し、エアバック作動時に自動的にセンターに連絡するシステムも設けられた。ユーザーが事故で意識不明でも、通報が行われる画期的な仕組みだ。

事故時、通報が遅れるに従って死亡率が跳ね上がる。G-BOOKのヘルプネット自動通報サービスを使い、通報が6分早まれば、救命率は65%も向上すると見込まれる

 車の盗難や異常に対してもG-BOOKがサポートする。エンジン始動をチェックしており、不意に車が移動したり、ドアをこじ開けられるなど、盗難の可能性がある場合、G-BOOKセンターがそれを検知。オペレータが車両の位置を追跡し、ユーザーに連絡。要請に基づいて警備員を現地に派遣するサービスも提供する。

1x EV-DO対応の新型モジュール

 エアバック連動の動作を可能にしたのが、KDDIと共同開発した新型通信モジュール(DCM:Data Communication Module)だ。CDMA2000 1x EV-DOの通信モジュールとなっており、最大2.4Mbpsの高速データ通信が可能。音声通話も可能になっている。データ通信料金はauの「1X WIN」同様、定額だ。

 事故時の衝撃など過酷な条件に耐えるよう設計されており、「正突やオフセット衝突を想定した。通常の事故の場合、ほぼカバーできる作りになっている」(トヨタ)

 位置情報はカーナビのGPSだけでなく、DCMのgpsOne(au携帯電話が利用しているのと同じGPS機能)も利用できる。

今すぐ出発? 「1時間後なら渋滞が解消されます」

 こうした安全機能の向上を基本としながら、カーナビ機能やエンターテインメント機能も進化させている。

 カーナビ機能面では、VICSによる最新の道路渋滞情報と、過去の計測データから、総合的に渋滞状況を予測。目的地までの所用時間を表示するだけでなく、出発を遅らせた場合や休憩を挟んだ場合の所要時間も計算してくれる。

 つまりすぐに出発したほうが早いのか、1時間ほどのんびりしてから出発すれば渋滞が緩和されて到着が早まるのかなどを、総合的に判断してくれるわけだ。

 またDCMの音声通話機能を使い、オペレータに目的地を伝えれば、オペレータ側が目的地をセットしてくれるコンシェルジェサービスも用意している。レストランなどの施設案内やニュース、天気予報の配信、夜間や休日の診療機関の案内など、さまざまな情報をオペレータとの通話で得ることができる。

超流通を使った、音楽配信機能も搭載

 カーナビのHDDを使い、世界初のオンデマンド・カーオーディオも実現する。あらかじめHDD内に約1000曲の楽曲、約1万曲のカラオケが暗号化されて内蔵されており、ユーザーは暗号化を解除するキーを購入することで、楽曲を再生できる。

 視聴は無料で、1日の利用なら料金は1曲30円から。利用スタイルに合わせて少額課金を可能としたことで、新しいカーオーディオの世界を開いた。

期間 料金
視聴 無料
1日 30円〜
7日 50円〜
30日 70円〜
買い切り(無制限) 100円〜
カラオケ歌い放題 月額735円
BGM聞き放題 月額315円
暗号化された楽曲は、無償配布されるCD-ROMによって随時追加できる。

通信費は月間1000円

 安全機能やオペレータとの通話によるコンシェルジェ的なサービスも提供しながら、サービス料金は抑えた。通信にユーザーの携帯電話を利用する場合、年間3600円。ナビと携帯の接続はBluetoothを利用する。初年度は無料だ。

 DCMの通信機能を使う場合、年間1万2000円──つまり月間1000円で利用できる。こちらも初年度は無料となる。

 DCMを自動車電話として利用する場合も、年間3万3000円で利用でき、au携帯電話のユーザーならば1万8000円で済む。

 利用にはまもなく発表の新型純正カーナビゲーションが必要。新型ナビはすべてG-BOOK ALPHAに対応する。

 これまで高級車での搭載が多かったG-BOOKだが、「中型、小型車にも広げていくべきだと考えている」(トヨタ)。

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