「子どもにもケータイ」時代、その前に必要なこと神尾寿の時事日想

» 2005年04月14日 11時06分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 4月12日、サーベイリサーチセンターが発表した調査結果によると、「子どもの安全」への意識の高まりから、携帯電話への期待が強まっているという(4月12日の記事参照)

 確かに“いつでもどこでも”連絡が取れる携帯電話は、親の安心のために一役買うのだろう。子どもを狙った犯罪は増加しており、それがセンセーショナルな話題となる事も増えた。中長期的に見ても、「安全・安心のために子どもにケータイを与える」という傾向は続くだろう。

 しかし、1つ忘れてはいけないのは、携帯電話が子どもの安全・親の安心に寄与する一方で、携帯電話の利用に端を発する事件・トラブルも増えている点だ。

 例えば、携帯電話トラブルの代表である「出会い系サイト」問題だけ見ても、平成16年における被害者の84%が未成年者となっており、しかも被害者全体の96%がアクセス手段として携帯電話を用いている(警察庁統計資料より)。最近ではワンクリック詐欺などで未成年者が被害に遭うケースも増えているという。

 むろん、これらのリスクを避けるためにまず必要なのは、携帯電話トラブルにあわないよう、親が子どもに教育することだ。しかし、携帯電話キャリアも、親の不安と子どもの危険を取り除くためのツールを、しっかりと用意しておくべきではないだろうか。

見ならうべきところの多い、ドコモの「Kid's iモード」

 携帯電話の安全利用について、最も積極的な取り組みをしているのが、NTTドコモだ。同社は1999年以降、iモードによって若年層の携帯電話利用が活発化したこともあり、早期から「安全・安心」のための取り組みをしてきた。

 中でも効果が高いのが、アクセス制限機能の「Kid's iモード」だ。これは携帯電話からのコンテンツ利用がiモード公式サイトのみに限定されるもので、インターネット上にある一般サイトへのアクセスが完全にできなくなる。迷惑メールに書かれたURLにもアクセスできないので、ワンクリック詐欺の被害にも遭わない。

 さらにKid's iモードの優れている点は、設定・解除には保護者がドコモショップに足を運ばなければならないところだ。子どもが勝手にアクセス制限を解除し、興味本位で出会い系サイトや詐欺サイトにアクセスする、といった事が不可能なのだ。

 周知の通り、ドコモは公式サイトの公序良俗について高いモラルをもってチェックしており、出会い系サイトはもちろん、アダルト的なコンテンツは用意されていない。きちんと管理された「校庭」のように安全な空間だ。しかもiモード公式コンテンツは内容が豊富であり、ここから出られないとしても、子どもの不満が高まるとは考えにくい。Kid's iモードは、親と子の両方のニーズを満たす、よいサービスだと思う。

 ドコモはKid's iモードを、もっと積極的に広めていくべきだろう。広告宣伝でアピールするのはもちろん、未成年者の契約、特に小学生・中学生の契約時には「Kid's iモードの標準設定」に踏み込んでもいいくらいだと思う。その後、保護者の判断で不要となれば、Kid's iモードを解除してもらえればよい。

 一方、auとボーダフォンは早急に、Kid's iモードに類する仕組みを用意すべきである。端末レベルでアクセス制限がかけられるものは、auとボーダフォンにも存在する。しかし端末機能ではその存在があまり知られず、広まらない可能性が高い。また親のITリテラシーが低い場合、アクセス制限の設定ができなかったり、子どもに勝手に解除されてしまう可能性もある。Kid's iモードのようにネットワークサービスとしてアクセス制限をした方が有効だろう。

 今後、未成年者の携帯電話利用はさらに増えて、所有年齢も下がっていくだろう。小中学生が携帯電話を持つということが、レアケースではなくなってくる。その時代が本格化する前に、携帯電話キャリアは「子ども向けセキュリティサービス」を充実させ、親や学校と連携して子どもが携帯電話関連トラブル・犯罪にあわない体制を整える必要がある。

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