前回は日本の2G携帯電話の話をしました。日本の3G携帯の話に入る前に、基本的な解説をしておくことにしましょう。今回は、「電波」について、解説することにします。
携帯電話や無線LANなど、私たちのまわりには電波があふれています。しかし、そもそも電波とは何なのでしょうか?
電波は電磁波の1種です。電磁波のうち、無線通信などに使われるものを意味する言葉です。
電磁波というとなんだか、ロボットアニメの武器かなにかのようですが、実はそこら中にあります。たとえば、我々が見ることができる光も電磁波の1種です。また病院で使うレントゲンのX線も、赤外線や紫外線も電磁波です。何が違うのかというと、周波数が違うのです。電磁波のうち、だいたい300GHz〜3T(テラ)Hz程度までを上限とするものが電波です。なお、日本の電波法では3THzまでを電波と定義しています。
このあたりより上は、光になります。光のうち周波数が低く、目に見えないものが「赤外線」です。俗にいう遠赤外線とは、赤外線のうち周波数の低いものをいいますが、この領域は電波として扱うこともあります。
目に見える光を「可視光」といいます。さらにこの可視光の上が「紫外線」です。紫外線よりさらに周波数が高くなると、レントゲンで使うX線になり、X線よりもさらに周波数が高いものをガンマ線(放射線の1種)といいます。
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さて、電波とはその名のとおり「波」の1種でもあります。物理学などではゴロをよくするために、波のことを「波動」といいます。電波のことを説明するためには、この波動についてすこし理解しておく必要があります。
波は、ゼロから始まって上がって下がり、マイナスになって、また上がってゼロに戻ってきます。この繰り返しが波になっているわけで、このパターンを「サイクル(周期)」といい、1つのサイクルの長さを波長といいます。波長は、波の進む速さと周波数から計算でき、波の進む速さが一定だとすると、波長と周波数は互いに逆数の関係になります。つまり、波長が長ければ周波数が低く、周波数が高ければ、波長は短くなります。
後述するように波長(周波数)によって電波の性質が変わってくるため、電波は周波数によって分類されます。
周波数 | 波長 | 呼び名 | 用途など |
---|---|---|---|
30kHz以下 | 10km以上 | 超長波(VLF) | 電波時計 |
30kHz〜300kHz | 1km〜10km | 長波(LF) | 長波放送、潜水艦との通信 |
300kHz〜 3MHz | 100m〜1km | 中波(MF) | ラジオ放送 |
3MHz〜 30MHz | 10m〜100m | 短波(HF) | 海外向けラジオ放送 |
30MHz〜300MHz | 1m〜10m | 超短波(VHF) | テレビ |
300MHz〜 3GHz | 0.1m〜1m | 極超短波(UHF) | テレビ、携帯電話、無線LAN |
3GHz〜 30GHz | 0.01m〜0.1m | センチ波(SHF) | 衛星放送、レーダー |
30GHz〜300GHz | 0.001m〜0.01m | ミリ波(EHF) | 車載レーダー |
300GHz〜3T(テラ)Hz | 0.0001m〜0.001m | サブミリ波/遠赤外線 | − |
3THz〜370THz | 810nm〜0.0001m | 赤外線 | 加熱 |
370THz〜790THz | 380nm〜810nm | 可視光 | − |
790THz〜30P(ペタ)Hz | 10nm〜380nm | 紫外線 | 殺菌 |
30PHz〜300E(エクサ)Hz | 0.001nm〜10nm | X線 | レントゲンなど |
3EHz以上 | 0.1nm以下 | γ線 | 放射線 |
なお電磁波は、真空中では光の速さで伝わります。というより、光も電磁波の1種なので、「光速」とは電磁波の速さのことなのです。この値は俗に「1秒間に地球を7回り半」といわれています。実際の速度は、299792458m/s(約30万km/s)です。どうして半端な数がないのかというと、1mという長さは現在、光の速度を基準にして決めているからです。
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