モバイルSuica、2006年1月に向けた課題は?

» 2005年02月22日 20時20分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

 既報の通り、2月22日、JR東日本、ドコモ、ソニーの3社は合同で記者発表会を行い、Suicaをおサイフケータイに搭載した新サービス「モバイルSuica」を2006年1月から提供することを発表した。

 モバイルSuicaの目玉は、「電車に乗れる」「対応店舗で買い物ができる」といった現行のSuica機能に、携帯電話との融合で新しい機能が追加される点にある。具体的には「携帯の画面で履歴や残高が確認できる」「通信機能を使っていつでもチャージできる」「定期券を購入できる」といった機能が予定されており、また2007年度には「新幹線にチケットレスで乗車できるようにしたい」(JR東日本)とする。

モバイルSuicaの利用イメージ(上)とデモ(下)。携帯電話を自動改札機にぶつけるのは心配だが、「タッチ&ゴー」のキャッチコピーは変わらない予定

 発表会にはJR東日本、NTTドコモ、ソニー3社の社長が登場。「Suica事業を第3の柱にしたい。2008年度には、1日400万件の利用を目指す」(JR東日本大塚社長)「おサイフケータイによって、携帯電話はITインフラから生活インフラになった。2005年度末までに1000万台を目標にする」(ドコモ中村社長)「技術の移り変わりが非常に激しい我が社の中で、FeliCaは1980年代から息長く育ててきた大事な事業。今日はソニーにとっても記念すべき日」(ソニー安藤社長)と、モバイルSuicaの実現がそれぞれの会社にとって非常に大きな意味があることを強調した。

ソニー社長の安藤国威氏(左)、東日本旅客鉄道社長の大塚陸毅氏(中)、NTTドコモ社長の中村維夫氏(右)

FOMA 900/901iシリーズは対応予定

 3社によるフィールドテストは3月から始まるため、細かい仕様などはこれから決めていくことになる。そのため対応機種についても発表はなかったが「900i系、901i系には載せられるだろう。これから(FeliCaチップを)標準搭載するものはもちろん対応する」と中村氏。

 そのFOMA 900/901iシリーズには現在、同じFeliCa技術を用いた電子マネー「Edy」を使えるiアプリがすでに搭載されている。「EdyとモバイルSuicaは競合しないのか」という問いに、大塚氏は「切ない質問だ」と苦笑し、「(Edyとは)切磋琢磨していく。そうして電子マネー全体の普及を進めていかないと、市場全体の底上げにならないだろう」と続けた。

Suicaには、電車の乗り降りだけでなく、電子マネー機能も搭載されている。発表会にはSuicaのイメージキャラクターをつとめる西原亜希さんが登場。Suicaでミネラルウォーターやチョコレートを買うデモを行った

 「電車に乗る、というところからスタートしたSuicaは、Edyとは生い立ちが違う」とJR東日本は説明するが、SuicaもEdyも電子マネー機能を持っており、似た使われ方をしている。例えば同じコンビニエンスストアでも、ファミリーマートがSuica対応を進めているのに対し(1月19日の記事参照)、サークルKサンクスはEdyへの全店舗対応を進めている(2004年10月28日の記事参照)

 モバイルSuicaに対応した端末では、EdyとSuicaの両方を扱えるようになる予定だ。細かいところはまだ発表できないが、と前置きしつつ、ドコモ広報部・JR東日本広報部ともに「今後発表されるモバイルSuica対応機種では、現行のEdy向けiアプリと、モバイルSuica向けのiアプリが共存する形で搭載されるだろう」と認める。1つのモバイルSuica端末の中に、異なる電子マネーが2系統入ることになり、分かりにくい。ユーザーにどう理解してもらうかは、今後の課題となりそうだ。

東日本以外のエリア、ドコモ以外のキャリアの対応は

 定期券が入るとなると、携帯の金銭的価値が非常に高くなる。落とした場合のセキュリティはどうなるのだろうか。「指紋認証機能を使ったり、なくしたときはエアで止めるなどの手を考えている(ドコモ)」「定期券を紛失した場合は残額を確認して再発行する。用意できない場合には払い戻す(JR東日本)」とする。

 現在Suicaは、電車の乗り降りという基本機能に関してのみ、JR西日本「ICOCA」と相互乗り入れしている。モバイルSuicaは全国へ展開しないのか、という問いに「(JR他社に)同じことをやりたいと言われたら、もちろん協力する。東日本の中だけでクローズドすることはしないし、広がればユーザーの利便性も高まるだろう」と大塚氏は答えた。

 また「ドコモ以外の携帯キャリアとは提携しないのか」と聞かれ、「ほかのキャリアにも提案しているし、協力して進めていく」と大塚氏。中村氏も「その頃(2006年頃)にはauもボーダフォンも同じようなサービスを載せてくるだろう。携帯電話にこういうものが入ることはウェルカムだ」とコメントした。

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