●プレゼンス機能連携
また、マルチスケジューラにおいては、Skype APIを通じてSkypeのプレゼンス情報を表示させている(画面2)。
これもチャット連携と同様、Skype APIによって実現されている機能で、マルチスケジューラのメンバーリストには、各メンバーの「Skypeのオンライン情報」がアイコン表示され、ユーザーはSkypeを立ち上げなくてもマルチスケジューラのメンバーリストから連絡を取りたい相手の起動状況を確認できるようになっている。
サーバ型のアプリケーションでも、基本的にはAPIを使えばこれと同様のことが実現できるが、現在のところ、プレゼンス情報自体はユーザーのSkypeコンタクトリストに登録されているメンバーの状況しか表示することができないため、単純にサーバがプレゼンス情報の連携機能を持っていてもコンタクト相手のプレゼンス情報の表示はできない。この点は注意が必要だ。
P2Pというと、NapsterやWinnyをはじめとしたファイル交換ソフトが有名なため、企業に対して悪影響を与えるというイメージが依然としてつきまとっているようだ。
だが最近は、ファイル交換ソフトにおいても大手音楽事業者が著作権管理の可能なP2Pネットワーク事業者との提携を相次いで発表するなど、P2P技術の有効性が大きく注目を集めつつある。このように、ビジネスの場面でも有効に活用できるP2Pアプリケーションが増えてきており、企業内におけるP2Pアプリケーションの有効利用という視点が今後は必要になると、筆者は考える。特にSkypeの場合は、活用次第で高価なPBXを購入せずに社員の電話環境を構築することもできる。
P2P技術を使ったアプリケーションで注意が必要なのは、やはりソフトウェアとしてユーザーが登録できる性質のものが多いため、これまでのサーバアプリケーションと違いシステム担当者やネットワーク管理者によるコントロールが難しい点である。
Skypeに関しては、すべてのサービスをSkype自身がコントロールしているので、ユーザーの利用を停止するには、現状ではアプリケーションのインストールを禁止したり、インターネット接続部分でSkypeの通信を遮断するなどの手段(*3)をとるしかない(画面3)。
ただ、現在はビジネス向けのP2Pアプリケーションに関しては、管理サーバやシステムなどが提供されることも多くなった。Skypeも、Part1でも触れたようにグループウェアやメールサービスなど複数のシステムとの連携が相次いで発表されており、今後はビジネス上でより使いやすい環境が提供されることが予想される。「P2Pだから」という理由だけでユーザーの使用を禁止するよりは、利用方針を決めるなどして効果的な活用も検討すべきではないだろうか。
Column:マルチスケジューラとは?
マルチスケジューラは、ユーザー同士の予定表を共有するのが主な利用目的となっているソフトウェアである。マルチスケジューラもP2P技術によって動作しているソフトウェアのため、Skypeと同じくメンバーのPCにインストールするだけで、ユーザーの場所を選ばずインターネット経由で予定を共有ができるのが特徴である。
通常のグループウェアの予定機能は、サーバ中心のシステムのため、サーバの設置場所によってはアクセスできない場合が多い。そのため、セキュリティ面を考慮して、社内や部署内など利用シーンが限定される。マルチスケジューラは、このような物理的な制約を受けずに、PC同士が強度の暗号化と電子署名によってセキュリティを維持した状態で、インターネット経由で直接スケジュールデータを共有するようになっている。
現在のところ、ソフトウェアはベータ版として下記サイトにて公開されており、Skypeと同様、誰でも無料で利用可能だ。
アリエル・マルチスケジューラ 製品 ダウンロードサイト
http://www.ariel-networks.com/prouct/multischeduler/download.html
*3 ネットエージェントのOne Point Wallは、MSN MessengerやICQといったIM、WinMXやSkypeなどのP2Pソフトが通信ブロックの対象。製品サイト(http://www.netagent.co.jp/onepoint/)では、各ソフトの通信をブロックするためのルールが提供されている。
Copyright(C) 2010 SOFTBANK Creative Inc. All Right Reserved.