マオカラーのスーツを着込み、神妙な面持ちで話を聞く1匹の虎。日本テレビ放送「マネーの虎」は、すでに事業に成功している社長に対し起業志願者が事業計画をプレゼンし、賛同した社長達から出資金を獲得するまでの過程を撮った、起業家と出資者のマッチング番組であった。数多の社長が出演され社会現象にまでなったが、中でも人々の記憶に色濃く残っている社長の1人として、おそらく「なんでんかんでん」川原ひろし社長が挙げられるであろう。

　川原社長の祖父兄弟は、何を隠そう、辛子明太子の発明者とも言われる「ふくや」の創業者である。オペラ歌手になりたくて上京した彼はその後シャンソン歌手、漫才コンビ「Wけんじ」の前座歌手を勤め上げ、その傍らで副業として始めた豚骨ラーメン「なんでんかんでん」がヒットする。博多屋台を忠実に再現したこってりスープは当時の東京では珍しく、全国からファンが押しかけ、行列のみならず環状7号線渋滞をも引き起こした。

東京本店
東京都世田谷区羽根木1-8-7　山口ビル1F

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金・土・祝祭前日　１８時〜翌朝4時まで

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　そんな川原社長は現在、催眠術に大きな関心を寄せているのだそう。それも、「年内には日本発の催眠術＆マジックBARをオープンさせる！」と意気込むほどの熱の入れようとのこと。「ラーメンと催眠術！？」という意外なマッチングはもとより、飲食店経営の成功者が次に手がけるということもあり、スルーできない気になる話題である。

「催眠術とはインチキではないのか？ やらせではないのか！？」

　おそらく、誰もが大きく持っている疑問に、筆者が初体験がてら、催眠術の定番「アナタはだんだん眠くな〜る〜」のメカニズムを聞かせてもらった。

　「催眠とは、分かりやすく言えば起きがけのぼーっとした状態を作り出す事なんです」川原社長が師匠と仰ぐ、催眠術師の幻斎先生（http://www.gen-sai.net/）は説明する。

　「体はまだ半分眠りの中なのに、意識は起きている状態。交感神経が静まり、代わりに副交感神経が活発な状態なんですね。これを変性意識と呼びます」

　聞き慣れない言葉であるが、この変性意識になった時が、いわゆる催眠状態を指すのだそうだ。では変性意識の特徴とは何なのだろうか。

　「起きがけの自分を想像してみて下さい。起きたてに知り合いが家の中に入ってきたら、寝ぼけながらも“なんでいるのだ？”と思いますよね。つまり意識や記憶はあるんです。その知り合いに“おはよう！ 今日もいい天気だね。いい天気だからとりあえず、片手を上げてみようか”と言われたとします。“なんで手を上げなければならないのだ”と疑問視しながらも、のろのろと上げてあげる。訳が分からなくてもそれくらいは自分の許容範囲だという意識が働くんです。最後に“ありがとう！ もう手を下ろしていいよ。で、今度は服を脱いでみてよ”と言われたとしたらアナタはどうしますか？ 当然脱ぎませんよね、おかしいですから。つまり自分の常識内で嫌な事は拒否できるんです」

　誰もが起きがけの、ぼーっとした状態は毎日体験しているはずである。となると、催眠状態とは我々が思っているような怪しかったり怖かったりするものではなく、意外と身近にあるものということなのだろうか。

　「催眠状態自体は何ら特別なものではありません。ただしその状態を人工的に作り出すには、リラクゼーション誘導のステップを踏まなければなりません。緊張を取り払い、筋肉を弛緩させる必要があるんですね。リラクゼーション誘導の1つに振り子を目で追ってもらい、“アナタはだんだん眠くな〜る〜”と暗示をかける方法がありますが、これも、相手が自らの意思で振り子を目で追うという協力をしてくれないと成立しないんです。まずは相手からの信用を得て、次に協力を勝ち取ってリラックスさせる術。これこそが催眠術師の実力であり、催眠術の要と言えます」

　なるほどなるほど。幻斎先生は、振り子方式ではなく独自であみ出したリラクゼーション誘導により、日本最速で催眠術をかけられる男と呼ばれているのだそう。

　そこで、百聞は一見にしかず！ 早速、筆者も催眠術を初体験することとなった。そして、幻斎マジックにより、自分の名前が記憶から消えてしまうという事態に陥ったのである！（もちろん、あとから催眠状態から覚醒し、事なきを得たのであるが）

　催眠状態に至るまでのメソッドは企業秘密という事で、残念ながら、詳細を明かすことは叶わないのだが、筆者が体験した印象だと、割と集中力が必要な動きを早いピッチで要求してくる。要求された動きにただただ応えようとするうちに思考が間に合わなくなり、一瞬脳内に“無”の状態が生まれる。その一瞬をつき「はい、体の力が抜けるー！」と言われると、要求に応える事しか頭にない脳がそのまま、言う事を聞いてしまうという心理である。そうしてぐにゃりと体中の力が抜け、あっという間に催眠状態の完成である。

　筋肉がリラックスしきった体は、体温がほんの少し上昇し、ふわふわと心地いい。ちょうど布団の中で二度寝しちゃおうかチラッと考えている時の感覚だ。そんな中、筆者はものの見事に操られた。言われるまま腕が動いたり、与えられたぬいぐるみを離さないといったのは序の口。「自分の名前を忘れる」と告げられた途端、まさかの状態だが頭の中は真っ白になり、辛うじて1文字目を掴みそうにはなったが、その後に続く文字が全く出てこないという、我ながら思わず首をかしげてしまう体験をしたのである……。

　催眠状態は前述の通り、交感神経が静まり副交感神経が活発に働いている。これは眠りに入る前と、眠りから出たばかりの状態と同等の環境であるため、当然微量の眠気に包まれる事になる。そして催眠状態を解かれた後も、一定量の眠気が残るのだ。よって催眠術をかけられた日はスムーズに、しっかりとした深い眠りに入る事ができるのだそう。

　彼女と2人で楽しい不思議体験を共有した後は、いい気分のままスマートに安眠。生活のスパイス＆安眠の強力なツールとなりそうな「新感覚バー」に、乞うご期待！ また、来年は全国主要都市にて、催眠術教室を開講予定。4日間の短気集中型で、徹底的に術師の技をレクチャーするという内容で、受講費用20万円（！）と高額ながら、すでにかなりの問い合わせ＆申し込み希望が来ているとのことである。