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鴨シャブ竹亭(東京・赤坂)
長年の和食のノウハウが鍋の中に凝縮

坊主頭にひときわ光を放つ眼がトレードマークの「大将」こと新美徳造さんには、長年の板前修行の「自分だけの味で、東京で勝負したい」という強い思いがあった。そこで50歳を過ぎてから、あえて東京に進出したのが、4年前にオープンした、ここ赤坂の「鴨シャブ竹亭」だ。木目素材の優しさの中に「霧の摩周湖をイメージした」というガラス張りのカウンターが目に入り、心地よい落ち着きと、肩に力が入らないような雰囲気を出している。それが、昭和56年創業の老舗の本店とはまた違った形で、見事に客の心を掴んでいる。
大将は知多半島の中央に位置する阿久比(あぐい)町出身。この地は徳川家康の生母「於大の方(おだいのかた)」のゆかりの地でも知られる。そのお隣の半田市に「料亭 竹亭本店」を出したのが今から20年以上前。この店は当初、京料理の店だったのだが、一番自信のあるという「鴨」に照準をぐっと絞っていくうちに、今のスタイルに行き着いた。そしてさらにそのスタイルを理想の形に近づけたのがこの店なのだ。

新美徳造
鴨の旨味をくるみと山椒の特製タレが包み込む
鴨

その大将自信の「鴨」は、宮内庁御用達の千葉産の合鴨である。また、新潟産の真鴨も季節によって使い分ける。野菜は味がしっかりした、シャキシャキのもやし、ねぎ、せり、にらだ。
鍋が熱くなってきたら、鴨をさっと湯通しし、この店特製のくるみだれでいただく。この中には、特製の山椒の佃煮が入っているのだ。新鮮でジューシーな鴨に、上品な甘さのくるみと、香りとほのかな刺激を与えてくれる山椒の組み合わせは絶品。すっきりしているのにコクがあり、鼻腔に抜ける香りが素晴らしく、いくらでもお腹に入ってしまう。
見た目も鮮やかに磨かれた銅の鍋は、なんと24年間にわたって丁寧に使っているという。ほかにも雪の結晶をイメージしたというどんぶりなど、綺麗な器の形や、鮮やかな色の取り合わせの数々は、目でも楽しく食事ができる。これもサービス精神旺盛な大将のこだわりのひとつだ。

そして真打は名物「鴨らーめん」!

そして、鍋の最後にはシメの「鴨らーめん」が待っている。鴨のダシがしっかり出たスープで、さっと湯通ししたクロレラを練りこんだ1.1mmの特注の極細麺を、ニラとニンニクの利いたスープで、わんこそばのように食べる。これがまた抜群に美味い。知多半島の製麺所で特別に作られているという極細のちぢれ麺が、鴨の旨みとしっかり絡み合って、見た目以上の味のインパクトを与える。今まで、贅沢な味だと感じていた「鴨シャブ」が前菜のように感じるほど、不思議なくらい箸が進んでしまう。最後の最後までしっかり味わえ、いつまでも余韻を楽しめる鴨鍋料理なのだ。

鴨シャブシャブ (1人前 6300円〜)

鴨らーめん