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歴史の長い時計宝飾展が開催されてきたバーゼル地方の横顔
見本市の街「バーゼル」

 バーゼル・ワールドが開催される会場であるメッセ・バーゼルは他にもマルチメディアや工業用機器などの見本市が開催されている。東京の有明にあるビッグサイトのように、年間を通じてあらゆるイベントに使用されているそうだ。イベントの内容によって使用されるホールの規模は異なるようだが、世界中から来場者があることには変わりがないという。それだけに来場者の食文化に合うように会場内に設けられたレストランも多彩なのだ。また、レストランだけでなく、会場の一部には礼拝用のモスクまでもが置かれているのは、その国の人たちにとってありがたい配慮だろう。

メッセ・バーゼル01

 スイスの料理を振る舞うメインレストランやチャイニーズレストラン、ヨーロッパで人気沸騰している回転寿司のコーナーがあるのには驚いた。隣接するこの地域で最も高層のラマダ・ホテル内にもレストランやバーがあり、連日遅くまで賑わっている。
 しかし、スイスでの食事は何でも値段が高い。会場内でサンドイッチとコカ・コーラを買っただけで1500円である。会場外なら良心的かと思ったが、マクドナルドでは日本でいうバリューセットがなくハンバーガーとポテトに飲み物で軽く1800円なり。久しぶりにマックのメニューをゆっくりと味わって食べたのだった。

メッセ・バーゼル02
バーゼルの横顔

 スイスといえば、まずツェルマットやグリンデルワルドなどアルプス地方の景色を思い浮かべる人が多いだろう。もしくは、ビジネスマンであれば迷わずチューリッヒやジュネーブを想像するハズだ。首都も町そのものが世界遺産になっているベルンだし、時計ツウであればラ・ショードフォンを思い浮かべると思う。テレビを観ていても、バーゼルという言葉を耳にするのは、サッカーのヨーロッパリーグに関する話題くらいではないだろうか。

 いったい何故、バーゼルで色々な見本市が開催されているのだろうか。
 その理由には、シュタット準州の州都であるこの土地が、昔からスイスで最も商工業が盛んな町であったからだといわれている。ちょうどドイツとフランスとスイスの国境が接する地点であり、大型船舶が通航できるライン川最上流沿いに港を持つバーゼルは、その豊富な水量を生かして古くから工業を発展させてきた。今でも化学や製薬工業の中心地として知られ、ノヴァルティスやロシュなどの世界的な大企業が本拠を置いているのだ。

スイス01

 鉄道は、スイス国鉄のBahnhof Basel SBBがメインステーションだ。駅の西側にはフランス国鉄専用のホームがあり、駅構内にパスポートチェックのためのゲートが設けられている。見本市会場からBahnhof Basel SBBとは逆の方向に10分ほど歩いて行くとドイツ鉄道が運営するBadischer Bahnhofがあり、乗車して約15分、駅にして4つほど進むとドイツ領に入る。

 市内の移動はタクシーの値段が日本よりも高いので、路線が充実しているバスや市電が特にオススメである。バスはドイツやフランスに入る路線もあるので便利だ。空港はチューリッヒが一般的に使用されているが、バーゼル近郊のフランス領であるミュールーズにヨーロッパ圏内の移動に便利なユーロエアポートがある。この空港は、フランス用とスイス用の出入口が別々に設けられているのが特徴。道路や駐車場もフランス側とスイス側で接続のない独立した状態にあるのが不思議な感覚で面白い。

スイス02

 バーゼルは、1460年に設立されたスイス最古の大学であるバーゼル大学があり、中世の時代から学芸の中心地として知られてきた学都である。それだけに市内には、市民によって建てられたヨーロッパ最初の美術館のほか、北方ゴシックやルネサンス、印象派などの名立たるコレクションが鑑賞できるスイス最大級の美術館クンストミュージアムをはじめ、ティンゲリー美術館やドールハウス博物館、バイエラー・コレクション、漫画博物館に紙の博物館などなど約30ものユニークな美術や博物館が点在しており、見本市に限らず文化や芸術に親しめる街として、一度は訪れる価値があるといえるだろう。

スイス03

 バーゼル庁舎も19世紀に改修されたが16世紀後期ゴシック様式の建築で内部には色彩かなフレスコ画が残っている。宝飾のジュネーブ、金融のチューリヒに対して、バーゼルは昔から商工業の街であり、今や宝飾品となりつつある時計だが工業製品として考えれば、バーゼルほど見本市にふさわしい場所はないだろう。