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エコカーに乗って地球の未来を考えてみた
プロローグ

 雪の降らない東京、季節の花々の異常な早咲き、観測史上類を見ない異常気象――2007年は地球温暖化の予兆をリアルに感じる冬で始まった。地球温暖化の原因のひとつとされるCO2の削減は、待ったなしのところまできているのかもしれない。クルマのCO2削減が急務となっている今、燃料電池車や電気自動車などの「エコカー」について真剣に考える必要があるだろう。

 エコカーとはいってもクルマはクルマ。どうしても“特別な未来カー”というイメージがアタマから離れないが、運転免許を持っていれば誰でも練習ナシに運転できなければ、クルマとして本格的な普及は望めないだろう。今、日本のエコカーはどこまできているのか。今回の+D Style特集では、「誰でも試乗できる燃料電池車」と「今すぐ買える電気自動車」を実際に体験試乗してみた。

誰でも試乗できる燃料電池車――日産「X-TRAIL FCV」

 燃料電池車とは、水素と空気中の酸素の反応で発電する燃料電池から得た電気エネルギーでモーターを回して走行するエコカーのこと。ガソリンなど化石燃料を使う従来の自動車は、化石燃料を燃やして動力を得る過程でCO2が発生してしまうが、燃料電池車はエネルギー生成の過程で発生するのは「水(水蒸気)」のみで、CO2だけでなく大気汚染の原因となる有害な排出ガスもゼロだ。

 また、燃料電池車はガソリン車に比べてエネルギー効率が非常に高く、燃料の水素を生成するエネルギーを含めたエネルギー効率で比べても、現時点でガソリン車の約2倍、効率的な水素生成の技術開発が進めばガソリン車の約3倍のエネルギー効率が見込めるという。排出するのは水だけという直接的なクリーンさ以外にも、限られた資源をより効率よく利用するという省エネルギーの観点からも、燃料電池車への期待は大きい。

JHFCプロジェクト

 自動車メーカーでも燃料電池車の開発を進めている。経済産業省が実施する「JHFCプロジェクト(水素・燃料電池実証プロジェクト)」には、国内外の自動車メーカーが開発した6種類の燃料電池車が参加している。

 なかでも燃料電池車の普及啓蒙活動に積極的なのは日産自動車。1台あたり約1億円とたいへん高価な燃料電池車は、月額数十万円というリース販売で官公庁や関連企業・団体など非常に限定されたシーンでしか利用されていない。だが日産自動車は、2006年4月から一般ドライバーを招いての「燃料電池車運転体験試乗会」を定期的に実施。免許取得1年以上の運転免許を持つドライバーなら、誰でも燃料電池車「X-TRAIL FCV」05モデルを自分で運転できるという取り組みを1年近くも続けている(「燃料電池車運転体験試乗会」は今後も継続予定)。

X-TRAIL FCV

 現時点でもっとも“究極のエコカー”に近いと言われる燃料電池車「X-TRAIL FCV」を、+D Style編集部が実際に運転して体感してみた。→「燃料電池車で東京ベイエリアを疾走してみた」

今すぐ買える電気自動車――AUTO EV「ジラソーレ」

 研究開発が進んできたとはいえ、高価な燃料電池スタックを使う燃料電池車は1台約1億円と、まだまだ一般ドライバーの手が届くものではない。

 「だが地球温暖化を食い止めるためにも、すぐにでもエコカー生活を実践したい」……。そんなロハスなライフスタイルを求めるドライバー待望の“買える”電気自動車が、2007年初頭に発表された。「ジラソーレ」――イタリア語で“ひまわり”を表すネーミングを持つそのエコカーは、実用的なカーライフに不可欠な「2人乗車」、つまり軽自動車としての登録を苦労の末に勝ち取った“本当に実用的な電気自動車”の第1号モデルだ。

 「ジラソーレ:税込み260万4000円」――従来のガソリン車なら100万円前後で買えるモデルも少なくない中、2人乗りの電気自動車にベンツAクラス並みの投資をするのをためらう人は少なくないだろう。超低公害車への補助金交付対象額の上限77万円の交付を受けたとしても、180万円強は、やはり高い。

ジラソーレ01

 だが、考えてみて欲しい。近くのスーパーへ買い物に行ったり子供の送り迎えなど1〜2人乗車の用途に、はたして乗車定員4〜5人クラスのボディ、ましてや7〜8人乗りのミニバンが必要なのだろうか? 通りを往来する自動車を眺めていても、乗車定員枠まで乗っているケースは本当に少ない。

 もう1つ、忘れてはいけないのが燃料代・税金・消耗部品代といったランニングコスト。ジラソーレの燃料代はガソリン車の1/10以下(フル充電で約100円前後:走行距離120キロ)、税金面でも重量税(3年で1万3200円)や自動車取得税(6800円)などが破格に安く、シンプルなパワートレインは消耗部品も格安で済む。仮に5年間(年間1万キロ)乗ったとしたら、経済的といわれる軽自動車(ガソリン車)と比較しても40万〜50万円のコストダウンとなる試算だ。ましてや普通自動車ならその2倍は違ってくるだろう。そのほかにも、駐車場の割引制度や補助金の上乗せ制度(一部の自治体)といった電気自動車への優遇制度も含めると、その経済的恩恵も見逃せない。

ジラソーレ02

 こうなると気になるのは、クルマとしての性能。今すぐ買える電気自動車は“本当に実用的”なのだろうか。2人乗り仕様の電気自動車「ジラソーレ」を、+D Style編集部が実際に運転して体感してみた。→「電気自動車で高級住宅街をクルーズしてみた」



取材協力

日産自動車 http://www.nissan.co.jp/
オートイーブイジャパン http://www.auto-ev-japan.com/