杉山淳一の +R Style:第7鉄 SLと旅客機を同時にパチリ――貝塚公園でナハネフ22が待っている (1/3)

福岡県貝塚駅のすぐ近くの交通公園には、ある蒸気機関車と寝台車が保存されている。懐かしい列車、ミニチュアのクルマ、最新鋭のジェット機……“元男の子”の誰もが心をくすぐられる公園散歩に出かけよう。

 子どもの頃、交通公園に行くとワクワクした。ミニチュアの道路があり、ミニチュアの信号機があり……ミニチュアとはいえ、ちゃんとそれらが作動する公園もあった。クルマの運転ができない子どもたちは、そんなミニチュアの道路を自転車で走り、ちょっと得意げになったものだった。旅先で交通公園を見かけると、子どもの頃を懐かしく思う。

ay_sgym02.jpg 最新鋭の飛行機と大正時代の機関車
ay_sgym01.jpg 今回のルート(GoogleMap

 地下鉄とローカル私鉄の乗り継ぎ駅付近を歩く

 2006年秋、日本の航空業界はどうかしていた。元日本航空だったJALインターナショナルと、元日本エアシステムだったJALジャパンが統合。その記念として大バーゲンを決行した。例えば東京−福岡が8000円だ。それに対抗して、全日空は7700円で勝負を挑み、JALもさらに値下げで対抗。そんなとき、スカイマークエアラインズが格安航空のプライドを賭けて6700円を宣言した。その超格安チケットで私は飛んだ。日帰りで福岡へ。

 東京から福岡まで日帰りとは酔狂だと思う。しかし、往復1万3400円ならと、私はなんとか一日の休みを作って旅に出た。目的は西日本鉄道の宮地岳線だ。宮地岳線は福岡市営地下鉄箱崎線の終点、貝塚駅からさらに北へ向かい、玄界灘に面した津屋崎という街を結んでいた。そして当時、途中の西鉄新宮駅から津屋崎駅までが半年後に廃止されると決まっていた。その消えゆく路線にどうしても乗りたかったのだ。そんな鉄道ファンの私に、航空業界が味方してくれるとは愉快である。

ay_sgym03.jpg 福岡市営地下鉄で貝塚へ

 福岡空港は日本で唯一、都心から市営地下鉄が直接乗り入れる空港だ。博多までは電車で5分。福岡空港駅ができるまでは、空港といえば連絡バスが常識だった。その後、JRの千歳空港駅や京急羽田空港駅が開業した。空港の成功は鉄道アクセスにあると言ってもいい。その意味で福岡空港は、鉄路と空路が協調していく手本になった。

 スカイマークエアラインズの到着ロビーからちょっと歩いて、地下に降りると駅がある。一面にJR西日本の広告が貼りつけられ「帰りはのぞみに乗って」とポスターの女優が微笑む。近距離の鉄道と空路は仲良しだ。しかし、長距離区間はライバルである。関西−福岡は空路と陸路の激戦区だと実感した。

 地下鉄を中洲川端駅で乗り換えて、終点の貝塚駅着。電車を降りて、前のほうに歩いていくと改札口があり、少し先にまた改札口がある。そこには鏡で映したような配置で宮地岳線のホームがあった。すぐにでも乗りたい気持ちを抑えて、いったん駅の外に出る。改札口は地上にあるくせに、外に出るには階段を上がってまた降りなくてはいけない。妙な作りになっている。

ay_sgym04.jpg 駅から見下ろした貝塚公園

 階上から山側を見ると、そこに交通公園があった。福岡市東区の貝塚公園である。ミニチュアの道路がある。とおくに小型飛行機も見える。しかし私の目的は、ここに保存されているという蒸気機関車と寝台車だ。鉄道ファン向けのSNS「++RAIL」の日記に「宮地岳線に乗りにいく」と書いたところ、フレンドから「ぜひ訪ねて」と勧められた。駅の真横の交通公園。季節は秋、晴天、涼しい風が吹く。これは歩かずにはいられない。

 貝塚公園は、休日には子どもが乗れる電動ミニカーを貸し出しているようだ。かなり本格的な交通公園である。もっとも今日は平日だから閑散としている。ミニカー乗り場もシャッターが下りていた。だから巨人になったつもりで「車道」を歩いた。これは愉快。クルマ用の信号で停まってみる。ぶぉーんと声を出しそうになり、誰もいないが気恥ずかしくなってやめた。おとなしく、キープレフトで奥へ歩いていく。

 最初に現れた展示車両は南の国のオートバイタクシーと賑やかな装飾のバスだ。1989年に福岡で開催された「アジア太平洋博覧会」で会場を走っていたという。「アジア太平洋博覧会」よりも「よかトピア」という愛称のほうが知られているかもしれない。南国から連れてこられて、仲間と異国に残された車両たち。せめてもう一度、走らせてあげたい。

ay_sgym05.jpgay_sgym06.jpg タイのオートバイタクシー。「トゥクトゥク」というらしい(左)。こちらも南国のバス。「フィリピン」と大書してある(右)

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