丁寧に焼き上げられた、ぶ厚い肉のかたまりにざくっとナイフを入れると、芳香とともに湯気が立ち上り、肉汁が滴る……。 今でこそ、安価な輸入牛肉の流通のおかげで、カジュアルに食べられるようになったステーキだが、幼少期のころにドラマや映画の中に登場するステーキは、まぎれもなく、“憧れの高級料理”として輝いていた。 そんな憧れを思い起こさせてくれるのが、2007年秋に日本に初上陸した「ルースクリスステーキハウス」である。 |
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世界に100店舗以上の展開を誇る、アメリカ発祥の高級ステーキレストラン。厚切りの肉を980度でグリルし、うまみをぎゅっと閉じこめた人気のステーキ。アメリカ人の食文化を表現するかのような豪快な盛り合わせ。ただ、「ルースクリスステーキハウス」を語る時に伝えたいのは、単なる美味しさと豪快さだけではない。何もないところから成功したフロンティアスピリッツが、この高級レストランチェーンの歴史に詰まっている。
1927年、ルースクリスステーキハウスの創業者であるルース・ファテルがニューオーリンズに産まれた。何と偶然にも同じ日に、ルースクリスステーキハウスの前身である「クリスステーキハウス」が市内に開店したのである!
大恐慌時代に幼少期を過ごした才媛のルースは、教師や、夫婦での厩舎経営などを行っていくが、離婚によりシングルマザーとなる。女手ひとつで2人の子供を育てていたルースが38歳の時、新聞に掲載されていた3行の広告に目を留めた。それが、奇しくも、ルースの誕生日に産まれた店「クリスステーキハウス」の売却広告だったのである。
自宅を抵当に入れて買い取った「クリスステーキハウス」の経営は安定し、繁盛した。だが、約10年後、厨房の失火により、それまで築き上げてきた店が全焼してしまう。閉店を余儀なくされたルースは、窮地の中で同じストリート沿いの新しい店舗を買った。しかし、そこでは「クリスステーキハウス」の名前を継続して使うことが許されなかった。そこで、自分の名前を冠にした「ルースクリスステーキハウス」が、新たに産まれたのである。
それ以来、「ルースクリスステーキハウス」は、常連客や友人、仕事仲間などから次々とフランチャイズを申し込まれるようになり、家族のような絆で結ばれたビジネスのコミュニティーは、現在6カ国に広がっている。
シズル感へのこだわりと独自の技術が、全米でも高い評価を | 個人の邸宅に呼ばれたかのような、シックでくつろげる店内 |
そしてここ日本の虎ノ門にも、日本初上陸の支店がある。ブラウンを基調とした、個人の邸宅のようなシックな雰囲気だが、接客はいたってフレンドリー。ルースが提唱していた“サザンホスピタリティー”が日本にも継承されている。
同店のおすすめはやはりステーキ。980度で焼き上げるそうで、おすすめは、フルボディの肉質が特徴のUSDAプライムカット「ニューヨークストリップ」と、肉本来のうまみと霜降りの柔らかさを兼ね備えたUSDAプライムビーフを代表する一品「リブアイ」。一皿9500円というなかなかのプライスだが、よく聞いてみると450グラムもあるのだそう! 2人づれなら、いろいろ食べられるコースメニューがベターだろう。
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本国そのままの雰囲気を楽しめるのが魅力のレストランだけあって、たっぷりとサーブされるロブスタービスクや、ふんだんに盛られたサラダ、ドーナツの盛り合わせのようなオニオンリングなど、どれも盛りつけはアメリカンサイズ。だからといって、大味ではない。レアからウェルダンまで5段階の焼き加減を選び、260度に熱したアツアツのプレートで出されるステーキも、飽きが来ずに最後まで完食できる上質の素材と味わいである。
選べる付け合わせ野菜は、ボリュームに驚くこと間違いなし! | 食後のデザートもアメリカンスタイル |
「不況不況」と倹約ムードの世の中ではあるけれども、単なるぜいたくではなく、ピンチの中で何度も立ち上がったルースの起業家パワーに、あやかりに行ってはいかがだろう。ランチは、メインディッシュにプラス1000円でセットスープ、サラダまたはサイドディッシュ、コーヒーがつく。
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取材・文/華麗叫子
編集/似鳥陽子
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