ジャンクで購入したRICOH Auto Half Sだが、状態はかなり悪かった。裏蓋のモルトは腐食し、もはやただの汚れである。これを綺麗にはがして、新しくモルトを張り直す。
本体外装の構造は非常に合理的で、裏蓋を開けるネジと三脚穴を利用して前ボディを止めている。これを外すと、中身が見えてくる。上部のシャッターは、ただ筒状のボタンが上に乗っているだけで、固定されているわけではない。このあたりは初代機の設計を残したままで、ボタンだけ上に移す工夫をしたということだろう。
フルオートを実現したとは言っても、この時代である。なにせ電源を全く使わないわけだが、内部は機械だらけである。内部に見える電気配線は、露出計を動かすためのものだ。配線は腐食しておらず、結構しっかりしていた。
しかしながらセレン素子は光を当てると少し反応はあるものの、とても露出計として使える電圧は出ていない。完全に劣化してしまっているようだ。セレン素子というのは案外丈夫なもので、60年を経過したZEISS CONTESSA 35のものもまだ電力を出していたぐらいなのだが、まあ何十年も使うとは想定していなかったのだろう。一方メーターのほうは、電圧さえかければ問題なく動くようだ。
内部は劣化したモルトでゴミだらけだった。特にファインダの汚れがひどかったので、レンズクリーナーを使って掃除した。ネジ2本で簡単に外せる構造になっている。幸い内部までゴミは進入していなかったので、前後をクリーニングしただけで良かった。
さて、セレンが駄目ということでマニュアルカメラとしての道を歩むことがほぼ決定的となった。Auto Half Sの場合、Autoではシャッタースピードが1/125秒だが、マニュアルにすると1/30秒となる。おそらくストロボとの同調を考えてのことだろう。
しかし昼間での撮影で1/30秒では使いづらい。そこで露出計付近のレバーを固定して、1/125秒専用にしてみた。テスト撮影してみたが、とにかく1回露出を計ってしまえば、あとは太陽の方向を考えて絞りを案分すればいいだけなので、子供と遊びながらスナップを撮るような用途では最高である。
なにしろフォーカス合わせの時間がゼロで、シャッターを押しさえすれば撮れる。このあたりの瞬間を捉える感じは、コンパクトデジカメでは味わえない。また巻き上げも全自動なので、本当に電力も消費せず、ただただスパスパとシャッターを押していけばいい。ある意味撮影者の気持ちに対して、ものすごく正直に撮れるカメラと言えるだろう。
ただ、せっかくメーターは生きているのに、露出がマニュアルというのが残念である。またシャッターを1/125sに固定してしまったので、例えマニュアルでも夕方から夜にかけては、絞り開放でも追いつかなくなる。
そこで、セレン素子の変わりとなる太陽電池をネットで探して注文した。以前もZEISS CONTESSA 35の修理で使った太陽電池、実を言えばAuto Half Sの露出計を直すために購入した余りで、修理したのはこっちのほうが先だったのである。
露出計を別のもので代用するのは初めてだ。うまくいくだろうか。
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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