-コデラ的-Slow-Life-:完成されたフルオートマシン、「RICOH Auto Half S」

ハーフカメラを語る上で、OLYMPUS Penシリーズとともに双璧を成すと言っても過言ではないのが、RICOHの「Auto Half」シリーズだ。今回は「RICOH Auto Half S」を取り上げる。


photo ハーフカメラで未だに人気の高い「RICOH Auto Half S」

 思えば筆者がクラシックカメラにハマったきっかけは、OLYMPUS「Pen F」を入手してからのことである。それ以降、実はハーフカメラを中心に集め始めたのだが、この連載ではあんまり扱ってこなかった。

 ハーフカメラを語る上で欠かせないシリーズとして、OLYMPUS Penシリーズは言うまでもない。だがもう1つ双璧を成すと言っても過言ではないのが、RICOHの「Auto Half」シリーズである。修理したのは2年ほど前になるが、今回は「RICOH Auto Half S」を取り上げることにする。


photo レンズは当時としてはワイドの35mm(35mm換算)

 初代Auto Halfが発売されたのは、1962年(昭和37年)の事である。すでにOLYMPUS Penは発売されており、これから本格的ハーフブームが到来しようという時に、ハーフでは後発として参入した。それゆえに、他社の追随を許さない独自のスタイルをひっさげて登場した。完全フルオートである。


photo 底部のノブを回してゼンマイをチャージする

 露出を自動化し、フォーカス合わせ不要のパンフォーカス設計、そしてフィルムの巻き上げすらもゼンマイで自動巻き上げである。これを45年以上前に、たばこの箱サイズに凝縮した。この中に、普通のパトローネフィルムが入るのである。その容積を考えたら、驚異的な集積設計だと言えるだろう。


photo 裏蓋が横に開くように改良

 1965年に発売されたAuto Half Sは、初代Auto Halfで不評だった裏蓋の着脱を廃止し、セルフタイマーを付けた後継機である。ただ4年の歳月を経た改良という事もあって、シャッターボタンの位置が変更されるなど、かなり見た目も違っている。しかしのちに多くのバリエーションを産むAuto Halfの原型となったのが、このモデルである。

 この次に発売されたAuto Half Eは、セルフタイマーを省いた廉価版(といっても1000円しか違わない)だが、フロントパネルがフルフラットなので、イベント用として様々なデザインの特注品が作られた。1970年の大阪万博の時には、その記念モデルが発売され、現在でも高値でやりとりされている。

露出計とシャッター不良の名機

 元々数がたくさん売れたこともあって、Auto Halfは中古市場には比較的豊富にあるシリーズだ。だが人気も高いため、完動品はなかなか高くておいそれと手が出せない。だいたい1万8千円から3万円ぐらいが店頭での相場ではないかと思う。結構丈夫であまり壊れないので、ジャンクではあまり見かけないカメラだ。

 しかしそのAuto Half Sは、露出計不良、シャッター不良ということで、2000円でジャンクコーナーに転がっていた。前玉のコーティングが少し剥がれかかっているのを難にして、まずまず外装はまともである。ただし、落としたかぶつけたかしたのか、1カ所へこみがある。カメラの世界ではこういうへこみを「アタリ」という。


photo 上部のダイヤルでマニュアル露出も可能

 以前からチャンスがあれば買おうと思ってだいたいのスペックは頭に入っていたので、迷わず購入。先人の経験を調べてみると、ゼンマイの修理はかなり難しいとのことで、巻き上げ部が壊れていたらアウトである。もしシャッターのねばり程度であれば、洗浄でなんとか直るだろう。

 露出計は単なる接点不良であればラッキーだが、セレン素子が経年劣化していれば諦めるしかない。ただ上部のダイヤルで絞りを決めてマニュアルでも撮れるカメラなので、露出計を併用すれば撮れないこともない。その場合はシャッタースピード1/30秒のマニュアル撮影となる。

 いずれにせよファインダ内の汚れがすさまじいので、分解修理は必須である。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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