熱帯魚の専門誌から取材を受けるバーというのも、めずらしい話だ。カウンターの奥にある赤い水槽には、巨大な熱帯魚や古代魚たちがゆっくりとうねるように泳いでいる。東京・中目黒の水族館Bar「GRANSHIP(グランシップ)」――水槽を見せるため低めに作られたカウンターには、足がしっかり地面に付く背もたれの付いた椅子。座ると、ちょっとほかのバーとは違う親しみやすさを感じた。 |
「駅から離れて、こんな水槽もあって、敷居が高そうなイメージを持たれるお客様が多いらしいんですが……実際に来てもらえれば、“そうでもないじゃん”と分かってもらえると思いますよ(笑)」 そう話すのは、マネージャーの田口淳也さん。うちの接客はラフですから、と笑いながら言う。そんな心地よいゆるさが、この店の“気配り”のスタイルだ。灰皿に目を移すと、もう新しいものになっている。全然、雑なワケではない。 |
バーとひとことでいっても、そのスタイルは千差万別。画一的でない分、最初は“どういう店だろう”と緊張してしまうが、GRANSHIPでは“水族館”という個性をツールとして、訪れた人とのコミュニケーションが自然と始まるという。「店の個性を楽しむのは、バーの大きなポイントです。そろえているお酒にだって、スタッフの個性がでます。当然、バーですからある程度のものはどこでもそろっていますが、そこからちょっと細い路地に入ると、お店の個性が見えてくると思いますよ」 GRANSHIPの個性として、もうひとつ。和食・中華・創作とさまざまなスタイルの料理を経験してきた田口さんが作る本格的なフードメニューは、お酒に負けず魅力的だ。旬の食材を使ってメニューは次々変わっていく。料理を決め、それにあったお酒をスタッフに相談する――そんな楽しみ方もありだろう。 |
GRANSHIPのバーテンダー・山岸一崇さんに“初心者にオススメのカクテルを”と芸もなく聞いてみると、まず出てきたのはラムコーク。それ、居酒屋でも飲める……と、思うなかれ。ベースのラムが、ちょっと違うのだ。甘いバニラのフレーバーが特徴の「キャプテン モルガン」を使っている。親しみやすく、“いつもの”との違いも分かりやすい。ちなみにラムコークをキューバリバーと言ったりもするが、“キューバの川”ではなく“キューバの自由”(キューバ・リブレ)という意味。 そのほか、バニラと香草のリキュール「ガリアーノ」とライムを使ったガリアーノトニック、苦みのアクセントが利いた「スーズ」をグレープフルーツとトニックウォーターで割ったスーズスプモーニ、さらにグレープフルーツのリキュール「ラズール」にグレープフルーツ&トニックウォーターを組み合わせたオリジナルカクテルなど、飲みやすく、それでいてバーらしい一杯をセレクトしていただいた。 |
もうちょっとパンチの効いたカクテルを、という人には、ゴディバリキュール/ブランデー/生クリームを使ったコディバアレキサンダーはいかがだろう? アルコールは強いが、チョコレートの甘みによってマイルドな口あたりになっている。バレンタインにもってこいのカクテルだ。 |
今回紹介したものも含め、カクテルのほとんどは800円前後(ゴディバアレキサンダーは900円)で楽しめる。自分の好みの銘柄をベースに、カクテルを作ってもらったり、お酒の強さを変えてもらったり――そんなカスタマイズができるのがバーの強み。ワガママ上手になることも、バーをより楽しむためのテクニックと言える。メニューに載っていない、あなたの一杯を見つけてみよう。 |
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取材・文/+D Style
撮影/永山昌克
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