カメラ修理にひと工夫(1)-コデラ的-Slow-Life-

» 2008年12月22日 11時10分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 いずれ修理工具の話を書こうと思っていたのだが、次々と面白いジャンクカメラに遭遇してしまい、なかなかチャンスがなかった。この連載も前回で無事50回目を迎えたので、ここいらで一息入れて修理道具の話をしよう。

 メンテナンスという意味でのカメラ用品は、大手カメラ量販店に行けば多く取り扱っている。だが分解・修理工具も、最近は取り扱うところが増えてきているのはありがたいことである。ただ専用の工具となると、それほど数が出るわけでもないので非常に高い。筆者も最初はそういうものを喜んで買ってたのだが、実はその辺に売っているもので代用できるものも多い。

 まず何はなくともドライバーセットである。これは精密機器用の、先が小さいセットが必要になるが、これは凝り出すときりがない。個人的な経験からすると、カメラで使われているネジの大半はマイナスで、国産で比較的新しいものになるとプラスになるようだ。

 高級なドライバは、ネジ溝をなめないように先端が焼き入れしてあるが、それよりも柄の太いもののほうが回しやすい。というのも、古いカメラではネジが固着しているものも多いので、かなり力がいるのである。またどういうわけか、ネジ頭の溝が細いものが多い。


photo 百戦錬磨の精密ドライバー。堅いネジを回すと端が欠けたりする

 このネジ溝に合わせると、本来よりも細いドライバを使うことになるわけだが、そうするとネジ溝をなめやすい。そこでマイナスドライバの先端が薄くなるよう、事前にヤスリで削っておくといい。こうすることでネジ溝よりも一段先の大きなドライバが使えるので、楽に回せる。

 もちろん削っただけ強度的には弱くなるので、先端が曲がったり欠けたりすることもある。しかし、ドライバとカメラネジとどっちが換えが効くかと言えばドライバのほうなので、安いドライバーを買って使いつぶした方が、メリットがある。

難関のカニ目回し


photo こういうのがカニ目ネジ

 カメラ特有のネジとしては、「カニ目ネジ」がある。普通の人にはなんのことやら分からないと思うが、これはネジの頭に2つの穴が空いているだけというもので、ネジの頭が大きく平たいものに使用されている。そのほか、レンズを固定するためのリング状のネジも、二カ所に切り込みが付いた一種のカニ目ネジである。


photo 各種カニ目回し。右端のタイプが一番使い出がある

 ゆるく止まっているものはピンセットを突っ込んでも回せるが、固着したようなものを傷を付けないように回したいのなら、専用の工具が必要だ。カニ目回しはいろいろなタイプが市販されているが、一番使い出があったのが、ジャンク用コンパスと呼ばれる、ピンセット型の頑丈なタイプである。4000円ぐらいするので結構高いが、これまで30台以上のカメラを直してきて、過去これで回せなかったものはない。

 そのほかV字型、井の字型のものも買ったが、役に立たなかった。V字型は先端が太かったり短かったりして、ほとんど合致するネジがない。井の字型は強い力をかけると形が歪んでしまった。こういうものは、やはりシンプルな形のものが一番役に立つ。また安いラジオペンチの先をとがらせて代用する人も多いようだ。もしグラインダーや電動ドライバなどの電動研磨工具が使える人は、この方法が安上がりだろう。


photo クロスオープナー。これがないとできない修理もある

 一方なかなか代用ができないのが、X型のクロスオープナーと呼ばれるカニ目回しである。これはレンズの後玉をカメラ本体側から開けるような、狭い場所で使うものだ。これは小さければいいというわけではなく、狭い空間内でX字に開いて幅広なものを回せるというところにポイントがある。ただ、内側からレンズを外さなければならないようなケースに遭遇しなければ必要ないので、そういう羽目になった段階で買えばいいだろう。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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