-コデラ的-Slow-Life-:10年を隔てた2 in 1、ASAHI PENTAX SPの修理

「PENTAX SPF」のボディパーツを使って「PENTAX SP」の“再生”を開始。2台とも動かない露出計の修理が当面の課題だったが、分解して磨いてみると……。

 動かないPENTAX SPFと、動くけど汚いPENTAX SP。まずは軍艦部を開けるところからである。この2つのモデルには10年の違いがあるが、使用パーツの形状や製造法はほとんど同じである。今から約40年前の工業製品というのは、そんなペースで十分だったのだろう。

 ただやはり10年の歳月というのは残酷なもので、SPの方は各パーツに錆がひどい。これらは極力使える部品をSPFから取って、SPに移植していく。

photophoto SPFの巻き上げ部。錆もなく綺麗だ(左)SPの同部分。押さえの板バネが錆だらけ(右)

 SPのプリズムは、鏡面蒸着の剥がれにより、ファインダ内に黒い筋が見える。SPFのほうは見え方に問題はないが、双方とも固定しているモルトがボロボロに劣化・変色しているので、まずはそれを張り替える。幸いにしてフォーカススクリーンは綺麗だったので、そこまでの交換は必要なかった。

photophoto SPの内部(左)SPのプリズムには鏡面の腐食による筋が(右)

 当面の問題は、露出計が双方とも動かないことである。しかもSPとSPFは、露出計の設計が全然違うので、両者を比べてもあまり参考にならない。露出計の構造としてはSPの方がシンプルなので、これをそのまま修理する方向で考えることにした。


photo 酸化していた接点を磨く

 まず当たるべきは、電池ボックスの接点である。底部の電池ボックス内の接点はアルミのため腐食はないが、中を開けてみないことには分からない。底蓋を外すと、そこにはもう一つ接点があり、表面は相当に酸化していた。ドライバの先で酸化部分を削り取り、少なくとも電源側の導通は回復した。

露出計も磨けば直る


photo 円形の可変抵抗で構成されるシャッタースピードダイヤル

 しかし相変わらず露出計は動かない。テスターで当たってみたところ、針は振れるので、メーターそのものが死んでいるわけではないようだ。いろいろ調べていくと、どうもシャッタースピードダイヤルに行って帰ってくるラインで導通がない。ダイヤル周りが死んでいるようだ。

 そこでいったんSPFのシャッターダイヤル周りを分解して構造を確認したのち、SPのほうを分解した。両者を比較すると、この部分はパーツ自体ほとんど同じだが、可変抵抗の使い方が逆のようだ。


photo 上がSP、下がSPF。構造は10年経ってもほぼ同じ

 円形の黒い丸が抵抗となっており、ここを接点が滑ることで長さが変わり、抵抗値が変化する。テスターで当たってみたところ、この黒い抵抗板自身が反応を示さない。どうも表面が酸化するかなにかして、接点が当たらなくなっているようだ。

 サンドペーパーを使って磨くということも考えたが、肝心の抵抗部分まで削り取ってしまう可能性もあるので、まずはレンズクリーナー液を使って、綿棒で汚れを拭き取ってみることにした。黒々とした汚れが綿棒の先に付いたので、もしかして抵抗部分が溶け出しているのかと思ったが、そんなことはなく、無事抵抗値が復活していた。


photo 黒い円形の抵抗部分の汚れを洗浄

 PENTAX SPもSPFも、露出計が動かない機体が多く、ジャンク扱いになっているが、おそらくこの可変抵抗の汚れで接点不良を起こしているものも相当あると思われる。ここの分解洗浄はかなり効果的だろう。

 再組み立てをおこなってテストすると、無事露出計が反応するようになった。ただ、針の振れ方がプラスマイナス逆になっている。SPに使用されていた電池というのは、今は販売されていない水銀電池の「H-B」というタイプである。現状販売されているボタン電池でもサイズ的には合うものがあるが、H-Bはプラス極とマイナス極が、今のボタン電池と逆だったのである。


photo 黒とオレンジのリード線を逆にする

 世の中需要があれば供給があるわけで、この電極を逆にするための電池アダプタというものが存在する。ただ、1つ2900円もする。2000円のカメラに2900円の電池アダプタを導入するというのもいかがなものかと思ったので、メーターからの導線のプラスマイナスを逆に半田付けし直して、現在のボタン電池がそのまま使えるように改造した。

 正確には、現在のボタン電池の方が多少電圧が高いのだが、SPの露出計は電流計として動いているため、それほど問題はないだろう。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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