素朴さと爽快さを併せ持つ「Konica II B」の描写-コデラ的-Slow-Life-

» 2008年11月13日 09時40分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 Konica II Bはコンパクトなカメラではあるが、モロに金属の固まりなので、重さがものすごい。690グラムというから、今時のデジタル一眼のレンズまで一緒になった状態よりさらに重いのである。しかもこのクラスのカメラにはストラップホルダー部がないので、普通は革のケースに入れて持ち歩いたはずである。首から提げると相当に肩が凝ったことだろう。

 早速撮影してみよう。露出がマニュアルなので、露出計を併用しながら、ゆっくりゆっくり撮っていく。シャッターチャンスなどというものとは、無縁の世界である。

 シャッタースピードは大きなリングで、正面から見ても上から見ても、それぞれに数字が書いてある。それに対して絞りはレンズ下に付いた小さなレバーである。しかも絞りの数値は上にあるので、手探りでは操作しずらい。当時はどちらかといえば、絞りはある程度固定しておいて、シャッタースピードで露出を調整するのが普通だったのかもしれない。

 ファインダを覗くと、距離合わせの二重像は小さいが、見にくくはない。また視野の右下に、シャッターチャージ用のレバーが見える。シャッターチャージ済みだと倒れて視界から消えるので、もう撮影準備ができているかが分かるわけだ。


photo 開放ではやわらかなぼけ味

 フィルムを巻き上げ、シャッターをチャージしてファインダを覗き、距離を決める。チャッという乾いた音がして、シャッターが降りる。同時にチャージレバーがファインダ内にぴょこんと立ち上がってくるので、いかにも「完了!」という感じがする。

 実際に撮影してみると、距離計はかなり正確だ。思い切って開放で撮ってみたが、半世紀以上経過した今でもズレはまったくない。また深度表現もそこそこ可能で、さすがにこのサイズでもフルサイズのカメラである。

丁寧なHexarの描写


photo 爽快な空の青が気持ちいい

 Hexarの描写は非常に端正で、若干青みが強い。個性としては、オリンパスのOMレンズに近いように思う。レンズの径が小さいのでそれほど期待はしていなかったのだが、さすがに後々まで名レンズと言われるはずで、よく写る。

 10枚羽根を使った絞りの表現も丁寧で、開ければなめらか、絞ればきっちり隅々まで写る。惜しいのは、最短で3.3フィート、約1メートルしか寄れないことである。当時の役割としては、ほとんどが人物撮りだったと思われるので、50mmではそれほど寄れる必要はなかったのだろうが、この描画力でもう少しアップが撮ってみたかった。

photophoto もう少し寄りたいところだ(左)全体的に寒色な表現(右)

 寒色系なので、花などを撮るにはあまり向いていない。もしかしたらモノクロフィルムを突っ込んで、都会的なビル群などを撮るとおもしろいのかもしれない。このカメラが作られた当時にはまったく存在しなかった風景を撮るという行為に、そこはかとない浪漫を感じる。

photo 無機質な被写体のほうがおもしろい

 Hexarは後に、このレンズ名そのままのカメラとして昇華した。安っぽいボディのコンパクトカメラだが、AF付きでなかなか侮れない描写をするカメラだったようだ。ただあまり売れなかったのか、中古市場ではあまり見かけるカメラではない。これもそのうち、手に入れてみたい。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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