-コデラ的-Slow-Life-:半世紀前の恐るべき製造技術「Konica II B」

昭和世代には懐かしい小西六、コニカ、サクラカラー。数多くのバリエーションを産んだKonicaシリーズから「Konica II B」の完動品を入手。シャッター周りの見事な造形、軍艦部のエレガントな曲面の仕上がりは、とても50年以上前のものとは思えない。

 戦後の日本では、産業復興のかけ声とともに多くのカメラメーカーが出現した。今なお元気にデジカメ界をリードするメーカーもあるが、無くなったり撤退したメーカーも多い。まだ筆者が手に入れていないカメラでは、ペトリ、アルコ、コーワ、サモカ、ヤシカなどがある。まだまだ先は長い。

 実はコニカもその一つであった。最近ではソニーαマウントの元になったコニカ・ミノルタでその名前を久しぶりに聞いた人もあると思うが、筆者が子供の頃はコニカなどと言わず、小西六という名前の方が通りが良かった。名前の由来は、写真材料などを扱った「小西六兵衛店」であるという。

 今では信じられないかもしれないが、1960〜70年代頃は、フィルムと言えば小西六の「サクラカラー」がデフォルトであったものだ。放送業界に入ってからも、オープンリールのAMPEX6mmテープは「小西六アンペックス」という合弁会社が扱っていたので、小西六の名前は馴染み深いものがある。

 コニカに正式に社名変更されたのは1987年のことだそうだが、コニカの名前は、戦後まもなく登場した輸出用の「Konica Standard」から始まった。国内向けには48年に登場した「Konica I」が最初である。

 フィルムメーカーでもあったことから、カメラは高級機ではなく大衆機に注力した。ポップアップするフラッシュを内蔵した「ピッカリコニカ」や世界初AFを採用した「ジャスピンコニカ」などは、筆者も井上順を起用したコマーシャルをよく覚えている。昭和を代表する大衆機と言えるだろう。

数多くのバリエーションを産んだKonicaシリーズ

 戦後まもなくして、フィルムはライカ判、すなわち現在も使われる35mmフィルムが主流になるわけだが、コニカは50年代に精力的に35mmレンジファインダー機をリリースしている。コニカシリーズだけでも10年のうちに、Konica I、Konica I HN、Konica II、Konica II B、Konica II F、Konica II A、Konica II Bm、Konica III MFX、Konica III 2.4、Konica III A、Konica III A1.8、Konica III Mと、尋常じゃない数のバリエーションを生み出した。当時はこれ以外にも二眼のコニフレックス、蛇腹式のPearl、コニレットといったシリーズも抱えていたわけだから、いかに当時勢いのある会社だったかが分かる。

 そのあまりの大量なバリエーションのせいもあってか、中古市場では50年代のKonicaは、それほど高いものではない。ただ大衆機であったことから、綺麗なものは少ないように思う。

photophoto ピカピカの「Konica II B」

 筆者が入手した「Konica II B」は、55年製のHexar 50mm/F3.5が付いたモデルである。珍しくジャンクではなく、ピカピカの完動品だ。II Bにはほかに、50mm/F2.8のモデルもあるようだ。実は同じ値段でKonica Iもあったのだが、シャッター周りの見事な造形に惚れてII Bを買った。

photophoto このなめらかで複雑な金属加工(左)シャッターも自社製。ボディとは別のシリアルナンバーが見える(右)

 軍艦部全体はおそらく1枚の金属板から打ち出して作り上げたものだろうが、このエレガントな曲面の仕上がりは、とても50年以上前のものとは思えない。1955年ということは昭和30年、小説の舞台では、金田一耕助が「悪魔の手毬唄」に関わり合っていたあの時代でこの技術レベルというのは、恐るべきというほかない。

 レンズもシャッターもボディも、すべて自社製。その後カメラ業界では高機能化のため、それぞれが専業化していくわけだが、現代でも通用する非常に完成度の高いカメラだ。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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