距離が分からなくてもなんとかなる「Univex Mercury II」-コデラ的-Slow-Life-

» 2008年10月14日 09時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 距離も目測、露出計もなしという、文字通りフルマニュアルのUnivex Mercury II。露出は別途露出計があるからいいが、距離がいささか心許ない。このようなカメラで上手く撮影するコツは、できるだけ絞って被写界深度を稼ぐことである。そうすれば多少フォーカスの設定が外れていても、範囲内に写る。

 もっともハーフカメラであるから、設定を2パターン変えて撮って良い方を取っても、普通のカメラと同じコストパフォーマンスである。失敗を恐れずいろいろやれるのが、ハーフのいいところだ。ただし今どきのデジカメのように、パチパチ気軽に撮れるわけでもない。

 実は筆者は距離の目測が苦手で、過去目測のカメラではなかなか上手く撮れなかった。最初に触ったのがLOMOだったのだが、あれは距離の設定など適当でもだいたい写る。だがああいうトイカメラではない本気のカメラでは、結構距離がシビアなのである。

 そこで近距離だけでも間違いなく計れるように、工夫した。まず腕をまっすぐ伸ばした状態で、指先から目までの距離を測る。筆者の場合はだいたい80センチである。肘を曲げた状態で35センチ、手首から指先までは18センチ、とだいたいこれぐらいの数字を覚えておけば、組み合わせでいろいろ計れる。

 元々英米で使用されているフィートとは、足のサイズに由来する身体尺である。ただし裸足で測定したものではなく、靴の長さと考えるべきだ。実際に筆者の26.5センチのスニーカーの長さを測ったら約30センチだった。1フィート=30.48センチとだいたい合致する。ちなみに日本の1尺もこれに近く、30.3センチである。舞台などの経験がある人は、フィートのカメラでも目測が可能だろう。うらやましい限りである。

想像以上に描画力の高いレンズ

 フィルム1本撮影してみたが、これがびっくりするほど良く写る。当時カラーフィルムはあったにしても、前提はモノクロームだったはずだが、発色・コントラストともに、非常に現代風のかっちりした絵が撮れる。

photophoto 開放気味で撮ったが、距離が合っていればフォーカスは正確

 ファインダは小さな穴に過ぎないが、意外に見やすい。ただし近距離を撮る場合はパララックスを頭に入れておかないと、構図が左上にずれる。どれぐらいの距離でどれぐらいずれるかは、経験で覚えるしかなさそうだ。だがまあ、元々ファインダ内にフレーム枠などがあるわけではないので、あまりギリギリで攻めないというのが、当時としては普通だったのだろう。

photo パララックスを考えなかったので多少構図が左上にずれている

 室内では1/20秒で撮影してみたが、カメラ自体に重量があるせいかあまり手ブレもしないで撮れた。シャッターのストロークも短いので、手ブレが起こる要素が少ないのだろう。

photo こんな息抜きショットもハーフならではの楽しみ

 背面の露出換算表は、露出計と照らし合わせながら見ていたが、案外まともに機能するようである。ただ、天候は自分で判断しないといけないので、それを考えると2絞りぐらいは自分で案分しなければならない。最悪露出計がなくても失敗はしないだろうが、よりフィルムのラティチュードを活用しようと思ったら、やはり露出計には頼りたい。

photo 日陰だがパワフルな発色

 日陰でのカラーバランスのズレはいかんともしがたいが、すべてがクリアで問題なく写る現代のカメラにはない面白さがある。今回はテスト撮影だが、ちゃんと場所を設定してじっくり取り組んでみたいカメラだ。

小寺 信良

photo

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.