「崖の上のポニョ」+D Style 最新シネマ情報

» 2008年07月08日 00時00分 公開
[本山由樹子,ITmedia]
photo (C)2008 二馬力・GNDHDDT

 日本が世界に誇るアニメーション界の巨匠、宮崎駿監督。「ハウルの動く城」(2004年)から4年の時を経て、いよいよ宮崎監督の新作「崖の上のポニョ」が公開となる。結論から言えば、大、大、大傑作。鑑賞後、数日たって原稿を書いている今も“ポニョ・ショック”から抜け出せないほど、素晴らしい作品だった。

 さかなの女の子(金魚らしい)・ポニョの父親は元人間のフジモト。母親グランマンマーレは“海なる母”。父親が海の中で実験めいたことをやっていて、ポニョはそこから家出をする。途中、頭をジャムの瓶に突っ込んでしまい、困っていたところを、崖の上の一軒家に住む5歳の少年・宗介に助けてもらう。ポニョは宗介を好きになり、宗介もまた「ぼくが守ってあげるからね」と約束し、ポニョを好きになる。


photophoto (C)2008 二馬力・GNDHDDT

 ところが、ポニョはフジモトによって海に連れ戻されてしまう。ポニョはそんなことではめげない。宗介に会いたい、人間になりたいと願い、妹たち(声は矢野顕子。これがサイコーにハマっている)の力を借りて、父の魔法を盗み出し、再び宗介のいる人間界を目指す。

 「人魚姫」をモチーフにしているが、とにかく宮崎監督のイマジネーションが大爆発。今回はCGを使わず、全編が手描き。絵もデフォルメされていて、童話的なほのぼのした温もりある色彩だが、海中を悠々と行くデボン紀の古代生物などは不気味なほど描きこまれている。

 中でも宮崎監督がこだわり抜いたというのが、波や海、津波といった水の表現。荒れ狂う海は生き物として表現され、目までついている巨大な水魚として圧倒的な迫力で押し寄せてくる。こんな波の表現は見たことがない。

 ポニョは意外な変身を遂げるが、まあ、それは劇場でのお楽しみということで、ワガママな面も含め、クルクルと変わる表情、その行動すべてが愛らしい。

 「千と千尋の神隠し」(2001年)は、千尋がトンネルを越えると千の異世界が広がっていたが、この「ポニョ」では、いわば千尋の現実世界と千の異世界が同居している。現実の世界に魔法が溶け込み、魔法と人間が互いを尊重し、受け入れ合っている。絵空事が通じる現実、なんて素晴らしい発想。宮崎監督、67歳。かつて引退宣言をしていたが、まだまだ現役である。溢れ出るそのイマジネーションに、ただただ脱帽。

 ポニョ可愛いな、ハムのサンドイッチ美味しそうだったな……。嬉しくて、楽しくて、ちっとも悲しくないのに、なんだか泣けてくる。老若男女、すべての人に見てもらいたい。しつこいようですが、傑作です。子供の心を持って、ぜひ見に行ってください。宮崎駿アニメ、ついに登場。

崖の上のポニョ

監督・原作・脚本:宮崎駿/作画監督:近藤勝也/音楽:久石譲

声の出演:山口智子、長嶋一茂、天海祐希、所ジョージ

配給:東宝

7月19日より全国東宝系ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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