「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」+D Style 最新シネマ情報

» 2008年05月01日 00時23分 公開
[本山由樹子,ITmedia]
photo (C)2007 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」は、1997年にひっそりと政界を引退した、実在の下院議員チャーリー・ウィルソンの伝記映画だ。人々の記憶に残るような功績を上げなかったウィルソンだが、03年に出版した自伝により、あっと驚くような衝撃の事実が明らかになった。

 衝撃の事実とは、80年代、CIAが史上最大規模の隠密作戦を行い、旧ソ連によるアフガニスタン侵攻を食い止めたこと、そしてそれを陰で操っていたのがチャーリー・ウィルソンだった、ということだ。

 このフィクション本の映画化権を獲得したトム・ハンクスがチャーリーを演じ、ジュリア・ロバーツはチャーリーにアフガン救済を訴える資産家マダム、フィリップ・シーモア・ホフマンはチャーリーの右腕となる短気なCIA局員を演じている。監督は「卒業」「クローサー」のマイク・ニコルズ。

 豪華なキャスティングと概要だけを見ると、何やらお堅い政治映画と思われるかもしれないが、実際はゴールデングローブ賞の“ミュージカル・コメディ部門”でノミネートされてしまうようなコメディなのだ。

 チャーリーは、“チャーリーズ・エンジェル”と呼ばれる美人秘書軍団を従え、ジュリア・ロバーツに誘われるがままにベッドへ直行するなど、モラルのかけらもない。政治思想もあやふやだ。取り柄といえば正直であることと、人脈が豊富なこと。そんなお気楽な議員が、いかにしてアフガニスタンへの資金援助を増額させ、最新武器を調達できたのか? その姿がブラック・ユーモアたっぷりに描かれているが、あまりに現実離れしているので、これが実話だと思うと、恐ろしくなるはずだ。

 武力には武力で対応するアメリカ。それは今も昔も変わらず、結局、戦争は終わっていない。アフガニスタンを救ったチャーリーは、最後の最後で失態を犯す。武器や資金は与えたが、本当の意味での復興という手助けは出来なかったのだ。アフガニスタンは戦争の傷あとを抱えたまま、21世紀へと突入してしまう。くどいようだが、本作のジャンルはコメディ。だが、その後のアフガニスタンの情勢を考えると、クスリとも笑うに笑えない作品になっている。

photophoto (C)2007 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

監督・マーク・ニコルズ/原作:ジョージ・クライル/脚本:アーロン・ソーキン

出演:トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ、フィリップ・シーモア・ホフマン

配給:東宝東和

2008年5月17日より日劇1ほか全国ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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