映像化不可能といわれたトールキンの「指環物語」を「ロード・オブ・ザ・リング」としてシリーズ化し、大成功を収めたニューライン・シネマ。そんな彼らが新たに手掛けたのがフィリップ・プルマン原作の「ライラの冒険 黄金の羅針盤」だ。監督は「アバウト・ア・ボーイ」のクリス・ワイツ。
人間が、ダイモンと呼ばれる動物の精霊と寄り添って生きている世界。好奇心旺盛な12歳の少女ライラ(ダコタ・ブルー・リチャーズ)は、探検家の叔父アスリエル卿(ダニエル・クレイグ)が北の果てで謎のダストを目撃したと知り、一緒に連れて行ってくれと懇願するが、当然断られてしまう。
そんな中、コールター夫人(ニコール・キッドマン)がライラを引き取ると言い出す。圧倒的な美しさと権力を持つ彼女に憧れを抱くライラは、一緒にロンドンに行くことを決意。すると、学寮長はライラに黄金の羅針盤を託す。それは世界で6つだけ作られたという真理計で、36の絵を指す3つの針が真実を導いてくれるというのだ。
ライラが隠し持つ羅針盤に執着を持つコールター夫人はやがて本心を見せ始める。そんな中、子供の誘拐事件が頻発し、ライラの親友も犠牲に。ライラはコールター夫人から逃れ、そして親友を助けるため、北の果てへと向かう。
喋るよろいグマ族やジプシャン族といった様々な種族が共存し、動物の精霊が存在するなど、子ども心をくすぐる設定。にもかかわらず、オープニングから聞きなれないカタカナが乱れ飛ぶ。原作未読の一見さんお断りムービーかと思ったら、ストーリーに馴染むまでにはそれほど時間はかからず、後は映像に圧倒されるのみ。ダイモン、特にライラのダイモンは、彼女が子供ゆえに変幻自在で、ネコ、鳥、オコジョなどに変化するが、CG合成は違和感なく、お見事。
だが、気になる点もある。それはライラが誰からも何も教わらず、いきなり黄金の羅針盤を使いこなせること。“選ばれし子供”と言われればそれまでだが、「スター・ウォーズ」で言うならば、ルークがヨーダの師事を仰がないまま、いきなりフォースを使いこなせるようなもんだ。しかも、様々な種族があっさりとライラの味方になる点も疑問が残る。もっと自身との葛藤があったり、運命に翻弄されてこそ、ファンタジーの主人公にふさわしいのでは!?
とはいえ、子役ダコタ嬢の大人顔負けの名演に、相変わらずゴージャスなニコール・キッドマン、「ロード・オブ・ザ・リング」に負けずとも劣らないCGの凄さなど、おススメポイントも多い。ファンタジー映画の醍醐味は続編に期待!
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監督:クリス・ワイツ
出演:ニコール・キッドマン、サム・エリオット、エヴァ・グリーン、ダコタ・ブルー・リチャーズ、ダニエル・クレイグ
3月1日 丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー
本山由樹子
ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。
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