150分超えの映画が目立つようになってきたが、2008年もこの傾向は続くようだ。ブラッド・ピット主演の「ジェシー・ジェームズの暗殺」(1月公開)が160分、ヴェネツィア映画祭グランプリに輝いたアン・リー監督の最新作「ラスト、コーション」(1月公開)が158分、そしてこの「アメリカン・ギャングスター」も157分のボリューム。だが、時間の長さをまったく感じさせない秀作であった。
ときは1960年代後半〜70年代にかけてのニューヨーク、ハーレム地区。フランク・ルーカスは黒人マフィアのボス、バンピー・ジョンソンの運転手として15年以上も仕えていた。暗黒街における世渡りのすべてを彼から学び、父親のように慕っていたが、ある日、バンピーが心臓発作で急死してしまう。ライバルたちがその後釜を虎視眈々と狙う中、フランクは自ら東南アジアのジャングルの奥地へ赴き、直接ヘロインの製造元と交渉、大量のヘロインを軍用機でアメリカへ密輸するというアイデアを実現する。これが見事に的中し、ハーレムではブルー・マジックと呼ばれる純度の高い安価のヘロインが出回る。こうしてフランクはハーレムの大物にのし上がっていく。細心の彼は警察に尻尾をつかませなかった。
一方、ニュージャージー州の刑事リッチー・ロバーツは女グセが悪く、妻とは離婚訴訟の真っただ中。だが、仕事に対しては真面目で、その正義感の強さが仇となり、腐敗が蔓延する警察内では白い眼で見られていた。そんな中、新たに設定される麻薬捜査班のリーダーに任命され、ヘロインの供給ルートを粘り強く調査するが…。
伝説の麻薬王フランクに扮するのはデンゼル・ワシントン。アカデミー賞を獲得した「トレーニング デイ」同様の汚れ役である。リッチー役は、リドリー・スコット監督とは「グラディエーター」「プロヴァンスの贈りもの」に続き3度目の顔合わせとなるラッセル・クロウ。不器用な男を地でいくようにナチュラルに演じている。
ドキュメンタリー調の映像の中に2人の生き様がじっくりと描かれるが、追う者と追われる者の2人が初対面するのはクライマックス近くになってから。焦らしに焦らされたからというわけではないが、この初対面シーンは鳥肌が立つほどに印象深く、映画史に残る名シーンとなった。
映画のスパイスとなっているのが、フランクに賄賂を要求したり、リッチーの捜査妨害をしたりと、悪徳の限りを尽くす刑事トルーポ。ジョシュ・ブローリン演じる彼の存在が、作品に深みを与えている。
最近の、いわゆるハリウッド大作の中ではバツグンの面白さ。男臭さ満載なのでデートムービーとしては不向きかもしれないが、これほどクオリティの高い作品には滅多にお目にかかれない。マフィア映画が大好物な人はもちろん、ハードボイルドな男の生き様にシビれたい人も必見!
(C)2007 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
監督・製作:リドリー・スコット/脚本・製作総指揮:スティーヴン・ザイリアン
出演:デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ、キウェテル・イジョフォー、キューバ・グッディングJr.、ジョシュ・ブローリン
08年正月第2弾、日劇1ほか全国ロードショー
本山由樹子
ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。
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