「パンズ・ラビリンス」+D Style 最新シネマ情報

» 2007年08月24日 12時00分 公開
[本山由樹子,ITmedia]
photo (c)2006 ESTUDIOS PICASSO,TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ

 今年のアカデミー賞はメキシコ人監督の活躍が目立った。「バベル」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、「トゥモロー・ワールド」のアルフォンソ・キュアロン、そして「パンズ・ラビリンス」を手掛けたギレルモ・デル・トロ。

 デル・トロ監督は「ヘルボーイ」などハリウッド作品以前からカルト映画ファンの間で注目を浴びていたが、母国スペインに戻って撮った本作で見事アカデミー賞の撮影賞、美術賞、メイクアップ賞の3部門を獲得した。

 1944年のスペイン内戦時代。レジスタンス活動で父親を失った12歳の少女オフェリアは、将校と再婚した妊娠中の母親に連れられ、山奥の駐屯地に引っ越してくる。生まれてくる我が子のことしか眼中にない義父から徹底的に冷たくされ、居場所のなくなったオフェリアは庭に迷路を発見する。その迷路は地下へと続き、そこでパンと名乗る迷宮の守護神と出会う。パンはオフェリアを見て、長年捜し続けていた魔法の国のプリンセスの生まれ変わりに違いないと告げるが、それを証明するには、3つの試練を克服しなければならなかった……。

 サディストな義父の存在、病気で寝込む母親、活発化するレジスタンス活動など、つらい現実世界から逃避するように、オフェリアは妄想を膨らませ、ファンタジーの世界へとのめりこんでいく。

 少女が異様な世界で試練を乗り越え、成長していくファンタジーといえば「不思議の国のアリス」が定番中の定番だが、ジャパニメーションオタクとしても知られるデル・トロ監督はもちろん宮崎アニメもお好きらしいので、これはダークでヘビーな「千と千尋の神隠し」ともいえる。

 オフェリアに容赦なく襲い掛かるグロテスクな怪物たち。映画はうなされそうなほどの悪意に満ちているものの、少女の孤独や現実の厳しさもしっかりと描き、ラストはものすごく残酷で切ない気分にさせられる。

 「ハリー・ポッター」や「ナルニア国物語」はちょっと……というファンタジー嫌いな人にこそ見てほしい、この秋イチ押しの大人のためのファンタジーだ。

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(c)2006 ESTUDIOS PICASSO,TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ

パンズ・ラビリンス

監督・脚本・プロデューサー:ギルレモ・デル・トロ/撮影:ギルレモ・ナバロ

出演:セルジ・ロペス、マリベル・ベルドゥ、イバナ・バケロ、ダグ・ジョーンズ

配給:CKエンタテインメント

2007年10月6日より恵比寿ガーデンシネマほか全国ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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