「ゾディアック」+D Style 最新シネマ情報

» 2007年06月05日 10時36分 公開
[本山由樹子,ITmedia]
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 1969年のカリフォルニア。ひと気のない空き地で、車中の男女が何者かに銃撃される。それから1カ月後、“ゾディアック”と名乗る男から、手紙が新聞社に送られてくる。そこには犯人しか知りえない内容と、謎の暗号文、そして暗号文を掲載しなければ大量殺人を始めるという脅迫メッセージが添えられていた……。

 「パニック・ルーム」から5年の沈黙を破ってデビッド・フィンチャー監督が発表したのは、1960〜70年代のアメリカで実際に起きた連続殺人事件をモチーフにしたサスペンス・スリラー。このゾディアック事件、いまだ未解決のままだ。

 最初はマスコミも国民も誰もが、ゾディアック事件にのめり込んだ。だが、ブームというものは去るもので、あと一歩のところで犯人を逮捕できず、一向に解決しない事件は風化していく。ところが、手紙を送りつけられた新聞社の花形記者ポール・エイブリー(ロバート・ダウニーJr.)、暗号解読にとりつかれた風刺漫画家ロバート・グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)、担当刑事のデイブ・トッシ(マーク・ラファロ)とウィリアム・アームストロング(アンソニー・エドワーズ)はゾディアックを追い続ける。彼らは真実を知りたいという欲求から、ある者は家庭を顧みなくなり、ある者はクスリに溺れ、築いてきたキャリア、生活を犠牲にしていく。深みにハマり、もがき苦しむ男たちの目には狂気が、その執着ぶりには何とも言えない哀れみが漂っている。

 いずれのキャストも好演。特にロバート・ダウニー・Jrが相変わらず何を考えているかわからない、爬虫類的な不気味さで目を引く。

 映画は157分という長丁場の上、淡々と進むので、犯人探しや暗号解読の面白さを求めると少々肩透かしを食らうが、破滅していく男たちのドラマと最初から割り切って鑑賞すれば、見応え十分。ちなみに「ダーティハリー」に登場する殺人鬼さそりは、このゾディアックがモデルになっている。それにしても、やっぱり真犯人が気になりますよね……。

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(c)2007 Warner Bros. Ent. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ゾディアック

監督:デビッド・フィンチャー

原作:ロバート・グレイスミス

脚本・製作:ジェイムズ・バンダービルト

出演:ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、アンソニー・エドワーズ、ロバート・ダウニーJr.、ブライアン・コックス

配給:ワーナー・ブラザース

2007年6月16日より丸の内プラゼールほかにて全国ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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