主人公は僕だった+D Style 最新シネマ情報

» 2007年05月07日 13時18分 公開
[本山由樹子,ITmedia]
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 ロビン・ウィリアムズにジム・キャリー、アダム・サンドラーなど、売れっ子コメディアンがシリアスな役に挑戦し、ステップアップしたがるのは、もはやハリウッドではおなじみのようだ。そんな例がまたひとり。長年「サタデー・ナイト・ライブ」のレギュラーを務め、最近では「奥さまは魔女」「プロデューサーズ」に出演、最新作「Blades of Glory(原題)」も全米興収No.1に輝くウィル・フェレルである。監督が「チョコレート」「ネバーランド」のマーク・フォースターなので心配はしていなかったが、これが予想を上回る面白さだった。

 主人公は地味で神経質な30代独身の国税局員ハロルド。毎日同じ回数だけ歯を磨き、同じ時刻のバスで通勤、同じ時間にベッドにつくような彼は、人付き合いを避け、質素に暮らしていた。ある日、自分の行動を正確に言い当てる何者かの声を耳にする。自分の頭の中に響くその声の正体は何なのか?頭がおかしくなってしまったのか?その声に異様に反応するハロルドは、当然のように周囲からは変質者扱いされる。やがて、自分が、ある女流作家が執筆中の小説の主人公とまったく同じ運命をたどっていることに気づく。それも、彼女は悲劇作家だったのだ!

 小説と自分の人生が同時進行するという、オリジナリティあふれる脚本の勝利。気付けばハロルドの笑いあり、涙ありの葛藤に共感し、パットしなかった彼が魅力的に見えてくるはず。お世辞にもハンサムとはいえない大男のウィル・フェレルが演じたこともリアリティを増している。フェレルはこれでゴールデングローブ賞にノミネートされた。脇を固めるエマ・トンプソン、ダスティン・ホフマンもいい。

 ハッキリ言って、日本でのフェレルの認知度は低いし、ウケも悪い(ファンの方、ごめんなさい)。アクションやらサスペンスやらの派手さもなく、地味といえば地味だが、まずは先入観なしに見てほしい。人は、ちょっとしたキッカケで自分を変えられる、やり直せる。現実世界では、そのキッカケになかなか出合えないのだけど……。とにもかくにも見終わった後は、何とも言えない心地よさと幸福感に包まれる、拾い物の1本!

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主人公は僕だった

監督・マーク・フォースター/脚本:ザック・ヘルム

出演:ウィル・フェレル、エマ・トンプソン、ダスティン・ホフマン

配給:ソニー・ピクチャーズ

2007年5月19日より日比谷みゆき座ほか全国東宝洋画系にてロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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