+D Style 本格焼酎ぐびなび:第14回 「前割り焼酎」が止まらない!

焼酎のお湯割りの美味しさには何度も触れているが、さらに美味しく飲める方法がある。あらかじめ、焼酎を水で割っておいて、それを数日寝かせたうえで、飲むのである。

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 以前の連載第8回などで焼酎のお湯割りの美味しさには何度も触れているが、さらに美味しく飲める方法がある。あらかじめ焼酎を水で割っておいて、それを数日寝かせたうえで、飲むのである。鹿児島ではよく、黒千代香(くろぢょか)などに入れて、燗をして飲む飲み方があったが、それも一緒である。あらかじめ割っておいたほうが、より焼酎が水となじみ、自然でまろやかな味わいになるという。

 とはいえ、あらかじめ水で割って寝かせておくのはちょっと手間がかかる。そこで今回は、東京で割り水の焼酎を何種類も用意しているお店を今回は紹介しよう。赤坂にある「まるしげ 夢葉家」である。相模湾などでとれた新鮮な魚介や、いかにも酒飲みが好きそうなつまみの数々をほおばりながら、多くの種類の焼酎と日本酒を楽しめる。赤坂界隈でもリーズナブルな店のひとつで、連日酒飲みの客で大盛況である。

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 この店、いいところのひとつが「前割り焼酎」である。前述のように、あらかじめ一定の割合で割っておいておいた焼酎を、冷と燗と両方の温度で提供している。ラインアップも豊富で、この日は霧島の萬膳酒造「萬膳」「萬膳 庵」から飲んでみた。−−

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 実は以前、取材で萬膳酒造に訪れたことがある。「萬膳」はラベルに「山小舎の蔵」と書かれているのだが、その名の通り、霧島の深い山中にある。車がやっと1台通れるくらいの細い山道を行った先にある、木造の蔵であり、とても印象に残っている。また、蒸留器は木桶蒸留器で、蔵元である萬膳さんのこだわりが随所に見られる蔵だ。そんな萬膳酒造を思い出しながら、「萬膳」「萬膳 庵」を両方とも冷でいただいた。どちらも水でおよそ半分の度数まで割られているというのに、芋焼酎ならではのパンチが失われず、非常に伸びやかである。「萬膳 庵」のほうは、温度管理などがより困難で、仕込むのが難しいとされている黄麹を使用しているのだが、水で割っても、独特の深い味わいは変わらないどころか、よく味が分かるようになっているようにも感じる。


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 さらに、同じく霧島山系の水で仕込まれた姶良郡の「佐藤 白」(鹿児島・佐藤酒造)を、今度はお燗でいただいた。やはり美味い。非常に柔らかみがある味なのに、香りがどんどん広がっていく。元々、まるしげではこの「佐藤」を仕込んでいる水と同じような水をこの「前割り焼酎」に使用しているという。


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 この後も、鹿児島弁で不細工な人という意味を持つ「不二才」(鹿児島・佐多宗二商店)を飲んだ。こちらはその名の通り、無骨で雄大な味が特徴だ。「さつま寿』(鹿児島・尾込商店)も芋の香りがいっぱいで、前割りすることにより、その良さが引き出されているように感じた。

 しかし、前割りだと飲みやすさも手伝って、ついつい酒が進んでしまう。この店に来ると、いつも筆者は酔っ払ってしまうことが多いのだが、今回もその例に漏れず、たっぷり飲んですっかり気持ちよくなってしまった……。

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 今回は芋焼酎を中心に紹介したが、香ばしい香りが広がり、長い余韻が楽しめる麦焼酎「泰明」(藤居醸造)などもオススメだ。そのほかにも、芋焼酎では鹿屋の蔵元ですっきりとした味わいの「海」(鹿児島・大海酒造)、甑島のインパクトのある芋焼酎「百合」(鹿児島・塩田酒造)、焼酎界の革命児、西陽一郎さんの醸す「吉兆宝山」(鹿児島・西酒造)。黒糖焼酎では喜界島の「壱乃醸 朝日」(鹿児島・朝日酒造)、奄美大島の「龍宮」(鹿児島・富田酒造場)。泡盛では、泡盛の中でもとびきりまろやかに感じる「カリー春雨」(沖縄・宮里酒造所)などが「前割り」で楽しめる。この「止まらない感じ」を皆さんも存分に堪能してはいかがであろうか。

赤坂 まるしげ 夢葉家

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【住  所】東京都港区赤坂2-14-8 山口ビル2F

【電  話】 03-3224-1810

【営業時間】 17:00〜23:00(月〜木)

       17:00〜27:00(金・祝前)

19:00〜23:00(土) 

【定休日】 無日・祝



著者紹介

橋本 裕之(ハシモト ヒロユキ)

有限会社デジほん社長 SSI認定焼酎アドバイザー。

株式会社ダイヤモンド社で編集者として『旨い!本格焼酎』(著・山同敦子)の企画、編集などに携わる。また、モバイルサイト情報誌『iして! ケータイサイトの歩き方』の編集統括を務めた以降はモバイル業界に関わるようになり、株式会社ドワンゴを経て、2005年6月に独立し有限会社デジほんを設立。デジタル、アナログを問わず、コンテンツを広くプロデュース、運用している。最近ではスケート界の裏を深くえぐった『愛するスケートに何が起こったのか?』(著・渡部絵美)を手がけている。


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