「孤独」に種類があるとするなら、誰からも必要とされないということは、選び取ることができない究極の孤独かもしれない。
母親に捨てられ、叔父の許で暮らす17歳の少女みすず。
彼女は新宿の繁華街にあるジャズ喫茶Bで出会った“仲間”という初めての感覚を味わった。
メンバーの中でも一人雰囲気の違う男・岸にみすずは惹かれていく。
ある日、「みすず、お前が必要なんだ」という一言で、三億円事件の実行を誘った。好きな人の役に立ちたい、その一心でみすずはこの計画の実行にのめりこんでいく。
1968年に実際に起きた三億円事件の実行犯が実は女性、しかも女子高生という設定のみを聞くと、奇想天外な夢物語を想像するかもしれない。
しかし、この作品は「彼女が本当に犯人なのかもしれない」と思わせるだけの力がある。
ただ、3億円を奪うことはあくまでも「手段」でしかない。
この物語の全てを包むのは、誰もが孤独を感じていて、誰かとの関係性を持ちたいという小さな欲望なのだ。
必要とされる喜び、役に立ちたいという望みが少女を犯行へとひた走らせる。彼女が長い孤独のトンネルから抜け出すためにこの事件と出会ったとすれば、少女はその後どうなったのだろう。
彼女だけは、光の方へ向かって歩み続けていて欲しいと願わずにはいられなかった。
2006年/日本映画/114分
出演:宮崎あおい、小出恵介、宮崎将、小嶺麗奈、柄本佑
監督:塙 幸成
6月10日(土)シネマGAGA!他全国ロードショー
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