急激に増える一体型カード。FeliCaクレジットは「最初の1回」の促進を 神尾寿の時事日想

» 2007年03月23日 17時56分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 3月16日、トヨタファイナンスが同社の発行するクレジットカード「TS3 CARD(ティーエスキュービック)」の発行枚数が600万人を超え、このうち100万人がQUICPayの有効会員になったと発表した(3月20日の記事参照)。トヨタファイナンスは昨年からQUICPayなどFeliCaクレジット分野に注力。早い段階からFeliCa機能をクレジットカード本体に取り込んだ“一体型カード”がこの分野の普及に重要と判断し、新規・更新ともに一体型カードに切り替える施策をとった。それが奏功し、QUICPay陣営でいち早く会員数100万を突破。FeliCaクレジット全体をみても、ドコモに次ぐ会員を保有することになった。FeliCaクレジットの潜在ユーザーを増やすという点でみれば、一体型カードを発行するという手法は、おサイフケータイに対応アプリをプリインストールする(2006年9月の記事参照)以上に効果があるといえるだろう。

 しかしその一方で、一体型カードの会員はそのままでは実際にFeliCaクレジットを使う本当の意味での「稼働会員」ではないという課題も残る。機能としてQUICPayなどFeliCaクレジットが使えるが、それをユーザーが認識し、使おうと考えなければ、FeliCaクレジットをカードに載せただけで死蔵されてしまうからだ。このあたりが、利用意識が高い状態で発行されるSuica/PASMOやPiTaPaなど交通系のFeliCa決済カードと大きく違うところだ。

急激に増える潜在ユーザー。利用の機会と動機付けが必要

 トヨタファイナンスを筆頭にFeliCaクレジット分野で一体型カードが広がることにより、今後、FeliCa決済の潜在ユーザーの規模自体は急速に膨らんでいく。となると、今まで以上に「普通のクレジットカード利用者」にFeliCaクレジットを使ってもらう場所と動機を作ることが重要になる。

 その中で、筆者が以前から注目しているのが自動販売機を使った“きっかけ作り”である。自動販売機は無人なだけに、初めてFeliCa決済を使うユーザーでも気負わず、しかもキャッシュレスの利便性を強く感じられるものだ。

 すでにFeliCa決済に対応した自動販売機は、駅ナカでは急速に広がっている。首都圏ならばSuica/PASMO電子マネー対応機やEdy対応機、関西ではPiTaPa/iD対応の自販機を多く見かける。QUICPay対応の自販機も、名古屋駅付近で見かけられるようになった。

PiTaPa対応自動販売機。右側はPiTaPaとシーモ(後述)の両方が使えるモデル
JR東日本の駅構内に多く設置されているSuica対応自動販売機
おサイフケータイに対応した自動販売機のはしりともいえるのが日本コカ・コーラの「シーモ」。最新型ではiDとの共用になっている

 今後は、自販機の利用が多い施設や場所にFeliCaクレジット対応機を増やし、さらにそこで利用促進のキャンペーンが行われると効果的だろう。例えば、FeliCaクレジット利用時の割引やポイントアップ、キャッシュバックなどわかりやすい形で利用促進キャンペーンを行ってほしい。

 FeliCa決済は「最初の一回」で便利さを感じてもらえば、潜在ユーザーをアクティブユーザーに変えられる。一体型カードなどで潜在ユーザー層が急激に増えている今だからこそ、機能を死蔵させないための「利用促進」に力を入れてほしいと思う。

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