誠

プリンタ用表示
ニュース

2029年のモバイルコミュニケーションとは──SH-Mobileアイデアコンペ最終発表

携帯電話の将来的な利用者像やアプリケーションのトレンド予測を行っているSH-Mobileラボは、2006年6月から「将来のモバイルコミュニケーション」をテーマにアイデアコンペを行っていたが、その最終審査会が2007年2月24日に行われた。
2007年02月27日 23時32分 更新

 携帯電話向けアプリケーションプロセッサとして知られる、ルネサステクノロジの「SH-Mobile」。そのSH-Mobileを核としたソリューションを創出するための会員組織「SH-Mobile コンソーシアム」の外部団体として、2004年に組織された研究組織がSH-Mobileラボだ。座長は、電気通信大学の中嶋信生教授が務めている。

 SH-Mobileラボは、2006年より「将来のモバイルコミュニケーション」をテーマに学生対象のアイデアコンペを行ってきた。2006年6月〜8月末の応募期間には、国内外から20を超える応募があり、9月の一次審査で選出された4作品は、10月からのワークセッションと二次制作を経て、2007年2月24日に最終審査会が行われ、各賞が決定した。

 最終審査会の課題は「2029年モバイルコミュニケーションのかたち」。携帯電話の誕生から50年を経た、2029年のモバイルコミュニケーションの未来像について考えていくというものだ。

 この最終審査会の審査員は、SH-Mobileラボ座長の中嶋教授のほか、SH-Mobileラボコアメンバーの渡辺保史氏(情報デザイナー)、田中浩也氏(慶応義塾大学環境情報学部専任講師)、高橋一郎氏(デザイナー・ファイプランニングアンドデザイニング主宰)、前田邦宏氏(株式会社関心空間代表取締役)が務めた。

PhotoPhotoPhoto 左の写真が審査を担当したSH-Mobileラボ座長の中嶋信生教授とSH-Mobileラボの渡辺保史氏、中央の写真はSH-Mobileラボの田中浩也氏、ゲスト審査員のルネサス川崎郁也氏、そして右の写真がSH-Mobileラボ高橋一郎氏と前田邦宏氏

 また、ゲスト審査員として、NTTサイバーソリューション研究所の小川克彦氏、株式会社ユーディット代表取締役社長の関根千佳氏、ジャーナリストのエティエンヌ・バラール氏、そしてルネサステクノロジの川崎郁也氏が加わった。

Photo

ゲスト審査員のNTTサイバーソリューション研究所 小川克彦氏、株式会社ユーディット代表取締役社長 関根千佳氏、ジャーナリスト エティエンヌ・バラール氏

 発表者は、電気通信大学大学院 人間コミュニケーション学専攻の松尾翔氏、千葉大学大学院 自然科学研究科 建築専攻の桾沢和典氏、神戸大学大学院 自然科学研究科 電子科学専攻の山本哲也氏、東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻の福島慶介氏の4名で、審査会では4候補によるプレゼンテーションが行われた。

Photo

左から東京大学大学院 福島慶介氏、神戸大学大学院 山本哲也氏、電気通信大学大学院 松尾翔氏、千葉大学大学院 桾沢和典氏

 最初に発表したのは、千葉大学の桾沢氏。テーマは「Information-Landscape わたしたちの街」。自分の周りの場所やモノに、仮想のモノやルールを割り付けて、情報の送受信の窓口にしようというものだ。

 たとえば、浜辺にいる学生と公園にいる会社員が「情報の送受信の窓口」を通して、テニスを楽しんだり、場所にメッセージを付け加えてランドスケープを形成していくといったことが可能になるアイデアだという。

 続いてプレゼンテーションを行ったのは、電通大の松尾氏だ。テーマは「Remind of days 〜Mobile Interface using Dialog」。自分と同じ経験を蓄積した人工知能が、他人の同じような人工知能とコミュニケーションをとることにより、人工知能を介したユーザー同士の経験の共有が実現するといったアイデアだ。

 3番手は、神戸大の山本氏。「conversation nation 2029:proximate netoworking」というテーマで、コンタクトレンズやブレスレットといった、現存する物を使ったアイデアである。

 山本氏は「個人のネットワークが小さくまとまりすぎている」とし、ネットワークを広げるために必要なコミュニケーションを気軽にとれるツールとして、「近距離無線機能付きコンタクトレンズ型ディスプレイ」と、同じ趣味の人や探しているスキルなどを持つ人が近くにいることを知らせるブレスレッドを提案した。

 コンタクトレンズ型ディスプレイは、視線を人に向けると人の周りの空間にプロフィールが表示される。一方、ブレスレットは、趣味や興味の近い人や、探している人が近くにいると、温かくなって知らせてくれる。触覚を使うことで、自分しかわからない仕組みを実現する。これによって、リアル世界のSNSのような感覚で、歩いているだけで、いつも出会いがあるというわけだ。

 最後にプレゼンテーションを行ったのは、東大・福島氏。テーマは「流動産/SNS.plugin」、「日本的サードプレイスの実空間化」というサブタイトルが付けられていた。

 福島氏の定義する「流動産」とは、「2015年から本格的に始まった、新しい時代の都市空間のかたち」で、これまでの不動産的な賃貸契約とはまた異なる、モバイルを使って流動的に選択可能な「サードプレイス」的な居住可能スペースのことだ。

 福島氏は、将来は少子高齢化により、マンション内に大量に余剰空間が生まれると見ており、これらを「流動産」としてコミュニティ形成の場として利用しようと提案する。また、「Personal Fabrication」という、家具などの空間のポータブル化により、流動産によって生まれるサードプレイスに、インテリアを実現するという。

 4候補のプレゼンテーションの後に、審査員は別室で審査を行ったが、4候補への質疑応答が行われ、再度別室での審査となり、ようやく審査結果の発表となった。

Photo 審査が難航したのか、プレゼンテーションごとに質疑応答の時間は設けられていたが、全候補の発表の後に、改めて質疑応答が行われた

 見事最優秀賞を獲得したのは、神戸大の山本氏だ。1点差で2位となったのが、東大・福島氏。そして3位が千葉大学の桾沢氏、4位が電通大の松尾氏という結果が発表された。

 最後の挨拶において、SH-Mobileラボ座長の中嶋教授は、このアイディアコンペが「個人的にも貴重な経験であった」と述べた。また、プレゼンテーション中に、発表者のマイクのボリューム調整をしたりと、候補者同士のコンビネーションが生まれたことに触れ、「やはりコミュニケーションはリアルがいい」とその場を締めくくった。

PhotoPhoto 左から4位の松尾氏、2位の福島氏、最優秀賞の山本氏、3位の桾沢氏。最後に全員で記念撮影

[森坂光郎,ITmedia]

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.