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「モバイルビジネス研究会」第3回会合:

「端末ベンダーは海外で挑戦する気があるのか」──慎重論に業を煮やす構成員

総務省が、携帯電話のビジネスモデルのあり方について話し合う「モバイルビジネス研究会」の第3回会合を開催。キャリアと構成員との間で、またも議論は平行線をたどり、業を煮やした構成員からは「ハードランディングすることはあり得ないのか」という言葉も飛び出した。
2007年02月20日 13時00分 更新

 SIMロックや販売奨励金の是非、MVNOの展開など、今後のモバイルビジネスのあり方を議論する、総務省主催の「モバイルビジネス研究会」が2月15日に開催された。第3回の会合にはKDDIとCIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)、インデックスの3者が参加し、それぞれの立場からモバイル業界のビジネスモデルについて意見を述べた。

SIMロックや販売奨励金、「急激な廃止は難しい」──KDDIの大山氏

 最初に登場したのは、KDDIで渉外・広報本部長を務める大山俊介氏。MVNOビジネスについては「付加価値のあるサービスは、われわれKDDIだけでは提供できない。当然、MVNOによって、新しい市場をつくるのは大いに歓迎」と、理解を示す一方で、「細かなユーザーに提供できるかどうかがカギ。また電波利用料も負担してもらう可能性があるかもしれない」と、キャリア側の要望もアピールした。

 モバイルビジネス研究会の討論案件の中でも、ひときわ注目が集まる、SIMロック解除問題や販売奨励金の是非については、「急激な廃止は難しい」と、同社の小野寺正社長と同じ主張を繰り返したが、改善すべき点には考慮するとしている。「(販売奨励金は)“長期利用ユーザーに対して、不公平”という指摘もあるが、KDDIとしては通信料金に対してポイントを還元したり、利用期間に応じた販売奨励金を設定するなどしている。しかし、販売奨励金などに対して、工夫が必要な点は謙虚に受け止めたい」(大山氏)

 現在の問題点として大山氏が挙げたのが、端末価格と利用期間がリンクされていない点。「端末価格と料金プラン、契約期間をパッケージする契約が必要となっている」と、キャリアの立場から望む改善点を示した。ただし、事業者側でコントロールできるのは販売奨励金だけであり、端末価格は販売代理店が設定するという現状では「そのような運用は難しい」とも話し、仕組みを変えることの難しさを改めて訴えた。インセンティブモデルのあり方については「端末ベンダーや販売店からのヒアリングも提案したい」と提言して説明を締めくくった。

販売奨励金の廃止、5つの問題と課題──端末ベンダー代表、CIAJの資宗氏

 次に説明に立ったのがCIAJの資宗克行専務理事。CIAJは端末ベンダーやネットワークインフラベンダーなどが主体となって設立した団体で、現在は328の企業や団体が会員として名を連ねる。資宗氏は今回、端末ベンダーを代表する立場で研究会に参加した。

 資宗氏は「キャリアや代理店が奨励金を決めるものであって、われわれベンダーはそこに端末を供給するだけ。急に止めるとなると、大きなマイナス影響が懸念される」とSIMロックの解除、販売奨励金の廃止に危機感を示す。そして販売奨励金廃止の問題点として、以下の5つの点を挙げた。

  1. 買い換え需要の冷え込み
  2. 技術革新に悪影響を与える
  3. 関連産業へのマイナス影響がはかり知れない
  4. (安価な)2Gへの需要が高まり、周波数配分計画に遅れが出る
  5. 代理店・販売店への影響も大きい

 SIMロックを解除については「可能ではあるが、効果が見えない」とし、SIMロック解除に伴う5つの問題点を指摘した。

  1. 音声とSMSしか使えない
  2. キャリア相互の互換性がない
  3. ネットワークのトラブル時の責任分界ができない
  4. 技術開発力が低下するおそれがある
  5. アプリケーションの互換性を保証する必要がでてくる

「FMCで巨大な垂直統合型事業者が出現する恐れ」と懸念──インデックスの寺田氏

 最後に説明に立ったのは、インデックスの寺田眞治経営戦略局兼技術局局長。「なぜ、iPhoneは日本で使えないのか」をテーマに、“日本ではユーザーオリエンテッドの視点に欠けている”と問題を提起した。

 寺田氏は、大手キャリアが手がけているコンテンツビジネスや金融ビジネスについて、従来のオープン制や透明性がなくなりつつあると懸念する。「国内の通信事業者は、市場が縮小しているので、自分の専門以外の分野に進出している。どこかの1社と組んでいたり、キャリアが資本を入れた会社がコンテンツのメニューのトップに載るようになってきている。誰も知らないところで、サービスがでてくるようになった」(寺田氏)

 固定網と移動網を融合させたサービスとして、携帯キャリアが積極的に取り組んでいるFMC(Fixed Mobile Convergence)についても「巨大な垂直統合型事業者が出現する恐れがある」と警戒感を露わにした。「ユーザーには、現状のキャリアの押しつけではなく、さまざまな選択肢を与えるべき」(寺田氏)

白熱する議論、「端末ベンダーは、3Gで海外にチャレンジする気はまだあるのか」

 各社のプレゼンテーションの後に行われた自由討議では、飯塚構成員の「端末ベンダーは、3Gで海外にチャレンジする気はまだあるのか?」という疑問に対し、CIAJの資宗氏が「海外進出の気持ちはあるに決まっている」と応えるなど、白熱した議論が展開された。

 「急激な環境変化は難しい」という立場を貫くキャリアやベンダーに対し、業を煮やした構成員からは「環境変化に対して、ソフトランディングさせることばかり考えるのではなく、ハードランディングすることはあり得ないのか。その方向性を見せてほしい」という発言も飛び出した。

 構成員からは、キャリアもメーカーも、いかに環境を変化させないようにするかという、ソフトランディングばかりを考えているように見え、急激に変化させたら、実際どうなるかを示せというわけだ。モバイル研究会の会合は既に3回を数えるが、構成員とキャリア側の考えが交わることはなく、未だ平行線をたどっている印象を受ける。

 モバイルビジネス研究会の第4回会合は、3月19日に開催予定。ウィルコム、インフォニックス、フューチャーモバイル、東日本旅客鉄道(JR東日本)がプレゼンテーションを行う。

[石川温,ITmedia]

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