米Texas Instruments(以下TI)は、スペイン・バルセロナで開催された3GSM World Congress 2007で、携帯電話向けのハイエンドアプリケーションプロセッサ「OMAP3」のラインアップ拡充や、低価格端末向けのGSMシングルチップを発表した。
TIは、現在世界の携帯電話向けチップ市場で最大のシェアを持つ半導体企業だ。同社のOMAPおよびOMAP2プロセッサは、ドコモのFOMA端末の多くに搭載されていることでも知られる。最新のものではNECの「N903i」が、TIのOMAP2430を採用していることを明らかにしている。
OMAP2プロセッサの後継として発表されているのがOMAP3プロセッサだ(2006年2月の記事参照)。OMAP3プロセッサは、OMAP2が搭載していたARM11の3倍の処理速度を持つ、最新のCortex-A8をCPUコアに採用しており、最大12メガピクセルの画像を1秒以下の間隔で処理できるほか、720pでのHDビデオの再生や1秒あたり600万ポリゴンの3Dグラフィックス処理も可能で、携帯電話上で高品質な映像再生や高画質な3Dゲームを動作させられるという特徴がある。
ただ、ここまで強力なOMAP3プロセッサは、当然のことながら価格も高く、採用できる機種も限られるため、新たに同じアーキテクチャを採用した低価格版を用意した。それがOMAP3の「OMAP3420」と「OMAP3410」だ。
OMAP3420とOMAP3410は、ARMのCortex-A8コアを搭載する点はOMAP3430と共通となっている。ただ、いずれもビデオ/オーディオ用アクセラレータはIVA2+ではなくIVA2で、OMAP3420ではカメラの制御が5Mピクセル/秒、動画の再生が最大でVGA(640×480ピクセル)まで、3Dグラフィックス処理能力も秒間300万ポリゴンとなる。OMAP3410はさらにカメラの制御が3Mピクセル/秒、動画の再生もCIF(352×288ピクセル)止まりとなり、3Dグラフィックスの処理能力も秒間30万ポリゴンになる。
プレスカンファレンスで新しいOMAP3プロセッサについて説明した副社長兼ワイヤレス・ターミナルズ・ビジネスユニット セルラーシステムズ担当のアラン・マトリシー氏は、「OMAP3430は、非常に高機能かつハイエンドなチップだが、端末メーカーはハイエンド端末だけを開発しているわけではない。特に日本のように3〜4カ月に1回くらいのペースで新機種を発表しなくてはならず、多様なラインアップをそろえる必要がある市場では、異なる価格帯の端末でも共通のソフトウェアが利用できることが、開発期間の短縮とコストの削減につながるため、非常に重要だ。OMAP3420とOMAP3410は、そういったニーズに応えることができる」と、これらチップセット投入の理由を述べた。
TIのブースではOMAP3のリファレンスキットを用いた各種のデモも実施。720pでのHD動画再生やOpenGL ES 2.0を用いたゲームを実際に動作させ、その実力を来場者にアピールしたほか、550MHz駆動のOMAP3430を1GHzで動作させたりもしていた。
もう1つの大きなトピックは、携帯電話の普及率が急速に伸びている“Emerging Market”向けのワンチップソリューション「LoCosto」の機能強化だ。TIが新たに発表した「LoCosto ULC」は、同社としては3世代目のGSM/GPRS対応チップセットとなる。上位モデルの「TCS2315」はGPRS対応で、30万画素カメラや音楽再生機能などをアプリケーションプロセッサなしで提供可能。下位モデルの「TCS2305」はGSMに対応し、FMラジオ機能などが提供できるが、主に通話機能をメインとする端末向けとなっている。
2010年までに、全世界の携帯電話の契約数は40億に達すると予想されており、これから毎年10億ずつ増えていくと言われている。この成長の鍵を握っているのが、インドや中国といった低価格な端末を求める市場だ。TIはこの市場向けのチップセットも積極的に展開することで、シェアを確保していきたい考えだ。
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