連載
神尾寿の時事日想:
百花繚乱のスマートフォン。日本も市場育成を考える時期
バルセロナで開催中の3GSM Worldでは、スマートフォンの新製品が花盛りだ。ソフトバンクモバイルからWindows Mobile 6.0搭載の東芝端末が発売されるなど、日本発の話題も熱い。
2月12日からスペインのバルセロナで3GSM World Congress 2007が開催されている(特集ページ参照)。現地からのレポートが続々と入ってきているが、その中でも印象的なのは、欧米におけるスマートフォンの躍進と期待値の高さだ。
すでに記事になっているものでも、Nokia、RIM、HP、Motorola、東芝、Samsungなどが新型のスマートフォンを発表しており、OS分野ではSymbianとMicrosoftが激しい火花を散らしている。またSony Ericssonが、スマートフォン事業の拡大とUIの重要性を結びつけた講演を行った点なども興味深い(2月14日の記事参照)。欧米のスマートフォン分野は、各社がそれぞれの思惑を持ちながら、百花繚乱の様相を呈している。
日本企業もかろうじて“スマートフォンの環”に入る
また筆者が評価し、個人的に嬉しく感じたのが、3GSMにおけるスマートフォンの環に、少ないながらも日本企業と日本人が顔を出せたことだ。
端末メーカーでは東芝がWindows Mobile 6.0搭載の「G900」を発表・展示(2月14日の記事参照)。日本のキャリアからはソフトバンクモバイル副社長(CSO)の松本徹三氏が参加し、Windows Mobile 6.0の発表会に登壇している。ソフトバンクモバイルは同日、東芝製「G900」とHTCの2機種のスマートフォンの市場投入を今年6月にも発表すると明言した(2月13日の記事参照)。スマートフォン分野で日本の市場と企業が“蚊帳の外”にならないように、この分野における面目を保ったことは意義深い。
誤解を恐れずにいえば、現時点で日本市場におけるスマートフォン分野のパイは小さい。特にキーボード型スマートフォンは、PCリテラシーの高い一部の層だけが受け入れているニッチなマーケットだ。また、直近の将来を考えても、2バイト文化圏である日本では“小さなQWERTYキーボード”の恩恵が小さいことや、欧米のスマートフォンの初期市場だったビジネス市場が対面・対話の商慣習であることなどから、欧米市場と同じスマートフォンの普及シナリオは描けないだろう。日本市場におけるスマートフォンのマーケティングは、時間と労力のかかる作業になると予想される。
しかし、世界的に見ればスマートフォン市場は今後も拡大する一途であり、アップルコンピュータの「iPhone」が象徴するように、北米からコンシューマー向けのスマートフォン市場も立ち上がりそうだ。ネットサービスとの連携・融合も急ピッチで進み、スマートフォンがかつてのPCのように「規模の力」で大きな波になる可能性はある。日本のキャリアとメーカーがこの波に備えて、日本市場の特性に適合しながら北米を中心とする海外への展開もにらめる“日本のスマートフォン”を模索しておくことは、中長期的に考えると重要だろう。
日本のキャリアとネット企業の「後押し」に期待
日本でスマートフォン市場を育てる上で重要なのが、キャリアとネット企業の後押しだ。日本のスマートフォン市場の立ち上がりは欧米に比べて鈍く、またキャリアやコンテンツプロバイダの既存ビジネスのいくつかと間接的に競合するかもしれないが、それでも中長期的な世界市場の変化に備えてスマートフォン市場の育成に力を入れる、大局的な視点と姿勢が求められる。
特にキャリアの責任は大きい。まずはスマートフォンの販売チャネルやサポート体制を整備し、料金プランではデータ通信料金で優遇的な定額料金プランを用意する必要があるだろう。ドコモとソフトバンクモバイルは、この分野の整備にすでに乗りだしているが、より一層の後押しに期待したい(参考記事1/記事2)。
またコンテンツやサービスの分野では、従来の携帯電話向けコンテンツプロバイダだけでなく、いわゆるネット企業がスマートフォン向けに様々なサービスや取り組みを行うことに期待している。北米でスマートフォンが急速に注目されるきっかけになったのも、Yahoo!やGoogleなどネット企業が積極的にスマートフォン市場に乗り出して、コンテンツ・サービス環境が一気に整備されたからだ。日本のネット企業は、既存の携帯電話向けコンテンツビジネスとは一線を画す姿勢で、スマートフォンに注目しても損はないはずだ。
確かに今の日本市場は、スマートフォンにとって逆風の要素がいくつも存在する。しかし、スマートフォンが世界的に広がる兆しが見える以上、将来、日本企業が"蚊帳の外"にならないように変化への備えが必要になる。日本のスマートフォン市場の育成を真剣に考える時期である。
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[神尾寿,ITmedia]
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